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焦点:インフレ期待維持とみる日銀、消費低調でシナリオ実現は分岐点

[東京 2日 ロイター] - 2%の物価目標達成に向け、企業や家計のインフレ期待は「何とか維持されている」と日銀は判断しているもようだ。ただ、期待した賃上げは日銀の当初想定よりも伸びが鈍っている可能性があり、個人消費の盛り上がりも弱い。

 4月2日、日銀は企業や家計のインフレ期待は「何とか維持されている」と判断しているもようだが、賃上げは日銀の当初想定よりも伸びが鈍っている可能性があり、個人消費の盛り上がりも弱い。都内のショッピング街で先月撮影(2015年 ロイター/Yuya Shino)

当面、物価の低迷が想定される中、需給ギャップの改善によってインフレ期待の一段の上昇につなげていく日銀シナリオは、大きな分岐点に差しかかろうとしている。

<企業・家計のインフレ期待、ほぼ横ばい>

日銀は2日、企業と家計の物価見通しを相次いで公表した。中長期的なインフレ期待を測る指標として日銀が重視していることは市場関係者も幅広く認識しており、その動向が注目されていた。

まず、3月短観データをもとにした企業の消費者物価見通しは、全規模・全産業ベースで1年後が前年比で1.4%上昇(前回12月調査1.4%上昇)、3年後が1.6%上昇(同1.6%上昇)、5年後が1.6%上昇(同1.7%上昇)とほぼ横ばい。

3月の生活意識アンケート調査での家計の見通しは、1年後の中央値が3.0%上昇(同3.0%上昇)、5年後(毎年平均)が2.5%上昇(同2.0%上昇)。

企業と家計の先行きの物価観は、ともに大きな変化がなかった。

市場の物価観を表し、物価連動国債から算出するブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)も、今年1月を底にジリジリと回復。足元では1%程度で推移している。

日銀では、物価の基調を見極めるうえで、インフレ期待は各種のアンケート調査を含め企業や家計、市場、エコノミストなどの物価観を総合的にみていくとしており、足元で消費者物価の鈍化が続く中でも、期待は維持されていると判断しているもようだ。

<賃上げ、想定より下振れの可能性>

もっとも、日銀が目標に掲げる物価2%程度の安定的な持続には、インフレ期待を2%程度に押し上げ、「アンカーさせる」(黒田東彦総裁)ことが不可欠。

現在のインフレ期待は2%に上がっていく途上にあり、一段の加速には実際の物価が2%程度に上昇することが重要な要因とみられている。

だが、原油価格下落の影響で、足元の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)上昇率が前年比ゼロ%まで低下。しばらくは電気料金の値下げなどで、一段と下押し圧力が強まる展開が予想される。

それでも日銀は、4月以降の賃上げや価格転嫁の動きなど基調の強まりとの綱引きで、当面のコアCPIはゼロ%付近で推移すると予想。原油価格の影響はく落が見込まれる2015年度の後半から「物価上昇率は加速する」(黒田総裁)と見込んでいる。

しかし、期待を寄せていた賃上げ動向は、微妙な動きになってきている。連合によると、今春闘の第2回集計の段階で、ベースアップは0.6%弱の増加にとどまっている。昨年の0.4%を上回ってはいるものの、日銀の当初想定には届いていない可能性がある。

<需給ギャップ改善テンポ、鈍る可能性も>

4月以降は、消費増税要因がはく落し実質所得は増加に転じると見込まれるが、消費増税の反動減一巡後も、個人消費に力強さはみられない。

実際の物価上昇のポイントとなる需給ギャップは、3月日銀短観でも明らかになったように、雇用のひっ迫感の強まりを背景に先行きも改善が見込まれる。

もっとも、個人消費や設備投資の持ち直しが遅れれば、需給ギャップの改善ペースも想定より鈍くなる。

当面の消費者物価上昇率が低調な推移となることが見込まれる中、需給ギャップ改善の遅れは、何とか維持されているインフレ期待にも悪影響を与えることも予想される。

黒田総裁は「基調的な物価上昇率は今後もしっかり高まっていく」と繰り返すが、目論見通り進むかは、需要動向という景気の基調がカギを握っている。

伊藤純夫 編集:田巻一彦

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