for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up
コラム

コラム:南シナ海で中国が「優位に立つ」理由

[3日 ロイター] - 米国政府は過去数年、どの製品がどこで製造されているか、特に電子機器や医薬品などの重要品目については十分な注意を払ってこなかった。それにより、米国の中国への依存度は今や、中国の対米依存をはるかに上回るほど高まっている。

 6月3日、急速にポスト・グローバル化しつつある世界で、米国は中国と平和的に共存・貿易する方法を早急に見つけ出さなくてはならない。写真は両国の国旗。北京で2011年1月撮影(2015年 ロイター/Jason Lee)

1990年代半ば、米中貿易自由化の提唱者らは、経済的な相互依存は必然的に平和的な共存につながると主張していた。しかし、昨今の中国の好戦的な態度増長が示すように、一方的な依存は冒険主義を呼び起こすことになる。

米国政府が今すべきことは、中国にここまで大きな優位性を与えることになった国際貿易システムの根本的な欠陥に対処することだ。ホワイトハウスは、環太平洋連携協定(TPP)が、中国の影響力を減殺することにつながると主張している。しかし残念ながら、中国を除く環太平洋11カ国が参加するTPPは、何の問題の解決にもならないだろう。

世界の貿易体制が当初の狙い通りに動いていないという事実は、中国の周辺海域で最も顕著に示されている。中国政府は、一歩間違えば無謀とも言える挑発的行為を繰り返している。2013年11月には、東シナ海で「防空識別圏」を一方的に設定。今年に入ってからは、南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島で、岩礁を軍基地に造り替える作業に着手している。

東シナ海と南シナ海をめぐる国際関係は現在、1960年代以降で最も緊張が高まっている。日本の安倍晋三首相は昨年、日中関係を第1次世界大戦前の英独関係に例えた。米海軍は最近、南シナ海のほぼ全域に及ぶ中国の領有権主張に対し、直接的に異議を唱え始めた。

これは、1990年代半ばに米国などが中心となって世界貿易機関(WTO)を創設し、後に中国にも加盟を呼びかけていた時に想定していたのとは逆の状況だ。当時のクリントン米大統領は「相互依存の高まりは中国で自由化の効果をもたらす」とまで断言していた。

しかし実際には、WTOによって促進された極度な産業的相互依存は、中国に強力なレバーを与えてしまったように見える。

冷戦時代、米国は日本やドイツ、英国やカナダを含む同盟各国との間で高度な統合を進めた。その目的は、平和的な共存共栄だった。これらの国はいずれも米国より小さく、どの国も程度の差こそあれ民主主義国家だったが、米国は何らかの重要品目でいずれかの国に完全に依存することは選ばなかった。

現在、米国は国民が毎日使用する無数の品々を中国に依存している。それらの中には、完全に中国頼みになっている主要電子機器部品や化学成分も含まれる。抗生物質を含む最重要薬品の一部の原料もそうだ。一方、生産と消費にタイムラグがほとんどないジャストインタイム方式で動いている米国の流通網では、予備の在庫が手元にない物品も少なくない。

対照的に、中国は死活的に重要な品目はほとんど米国に依存していない。エネルギーや金属などは大量に輸入しているが、同時に国内にも大量に備蓄している。

過去20年間の米国の主要貿易相手国とは違い、中国経済は、米国を上回るスピードで成長している。中国は民主主義国家でもない。つまり、これまでとは正反対なのだ。米国はいつの間にか、世界で最も強力かつ洗練された独裁主義国の善意と安定に依存を強めつつある。

米国政府に突き付けられている現在の課題は、こうした変化が現実の世界で何を意味するのかを理解することだ。具体的に言えば、中国への非対称的依存が、米国の主権や行動の自由にどう影響するかだ。また例えば、中国の侵略行為に対して米国が武力を行使しないと中国に思わせることにはならないだろうか、という点だ。

TPPはせいぜい、過去に失敗した戦略の上塗りにしかならない。

グローバル化は賢明かつ実効可能な戦略だ。第2次世界大戦後から1990年代半ばまでの米国の通商政策がそれを証明している。

米国政府は、これ以上TPPに時間を浪費するよりむしろ、1990年代の極端な変化でいかにバランスが崩れたかを理解しなくてはならない。より端的に言えば、急速にポスト・グローバル化しつつある世界で、中国と平和的に共存・貿易する方法を早急に見つけ出さなくてはならない。

*筆者は独立系シンクタンク「新アメリカ財団(NAF)」のシニアフェローを務める。著作には「End of the Line: The Rise and Coming Fall of the Global Corporation(原題)」がある。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up