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選挙後相場の行方:株価2万円超えの見方も、政権長期安定化を評価

[東京 15日 ロイター] - 世界的なリスク回避の動きが波及し、衆院選での与党圧勝を受けた「ご祝儀相場」とはならなかった。しかし、日本株に対する先高観は依然強い。安倍政権の長期安定化を評価し、来年には日経平均.N225が2万円を超えるとの見方も出ている。一方、実体経済とのかい離や行き過ぎた円安進行の弊害、米経済の動向などリスク要因も多く、来年は動きの激しい相場展開になりそうだとみられている。

 12月15日、世界的なリスク回避の動きが波及し、衆院選での与党圧勝を受けた「ご祝儀相場」とはならなかった。しかし、日本株に対する先高観は依然強い。写真は都内の株価ボード。10月撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

<政権安定化で海外長期マネー流入>

来年の日経平均の高値は2万5000円──。いちよしアセットマネジメント・執行役員運用部長の秋野充成氏は、来年の日本株見通しについて最も強気な市場関係者の1人だ。衆院選での与党圧勝は事前報道通りで短期的には織り込み済みとされるものの、長期の視点に立てば「株高政策の継続が効いてくる」(秋野氏)とみる。

14日に投開票された第47回衆院選では、自民党が291議席、公明党が35議席を獲得。連立与党で法案の再可決や憲法改正の発議に必要な全体の3分の2を超え、圧勝した。「今回の選挙で安倍政権が求心力を高め、目先は補正予算など景気悪化に歯止めをかける経済対策を一段と推し進めると期待している」(岡三証券・日本株式戦略グループ長の石黒英之氏)との声は多い。

投票率は52%強と、戦後最低だった2012年の前回選挙(59.32%)を下回り、アベノミクスが全国民から信任を得たとは言い難いが、圧勝した事実は変わらず、安倍政権反対派への抑制力は強まる。少なくとも2016年7月に予定されている参院選までは盤石な政治基盤が保たれ、「政権安定化を好感する海外年金など中長期マネーの流入が期待される」(石黒氏)とみられている。

来年は国内勢の買いが一段と強まることも追い風だ。日銀は来年からETF(上場投資信託)の買い入れ枠を従来から3倍に膨らませ、年間で約3兆円としている。月間では平均2500億円の買い需要が生まれる計算で、日本株の下値を支える公算が大きい。

また年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)など国内年金による日本株比率引き上げも支援する。国内年金のフローを表すとされる信託銀行の現物株の売買では2012年、13年と売り越しが続いたが、14年は12月第1週までで約2兆3000億円の買い越しとなっており、3年ぶりに買い越しに転じる可能性が高い。15年も同規模の買い越しが見込めれば、日銀と合わせ合計5兆円超の買い需要が生まれる。

ファンダメンタルズも良好だ。足元では急ピッチな円安進行の反動が出ているが、それでも1ドル118円台と昨年末の105円前後から13円も円安水準にある。15日に発表された日銀短観では、2014年度下期の大企業・製造業の想定為替レートは1ドル104円04銭となっており、「国内の輸出関連企業の業績予想における上方修正への期待感は根強い」(東洋証券ストラテジストの大塚竜太氏)。上場企業の来期利益の伸び率は2桁増が市場コンセンサスだ。

<アベノミクスに内包するリスク、米利上げも警戒>

一方、リスク要因として懸念されているのは実体経済とのかい離だ。アベノミクスは株価を上昇させることで資産効果や企業マインドの改善を生み、実体経済の回復を促す政策。衆院選で「景気回復、この道しかない」と声高に叫んだ安倍晋三首相の見通しが外れれば、「株価と実体経済とのかい離を埋めるように株売りが出かねない」(秋野氏)との懸念は強い。

またアベノミクスの推進で円安デメリットが意識される展開も想定される。円安に伴うコスト高で、地方の中小企業や個人消費への悪影響が一段と顕在化すれば、アベノミクスの弊害がクローズアップされかねない。

国内に内包するリスクに加え、海外でも警戒要因はくすぶる。特に年央にも利上げが見込まれる米国が警戒されており、「米金融政策の引き締めなどで米景気に対する失速懸念が強まれば、日本株も一段の下押しが避けられない」(BNPパリバ証券・日本株チーフストラテジストの丸山俊氏)。足元で進む原油安は長期的には日米欧など先進国の経済を押し上げるとされるが、産油国経済の減速が強まればリスクマネーの巻き戻しなどが起こりかねない。

