for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

アングル:財政再建「成長依存」鮮明に、中間目標未達の恐れも

[東京 12日 ロイター] - 財政健全化の達成は、成長頼みの色合いが濃くなってきた。政府の経済財政諮問会議では、民間議員がさらなる経済成長の加速で税収増を実現し、新たな中間目標も導入すると提言した。だが、社会保障改革など歳出削減の議論は、ほぼ手つかずで残されたままだ。成長に大きく依存するだけでは、中間目標も達成できない危うさが見え隠れする。

 5月12日、財政健全化の達成は、成長頼みの色合いが濃くなってきた。中間目標も達成できない危うさが見え隠れする。写真は国会議事堂、2014年11月撮影。(2015年 ロイター/Thomas Peter)

12日の諮問会議で伊藤元重・東大教授ら民間議員は、財政再建に向けた論点整理を提出した。公的部門の産業化や、自治体に自主的な努力を促す意識改革などを通して、政府が掲げる2020年度までの基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化目標を目指す考えだ。

内閣府の試算によると、名目3%以上の高い成長率が続いた場合でも、20年度は9.4兆円のPB赤字が残る。この赤字をどう埋めるかが議論の焦点だが、提言では、歳出カットで成長を阻害することなく、成長の加速によってさらなる税収増を狙うことが強調された。

歳出削減の規模や金額を示す案は、提言の本記部分には盛り込まれず、今後の論点とした。財政再建の目標は、20年度のPB黒字化と債務残高対GDP比の中長期的な引き下げを併記した。

<中間目標、未達の可能性>

18年度には進ちょく状況を点検するための中間評価を行うことも盛り込んだ。PB赤字対GDP比を、15年度の3.3%から18年度に1%前後へと改善する数値目標を新たに設定する。

赤字の削減額を示すのではなく、GDP比の指標を目標にすることで、安倍晋三政権の成長重視の姿勢を際立たせた。

もっとも、この中間目標を達成できるかどうかは不透明だ。内閣府の試算では、今後3年間で名目GDPが50兆円以上、5年間では100兆円程度増えると見込んでいる。新目標は、分母となるGDPが成長によって大きく増加すれば、指標自体が改善する。反対に、成長が想定を下回れば、達成の見通しはより厳しくなる。

たとえばこの試算の経済再生ケースで計算した場合、18年度の名目GDPは558兆円。1%は5.58兆円となる。PB赤字予想は12兆円なので、そこから6.42兆円減らせば目標が達成できる。

しかし、成長がベースラインケースにとどまると18年度の名目GDPは529兆円。その場合のPB赤字予想15.7兆円からは10.41兆円減らさないと、1%の5.29兆円には到達しない。減らすべき赤字の額は4兆円も増加してしまう。

この試算は、アベノミクスの3本の矢が打ち出された13年度以降、合計4回発表されている。13年8月発表時の20年度のGDP見通しは620.7兆円だったが、その後、見通し額は漸次、引き下げられて今年2月発表時には、599.4兆円となった。

また、中間評価の時点で、必要と判断される場合は「歳出・歳入の追加措置」を検討し、20年度の黒字化目標の旗は降ろさない方針だが、市場では「目標の先送りに向けた布石ではないか」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券、マーケットエコノミストの大塚崇広氏)と勘繰る向きもある。

諮問会議は開催のペースをこれまでの月1回から週1回に増やす。急ピッチで各分野での議論を詰め、政府の新たな財政健全化計画に反映させる方針だ。

梅川崇 編集:田巻一彦

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up