[ニューヨーク 24日 ロイター] - リビアの暴動、米国内の稼働リグ数、石油輸出国機構(OPEC)の生産計画、核問題をめぐるイランと欧米の合意──。これらは全て原油の需要と供給に影響を及ぼすが、市場関係者はここ数週間、上場投資信託(ETF)を保有する投資家の動向にも注意を向けている。
小口の投資家やヘッジファンドなどは価格が反転すると見込んで、昨年の原油相場下落の最終局面で上場投資信託(ETF)に買いを入れ、思わぬ形で市場の安定に貢献した。
米国の備蓄能力をめぐる懸念で原油相場が先週再び大幅に下落したが、投資家は底入れが近いと判断して原油先物関連の商品にさらに資金をつぎ込んだ。
だが見込みが外れ価格が一段と値下がりするリスクがある。スポット価格が下落する一方で、先物価格が備蓄能力の制約により上昇する可能性があるからだ。このシナリオが現実化すれば米WTI原油先物CLc1は現在の47ドル付近から20ドルに向かって下落すると予想するアナリストもいる。
調査会社モーニングスターによると、ETFへの投資が年初から急増している。特にレバレッジの高いベロシティーシェアーズのETFなどで増加が顕著だ。
こうしたファンドのひとつ、米国石油ファンドUSOは原油先物を約6万枚保有している。これはニューヨーク ・マーカンタイル取引所(NYMEX)の未決済建玉の10%を超える規模だ。
ただ先物市場は期近物よりも期先物の価格が高いコンタンゴ(順ざや)のため、スポット価格が下落しても先物はロールオーバー時に割高となる。値上がりを待つ投資家には余分なコストがかかることになる。
BPキャピタルのファンドマネジャー、デビッド・ミーニー氏は、投資家が持ち高を維持するためのコスト負担を嫌気して一斉にポジション解消に動けば、相場が圧迫されると指摘する。
米国石油ファンドなどのETFは小口投資家にとってはコストが高いかもしれないが、ヘッジファンドなどには原油市場への短期的な投資として便利な手段となり得る。
米国石油ファンドで運用を担当するジョン・ハイランド氏によると、同ファンドの投資家の4分の3をヘッジファンドなどが占めている。こうしたファンドはETFへの投資により、デリバティブ業者を介さずに原油先物市場に投資することが可能になっているという。
ETFが先物をロールオーバーすれば相場が動き、小口投資家のリスクが高まったり、利益を上げる機会をもたらしたりするとの指摘も聞かれる。
ニューヨークを拠点とするあるトレーダーは「先物のロールオーバーをめぐる市場の変動に注意が必要だ。期近物の動きが大きくなる」と語った。
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