内藤証券・投資調査部長の田部井美彦氏は、基本的に株高路線を見通す一方、「米金利の上昇などを織り込むことで弱含む展開も見込まれ、一本調子とはいかない。国内の経済対策の効果に加え、欧州経済が落ち着きを取り戻すことや、米景気の強さが示されることが、さらに日本株が上を目指す条件となる」と述べている。

*市場関係者の見方は以下の通り。

●長い目みれば株高政策が効果発揮、バリュー切り上げで日経2万5000円に

<いちよしアセットマネジメント 執行役員運用部長 秋野充成氏>

衆院選での与党圧勝を受け、安倍政権の基盤が強化され、長い目で見ればアベノミクスによる株高政策が効いてくる。先行する株価の上昇が資産効果や経営者マインドの改善につながり、実質賃金の上昇など実体経済につながるかが焦点だ。そうなればPER20倍程度までバリュエーションが切り上がり、来期2桁増益が見込まれるなかでは日経平均2万5000円が視野に入ってくる。一方、株高と実体経済とのかい離が埋まらなければ、大幅調整のリスクが残る。

来年の日経平均の予想レンジ:1万7000円─2万5000円

●資源国・欧州・中国経済がポイント

<東洋証券 ストラテジスト 大塚竜太氏>

衆院選で与党が大勝したことは大きい。より具体的な経済対策が出てくることが期待される。成長戦略の進ちょく状況などへの関心が集まることになるだろう。日本株に対する好需給も引き続き相場の下支えとなる見通しだ。一方、原油安は日本経済にとっては好材料だが、外部環境については不透明感が出ている。米経済は堅調な状況が続くとみられるが、資源国については年明け後も影響が続くことが予想される。来年については、資源国や欧州、中国の景気が落ち込むなら、どの水準で底を打つかがひとつのポイントとなりそうだ。

来期の予想レンジ:1万6000円─2万1000円

●来年4月ごろに1万8000円台回復へ

<内藤証券 投資調査部長 田部井美彦氏>

与党の圧勝は予想通り。自民党が議席数を減らしたが、すぐには憲法改正に動けないという見方からすれば、市場にはプラスとなる。政府の具体的な経済対策も年末にかけて見えてくるだろう。来年1月ごろには10─12月期の国内企業業績が徐々に明らかになるが、昨年は駆け込み需要の影響があった。円安基調とはいえ、売上面でのハードルは高く、思ったほど収益が伸びない可能性がある。一方、2─3月には来期の話が徐々に出てくる。消費増税の反動で国内需要が悪かっただけに、来年4月以降の業績面でのハードルは逆に下がり、ある程度の期待感が出てくるだろう。

来年の日経平均の予想レンジ:1万7000円─2万円。

●業績期待・好需給で日本株の下値は限定的

<岩井コスモ証券 投資調査部副部長 有沢正一氏>

国内上場企業の業績が来期に1割程度の増益になるとの前提で、今年の大納会での日経平均が1万8000円程度とすれば、よほど何もない限りは来年の日経平均の高値は2万円程度となる。原油安の影響は不透明な部分があるが、それでも原油価格は5年前の水準。少なくとも今の為替水準や原油相場は、国内企業にはプラスの効果をもたらすはずだ。一方、米国の利上げと金利上昇により、来年はいったん金融市場が混乱する可能性がある。ただ日銀によるETF(上場投資信託)買いや公的年金の日本株の買い支えで、下値は限られそうだ。衆院選の結果については、経済政策の方向性が変わらないことに対する安心感が出ている。今後は、成長戦略が具体化することで株価の水準が高まっていく。

来年の予想レンジ:1万6000円─2万円

●物足りない印象、株一段高には迫力不足

<BNPパリバ証券 日本株チーフストラテジスト 丸山俊氏>

衆院選の結果は、市場の期待値から見て物足りなさを感じる。事前には自民単独で300議席を超す勢いと報じられ、日経平均は1万8000円を一時回復したが、獲得議席は現状維持にとどまった。政権安定化や経済政策の進展などはすでに株価に織り込んでおり、上値を買う判断材料としては迫力不足だ。とはいえ日経平均が1万7000円を大きく割り込むことは想定しづらい。来年以降もアベノミクス継続による景気回復策や株高政策が日本株の下値を支えるためだ。企業による株主還元の積極化などを受けて海外の中長期マネーも入りやすく、日経平均は1万8000円水準での定着が期待される。日銀のさらなる追加緩和があれば1万9000円に届くかもしれない。

来年の日経平均の予想レンジ:1万7000円─1万9000円

杉山容俊 取材協力:長田善行 編集:伊賀大記

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