[東京 4日 ロイター] - 政府は4日、消費税率10%への引き上げ判断の参考として有識者から意見を聞く点検会合(今後の経済財政動向等についての点検会合)を開始した。この日の会合では、伊藤隆敏・政策研究大学院大学教授ら5人が予定通りの増税に賛成を表明。
浜田宏一内閣官房参与ら3人が増税時期を延期すべきなどと主張した。
この日出席した有識者のうち、予定通りの増税に賛成したのは、伊藤隆敏政策研究大学院大学教授と加藤淳子東京大学大学院法学政治学研究科教授。古賀伸明連合会長、三村明夫日商会頭、須田善明宮城県女川町長も、景気対策や低所得者などへの配慮を行ったうえで予定通り実施すべきとした。
伊藤隆敏教授は「消費増税の延期は政治コストが大きい」と主張。会合後に記者団に対し、「予定通り上げて、もし、第4四半期・(来年度)第1四半期にずるずると悪い状況が続けば、景気対策を打つ。あるいは低所得者対策をうつことと組み合わせることで、増税は予定通りすべきだ」と述べた。
三村日商会頭も会合で「(予定通りの消費再増税を)将来のことを考えて実施して欲しい」と述べたことを明らかにした。ただ、経済の状況もあるので、5兆円の経済対策と合わせて行うべきとの考えを示した。
一方、浜田内閣官房参与は会議に提出した資料で、「1回目の消費増税でふらついた日本経済にもう一度ショックを与えるとアベノミクス自体が完全に失速してしまう恐れが大きい」と指摘。消費再増税の延期を主張した。浜田内閣官房参与は記者団に対し「今ここで無理して増税すれば、アベノミクスへの期待が崩れ、世界の信頼がなくなる」との見解を表明し、予定通りの増税を実施するには「よほど強く他の政策を打つ必要がある」と語った。
河野康子全国消費者団体連絡会事務局長は再増税を行うべきではないと主張。荻上チキ・シノドス編集長も低所得層への影響が大きく、消費増税に可処分所得が追い付くまで増税は延期すべきだとした。
甘利明経済再生担当相は会合後の記者会見で、「各方面からバランスよく意見をいただいた」と評価した。1回目の会合には有識者8人のほか、政府側からは麻生財務相、甘利明経済再生担当相、黒田東彦日銀総裁が出席。経済財政諮問会議の民間議員4人も参加した。
点検会合は4日の会合を皮切りに18日までに計5回開催、経済界や労働界の代表、学者、エコノミストなど45人から意見を聴取する。当初は42人からの意見聴取を予定していたが、甘利経済再生相はこの日、新たに宍戸駿太郎筑波大学名誉教授、若田部昌澄早稲田大学教授、金丸恭文フューチャーアーキテクト会長兼社長を加えると発表した。
甘利経済再生相は点検会合について4日の閣議後会見で「まずそれぞれの専門分野から見た経済の状況をうかがいたい。あわせて消費税率引き上げについての考え方もうかがう」と説明。会合での議論が消費税判断のすべてではないが、判断材料の1つになると指摘している。安倍晋三首相はこうした点検会合での議論や、17日に発表される7─9月期のGDP速報値などの経済指標とあわせて、消費再増税の最終判断を年内に行う。
石田仁志、伊藤純夫、吉川裕子
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