[東京 30日 ロイター] - イスラム国に拘束されているとみられる後藤健二さんの妻が29日夜、報道機関向けに音声と文書を公表し、日本・ヨルダン両政府に後藤さん解放に向けた取り組みを訴えた。
英語の音声で妻は「今まで公に話をしてこなかったのはメディアの注目から子どもと家族を守るためだった」とし、これが「(後藤さん解放の)最後のチャンスになるのではないか」と不安を抱く現在の心境を吐露。夫妻の間には2人の娘がおり、後藤さんが旅立ったときに次女は生後3週間だったことも明らかにし、「2人の子供には父親のことを知って成長してほしい」とも語った。
後藤さんの妻は、昨年12月2日に犯行グループからメールを受け取り、夫が事件に巻き込まれたことを知ったという。2億ドルの身代金を要求する映像が公開された1月20日以降は、犯行グループとの間で数回メールをやり取りするなど、「解放のため舞台裏で努力を続けてきた」としている。
また、「夫の解放とヨルダン軍パイロットのカサスベ中尉の命を守るには数時間しか残されていない」とし、「2人の運命はヨルダンと日本両政府の手中にあると理解してほしい」と両国政府に協力を要請した。
子ども時代は家族でヨルダンに住んでいたこと、 アンマンの学校に12歳まで通っていたことも明らかにし、「ヨルダンとヨルダンの人たちに愛着と懐かしい思い出がある」とも語った。
菅義偉官房長官は30日、閣議後の記者会見で、イスラム国に拘束されているとみられる後藤健二さんの解放に向け、「ヨルダン政府としっかりと連絡を取っている」と、これまで通りの見解を繰り返した。
ヨルダン政府によると、同じくイスラム国に拘束されているパイロットの生存確認もできておらず、後藤さん解放に向けた事態打開の糸口は見えていない。
犯行グループが29日午前に発表した声明では、ヨルダンで収監中のサジダ・リシャウィ死刑囚をトルコ国境まで連れてこなければ、ヨルダン人パイロットを殺害するとされていた。日本・ヨルダン政府が協議を重ねてきたものの、期限とされていた同日日没(イラクのモスル時間)は過ぎ、依然して後藤さんとパイロットの安否は不明のままだ。
*内容を追加して再送します。
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