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アングル:不信渦巻く福島の中間貯蔵施設、地権者は「恒久化」懸念

[大熊町(福島県)11日 ロイター] - 東日本大震災から4年目の春、東京電力福島第1原発事故で故郷を追われた避難住民が新たな試練に直面している。放射能汚染物を保管する「中間貯蔵施設」への対応だ。

 3月11日、東日本大震災から4年目の春、東京電力福島第1原発事故で故郷を追われた避難住民が「中間貯蔵施設」への対応で新たな試練に直面している。写真は放射能汚染物を保管するだ。写真は富岡町に仮置きされる汚染物の袋。2月撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai)

施設建設への協力は、大津波の犠牲となった家族だけでなく、多くの思い出が残る自らの土地を失う事態にもつながりかねない。施設建設による復興促進への期待が高まる中、候補地の地権者にはなお強い怒りと戸惑いが渦巻いている。

中間貯蔵施設が予定されているのは、同原発周辺の福島県双葉郡大熊町、双葉町にまたがる約16平方キロの用地。県内各所に仮置きされている汚染物を同施設で最長30年にわたって一括して保管する計画だ。

政府は福島県に対し3010億円の交付金を提供し、中間貯蔵を開始して30年経った後は県外に廃棄物を移すことを約束。福島県知事とともに双葉町と大熊町の町長も建設に同意し、今月13日から一時保管所への汚染土の搬入が始まる。

運び出し作業は双葉郡と田村市など9市町村でも実施、さらに除染を行っている同県内の残り34市町村にも広げる予定で、被災地の復興を妨げている除染の遅れが大きく解消されるという。

しかし、施設の建設候補地には、2300人を超す地権者がいるとされ、その特定と用地取得の交渉はなお難題だ。環境省は今月10日の会見で、両町内の地権者と売買契約を結び、貯蔵施設の建設に必要な一部の用地を取得したと発表した。しかし、地元には、国や行政の強引な進め方に反発し、不信感を強めている地権者も少なくない。

<「政府の約束は信用しない」>

「被災地であるここに、廃棄物を捨てようとするなんて信じられない」。大熊町の地権者のひとりで現在は長野県白馬に住む木村紀夫さん(49)は、津波にさらわれた家の土台だけが残った小高い丘にたたずみ、こう語った。

2011年3月11日の東日本大震災で、妻と父、そして7歳の次女を失った。大津波で行方不明になった家族の捜索を中断せざるを得なかったのは、原発事故ですぐに避難するよう命じられたからだ。数カ月後に妻と父の遺体は見つかった。しかし次女の汐凪(ゆうな)ちゃんの安否はなお不明のままだ。

がれきの山からみつかったのは、汐凪ちゃんのものと思われる泥まみれのピンク色のスカート、レギンスとおもちゃ。震災から4年間、木村さんは今もなお、汐凪ちゃんの行方の手掛かりを追って、大熊町の砂浜を探し続ける。ただし、それは被ばくガイドラインに沿って帰還困難区域に許される5時間だけ。東電事故による放射能汚染は、木村さん自身の災害からの復興と人生の再出発を大きく妨げている。

その苦難に輪をかけるように、木村さんはいま自分と家族の人生を刻んだ土地を汚染土の保管場所として提供するよう求められている。

環境省は用地交渉のため、約140人の不動産事業経験者を臨時職員として募集しており、両町の土地所有者と個別の交渉に当たる。木村さんに土地売却を促すため、環境省の意を受けた不動産業者が接触してくるのは時間の問題だ。

しかし、木村さんは、土地は売らないし貸さないと語る。30年後に県外に最終処分場を設けて廃棄物を運びだし、この土地を元に戻すという政府の約束を信用してはいないからだ。

木村さんが持つ土地の近くには汐凪ちゃんが通っていた小学校が今でも震災当時のまま建っている。しかし、ここも国の中間貯蔵施設の用地計画に入っており、取り壊されるかもしれない、というのが木村さんの悩みだ。

「(この小学校には)思い出がある。つらい気持ちがあるけれど、思い出がよみがえる場所。これを取り壊してほしくない」と木村さんは語る。

「汗と血が染み込んだ土地をそう簡単に手放すことはできない」と、同じ大熊町の地権者であり、30年中間貯蔵施設地権者会の会長も務める門馬幸治さん(60)も苦しい胸の内を明かした。門馬さんの会には、双葉、大熊両町の地権者100人が参加しており、環境省が提示している土地価格、そして借地契約の条件について協議を続けている。

<中間貯蔵が恒久保管に>

地権者の反発を和らげるため、環境省は昨年10回を超える住民説明会を開催した。しかし、地権者との土地取得交渉について、当時の石原伸晃環境相が「最後は金目でしょ」と発言し、その問題をめぐって政府側と地権者は激しく対立。会合に参加したのは登記が確認されている地権者の半数程度に過ぎず、両者間で何ら合意することはできなかった。

地権者側が政府の約束に不信感を抱く背景には、日本で原発が稼働を始めて40年以上経つものの、使用済み核燃料の恒久的な貯蔵施設が建設されていない、という実態もある。昨年11月、国会は福島県に設置する原発除染廃棄物中間貯蔵施設について、「施設使用開始後30年以内に県外最終処分する」と明記した「日本環境安全事業株式会社法(JESCO法)」改正案を可決した。

環境省は「住民が懸念するのは理解できる。しかし、国会で国民への約束をしたわけで、県外最終処分が実現できるように全力を尽くす」とコメントした。

しかし、ある大熊町の73歳の地権者は「政府は中間貯蔵施設を放射性廃棄物の最終的な貯蔵場所にしようと考えているのではないか」となお強い不安を隠さない。「私は彼らを信用できない。30年後にはどうなるかは、誰にも分からないでしょう」。

*見出しを修正しました。

斎藤真理 編集:加藤京子、北松克朗

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