[30日 ロイター] - 米アップルAAPL.Oのティム・クック最高経営責任者(CEO)が、ブルームバーグ・ビジネスウイーク誌への寄稿で、同性愛者であることを公表した。クック氏は「同性愛者であることを誇りに思っており、神が私に与えた素晴らしい贈り物の1つだと考えている」と述べた。
同氏は性的マイノリティーであるLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の支えになりたいと表明。「自分が何者なのか悩んでいる人の助けとなったり、孤独を感じている人を慰めたり、平等を求める刺激になったりするなら、同性愛者であると公表することは自分のプライバシーを犠牲にする価値がある」とし、「すべての人の平等のために、これからも声をあげていくつもりだ」としている。
また、「アップルで働く同僚の多くは、私が同性愛者であることを知っているが、そのことで異なる扱いを受けているとは感じていない」と述べた。同社の会長を務めるアート・レビンソン氏は、クック氏を「勇敢だ」とし、「取締役会と会社全体を代表して言うが、われわれはティムがアップルを率いていることをとても誇りに思っている」と述べた。
一方、ロシアやイラン、アフリカの一部などの保守的な市場では、クック氏の同性愛公表が同社のビジネスにどう影響するかは不透明だ。アップルは売上高の半分以上を海外から計上しており、中国は同社にとって2番目に大きな市場となっている。
同性愛者の権利保護団体「ディグニティーUSA」のマリアン・ダディバーク氏はロイターに対し、「米企業番付フォーチュン500掲載企業で同性愛者であることを公表した初のCEOとして、ティムはビジネス界の同性愛嫌悪を多少なりとも和らげることに貢献している」と語った。
株式時価総額で米国最大の企業のCEOが同性愛を公表したことは、時代がいかに変わったかを示している。2007年に英石油大手BPのジョン・ブラウンCEO(当時)は恋人に同性愛者であると暴露され、その後辞任した。ブラウン氏は30日、ロイターに電子メールで「公表を決断したことで、ティム・クックはロールモデルとなった。実業界で変化が加速することになるだろう」と述べた。
ツイッター上やシリコンバレーの著名経営者の間では、公表を支持する声が広がっている。米フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは、クック氏を「勇気あるリーダー」とたたえた。
IT業界は比較的、性的指向についてオープンだとされている。ホワイトハウス向けに将来の労働市場に関する報告書をまとめているデータサイエンティストのビビアン・ミン氏によると、米IT業界で働く人の約15%がゲイもしくはレズビアンだという。メディア業界もほぼ同程度で、そのほか医療では10%、金融では9%、政府機関では8%となっている。
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