[上海 5日 ロイター] - 中国のハイテク企業が今、米国に見切りをつけている。ニューヨーク市場での株式上場を廃止、中国本国に戻ろうとする動きが加速している。
その背景にあるのは、中国株式市場の高騰だ。深セン証券取引所の新興企業向け市場「創業板(チャイネクスト)」指数.CHINEXTCが今年に入って180%近く上昇しているのに対して、米ナスダック市場の中国ハイテク株指数.CHXN9000は30%の上昇にとどまっている。
ナスダック中国ハイテク株指数の採用銘柄の株価収益率(PER)は11倍、チャイネクストは133倍。どちらの倍率が適切かという議論はあるが、中国企業の幹部は、米国は中国を理解していないと憤る。
ニューヨーク上場廃止を計画する中国のハイテク企業幹部は「米投資家は中国のゲーム会社のビジネスモデルを理解していない」と話す。
ニューヨークに上場する中国オンラインゲーム開発会社のシャンダGAME.OとパーフェクトワールドPWRD.Oは今年、非公開化を発表。オンラインデートサービスのジアンユアン・ドット・コムDATE.Oや、医薬品開発業務受託の薬明康徳WX.Nも非公開化を検討している。
アナリストは、非公開化の動きは今後も続く、と見る。対照的に、ニューヨークへの上場を目指す中国企業は急激に減少している。
北京に本拠を置く広告技術会社、リメイ・テクノロジーのシュー・イ最高経営責任者(CEO)は「米投資家が関心を持つ可能性は小さい」と話す。同社は最近、ニューヨーク上場計画を断念。今後は上海、もしくは深セン市場での新規株式公開(IPO)を目指すとしている。
中国ハイテク企業の本国回帰に備え、資金面で支援する動きも出ている。投資銀行チャイナ・ルネサンスは中信証券600030.SS6030.HKと提携、海外での上場廃止を支援し、中国での新規上場を引き受けるための資金を調達する。盛京マネジメント・コンサルティングは、約100社の中国企業の本国回帰に向けファンドオブファンズを立ち上げた。
<中国企業の本国回帰、規制緩和も後押し>
中国のハイテク企業がそもそもニューヨークで上場したのは、中国での上場が難しいからだ。中国証券監督管理委員会(CSRC)は、上場要件として、上場前の数年間、黒字を計上していることと定めている。中国の大半のハイテク企業はこの要件を満たすことはできない。
しかし、中国政府が上海をグローバル金融センターに発展させることを目指すなか、ハイテク企業に門戸を閉ざし続けることはできない。
実際、黒字要件は緩和されつつあり、投資銀行チャイナ・ルネサンスはロイターに対し「本国回帰への障害は取り除かれた」としている。
<塞がれつつある「抜け穴」>
中国株市場の高騰局面が終わっても、海外での上場廃止の動きは続くと見られる。中国が法律上の「抜け穴」を塞ごうとしているからだ。
中国の法律では、外国人が中国のインターネット企業に投資することが禁止されている。海外の投資家は現在、インターネット企業が設立した「変動持ち分事業体(VIE)」に出資することで規制を回避しており、アリババなどもこの仕組みを利用している。米国の裁判所はVIEについて、当該企業を保有しているに等しいと認めている。
ところが中国の規制当局は今、外国人投資法を改正しようとしている。中国国務院(内閣に相当)が公開した草案は、一部規制セクターについて、外国人による中国企業の「実効支配」を明確に禁止している。
北京大学のギリス会計学教授は、アリババなどのVIEは例外とされる可能性が高いが、外国人投資家の権利保護が低下するのは避けられないと指摘。「発言権のない株式を買おうと思うだろうか」と語った。
Pete Sweeney記者、David Lin記者 翻訳:吉川彩 編集:吉瀬邦彦
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