[東京 7日 ロイター] - 政府税制調査会(会長:中里実東大教授)は7日の総会で、富裕層が税負担の軽い国に移住して保有する株式等を売り、売却益への課税を逃れるのを防ぐため、移住する時点で「含み益」に課税する方針を固めた。具体的な制度設計を行い、15年度からの実施を目指す。
経済協力開発機構(OECD)が打ち出した「過度な節税」への対策に基づく措置で、富裕層への税逃れ対策を強化する。財務省が改めて総会で説明した。
譲渡益への課税は国内に住む人の株式売却益に所得税と住民税がかかるが、含み益のある株を保有したまま移住すると、日本政府からは課税されず移住先の国が売却時に課税する。金融資産の売却益に課税しないシンガポールや香港、スイスに移住すれば税金がかからないため、節税策としてこれらの国への移住が増えている。
これに対して主要7カ国(G7)でも、日本以外は出国時に課税する仕組みを既に導入している。今後、ドイツ、フランス、カナダなどの具体的な仕組みを参考に制度設計を行う。
対象資産はまだ固まっていないが、財務省では、株式を含む有価証券・有価証券に準ずるものなどを念頭にしている。
また、きょうの総会では、「働き方の選択に対して中立的な」税制を構築するための個人所得課税改革について5つの選択肢を提示した。人口減少のなか、「結婚し夫婦ともに働きつつ子どもを産み育てる世帯」に対する配慮を見直しの基本に据えた。
具体的には、(1)配偶者控除の廃止と子育て支援の拡充、(2)配偶者控除の適用に所得制限を設けるとともに子育て支援を拡充、(3)移転的基礎控除の導入と子育て支援の拡充、(4)移転的基礎控除の導入・税額控除化と子育て支援の拡充、(5)「夫婦世帯」を対象とする新たな控除の導入と子育て支援の拡充━━の5案。政府税調では、2年後にまとめる中期答申に向けて議論を詰める。
見直しは当初、配偶者控除に焦点を絞っていたが、増税となる専業主婦世帯の反発が強く、配偶者控除だけでなく所得税全体を幅広く見直すことで国民の納得を得たい考え。
吉川裕子
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