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焦点:懸念されるロシアの対外債務、「不安は行き過ぎ」との声も

[モスクワ 16日 ロイター] - 原油安や欧米の経済制裁がロシア経済への打撃となるなか、外貨資金の調達が難しくなったロシア企業が対外債務を返済できるかに注目が集まっている。ただ、実質的な債務負担は見かけほど巨額ではなく、通貨ルーブルの下落や資本流出への対応の方が重要との指摘もある。

 2月16日、原油安や欧米の経済制裁がロシア経済への打撃となるなか、外貨資金の調達が難しくなったロシア企業が対外債務を返済できるかに注目が集まっている。モスクワで昨年9月撮影(2015年 ロイター/MAXIM ZMEYEV)

ウクライナ政府と親ロシア派は先週、東部での停戦で合意したが、恒久的な平和が実現しなければ、欧米の対ロ制裁は当面続き、国内企業の海外からの資金調達は引き続き困難になる。

ロシア政府は今後、国内企業が抱える5500億ドルの対外債務の返済を支援をする必要に迫られる、とアナリストは指摘する。

そのため、3750億ドルのロシアの外貨準備はいずれ底をつくとの悲観的見方や、そこまでいかないまでもロシアの国際収支が悪化するとの指摘がある。そうなればルーブルを圧迫する。

一方で、そうした不安は行き過ぎだとの声もある。一部のアナリストは、債務負担は数字が示すよりも実際はずっと軽く、企業は返済するための資産を確保している、とみている。

<実質的な債務負担>

中銀データによると、ロシアの民間部門の対外債務のうち、2015年に支払い期限を迎えるのは1090億ドル。原油安で輸出収入が落ち込み、経済制裁で資本収入が減少するなか、これはかなりの負担だ。

ただ、当局データに目を向けると、驚くことに異なった状況がみえてくる。

昨年の民間部門の対外債務の返済はネットで400億ドル程度。一方、中銀によると、昨年支払い期限を迎えた債務は1000億ドル。つまり、約600億ドルの債務は、実際には借り換えや返済計画の変更が行われたことになる。

欧米諸国の制裁が強化された第4・四半期でも、満期を迎えた債務のうち償還されたのは半分程度だった。

このことは、対外債務の多くが海外で事業展開するロシア企業からの借り入れである可能性を示している。

アルファ銀行のエコノミスト、ナタリア・オルロヴァ氏は「債務の40━50%は、資本のリサイクルに関連したものだ。もともとロシア国内にあった資金が国外に流れ、それが借り入れという形で国内に戻ってきている」と指摘する。

これは、主要企業がどの程度欧米から融資を受けているかを分析した結果でもわかる。

VTBキャピタルのデータによると、借り入れ規模上位15社の債務について、2015年に返済期限を迎えるシンジケートローンとユーロ債はわずか450億ドル、2016年は380億ドルだ。

ただ、誰もが楽観主義者というわけではない。クレディ・スイスのエコノミスト、アレキシー・ポゴレロフ氏は、国内企業からの借り入れは、返済条件の変更は容易かもしれないが、いずれは返済しなければならないことに変わりはない、と指摘。

その上で、2015年に実質的に返済が必要な額は恐らく、700億─800億ドル程度と予想。当局の数字と楽観的な予測値との間になるとの見通しを示した。

スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の1月の格下げに続き、別の主要格付け機関もロシアを投機的(ジャンク)等級に格下げすれば、状況はもっと複雑になる。

格下げを受けて期限前償還条項が適用されれれば、2015年の返済額は200億─300億ドル増える可能性がある、とアナリストは指摘する。

<対外債務上回る対外資産>

ロシアの多額の対外債務が取りざたされるなか、それを上回る規模の対外資産にはさほど目が向けられていない。ロシアの対外資産は10月時点で約1兆ドルだった。

対外資産の大半は海外直接投資(FDI)や融資で、債務返済に充てるためすぐに清算するのは難しい。ただ、中銀によると、この中には2200億ドルを上回る現金、預金、およびポートフォリオ投資が含まれている。

国営の石油大手ロスネフチROSN.MMと天然ガス大手ガスプロムガスプロムGAZP.MMの債務は数百億ドルに達するとみられており、国内企業のなかでは恐らく最大。

9月末時点で、ガスプロムは190億ドル、ロスネフチは164億ドルの現金と短期預金を保有しており、その大半はドルだった。

ムーディーズは10月、格付け対象企業は1600億ドルの現金と約定信用枠を確保している、とのリポートを公表した。

ムーディーズのアナリスト、アルテム・フロルボ氏は「2014年6月時点で、格付け対象企業の大半は、2015年末まで債務を返済する十分な流動性を確保している」としている。

ただ、企業に十分な外貨建て資産があったとしても、それを債務返済に充てるとは限らない、とフロルボ氏は指摘する。

企業は外貨をため込み、ルーブルも外貨に替えるかもしれない。そうすれば、資本流出やルーブル安が加速する。

「海外の金融市場で長期にわたり資金を調達出来なくなるというリスクがあり、そのため今ある海外資産は無駄にしない方針なのかもしれない」とフロルボ氏は述べる。

そもそも、対外債務が返済できるかという議論事体が的外れかもしれない。

2014年のロシアからの資本流出はネットで1515億ドルと過去最高を記録した。純資本流出の約3分の1は対外債務の返済によるもので、残りの大半は外貨需要やFDIによるものだった。

ロシア政府にとり、通貨ルーブルの信認を高め、資本流出を食い止めることが、企業の債務返済支援以上に重要かもしれない。

アルファ銀行のアナリストは「対外債務の問題がそれほど深刻になるとは思わない」とし「資本収支の悪化はそれ以上の問題になる」との考えを示した。

Jason Bush記者、Alexander Winning記者 翻訳:伊藤恭子 編集:加藤京子

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