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ドル高の裏で起きるマネー巻き戻し、日本株は円安が「命綱」

[東京 1日 ロイター] - コモディティや新興国通貨など値動きの激しい市場から、短期資金の巻き戻しが始まっている。ドル上昇により割高感の出た国際商品が売られ、資源国通貨も下落するという構図だ。欧州や中国の需要が弱いという背景もある。

 10月1日、コモディティや新興国通貨など値動きの激しい市場から、短期資金の巻き戻しが始まっている。ブラジルレアルの図柄を模した落書き。リオデジャネイロで7月撮影(2014年 ロイター/Pilar Olivares)

日本株は円安が「命綱」となりアンワインドの波を防いでいるが、経済は足踏み状態で、ぜい弱さも透けて見える。

<ドル急伸で連鎖的な売り>

構図としては昨年5月と同じだ。米国の金融政策の転換期が近づいてきたとの観測から、グローバルマネー、特に一部のヘッジファンドによる短期資金の巻き戻しがコモディティや新興国通貨など投機資金の動きが激しい市場で加速している。しかし、前回と違うのは、ドルの上昇が急ピッチという点だ。

ドルインデックス.DXYは前日の海外市場で86ポイントまで上昇。2010年7月以来、4年3カ月ぶりの高値を付けた。7月の79ポイント台から9%近い上昇だ。これに対し、昨年5月は81ポイントから84ポイントと4%弱の上昇にとどまっている。

昨年5月はバーナンキ前米連邦準備理事会(FRB)議長が量的緩和第3弾(QE3)縮小の可能性を示唆したことで、リスクオン相場が崩れたが、実際に政策変更されたのはその年の年末で、あくまで思惑先行の調整だった。

しかし、今回は今月中にもQE3の終了が予定されていることで「思惑ではない実需のドル買いが入っている」(国内銀行)という。

その急速なドル高に敏感に反応しているのが、今回のコモディティや新興国通貨の調整だ。国際商品の多くはドル建てのため、ドル高になれば割高感が出て売られる。ブラジルやロシアなど資源国の通貨は、国際商品価格の下落も売り材料だ。さらにドル高進行により、新興国通貨が対ドルで相対的に下落する面もある。

<G20当局も意識するスピルオーバー効果>

「新興国には多額の政府債務・民間債務を抱える国が多く、将来、米金利が上昇すれば、世界的な金利水準の引き上げによって財政を直撃するとの懸念も強まっている」と三井住友銀行・シニアグローバルマーケットアナリストの岡川聡氏は指摘する。

G20などの政策当局者の間でも、QE3の終了に向けた出口戦略の発動に伴う新興国などへのスピルオーバー効果(新興国通貨の下落や金利上昇、株価下落など)に関し、大きな混乱が生じないような対応策に関心が集まり出しているもようだ。具体的にはマクロ的なサーベランスなどがG20のケアンズ首脳会議で検討される可能性がある。

ドル高が新興国からの資金流出を招き、金融市場が混乱したのは1997─98年のロシア通貨危機やアジア通貨危機が典型だ。市場関係者の一部からは、今回も新興国からの資金流出が加速するリスクシナリオへの懸念も出ている。

<世界需要の減少懸念も>

コモディティ市場の売り要因は、ドル高だけではない。世界需要の減少懸念も下落相場の大きな背景となっている。

世界経済では、米国の好調さだけが目立つが、欧州や中国の経済は減速気味。9月半ばに国際エネルギー機関(IEA)が2015年の石油需要予想を下方修正。欧州と中国の景気減速を背景に、世界の石油需要の伸びは「驚くほどの」ペースで鈍化しているとの認識を示したことが話題になった。

米WTI原油先物(11月限)は30日の市場で1バレル94ドル台から91ドル台に3%強の急落。9月の石油輸出国機構(OPEC)加盟国の産油量が約2年ぶりの高水準まで上昇したと報じられたことも売り材料視されたが、大きな背景はドル上昇と世界需要の減少だ。

原油価格は今年初め、中東の地政学リスクへの懸念から88ドル台まで下落。その後、石油関連の施設への影響はないとの見方が広がり、6月には103ドルまで上昇していた。その後の下落でロングポジションはだいぶ解消されたとみられるが、売りは止まらない。

「原油価格の下落が他の市場に波及している」(アストマックス投信投資顧問・コモディティ運用部シニアファンドマネージャーの江守哲氏)とされ、金や穀物など他の商品市場も軟化。クレジット・スプレッドやハイイールド債など、投機的な資金の出入りが激しい市場でも売りが加速している。

市場では「世界経済の停滞感が広がっており、ヘッジファンドなどがいったん巻き戻しに入っているようだ」(ばんせい投信投資顧問・商品運用部ファンドマネージャーの山岡浩孝氏)との見方が多い。11月は一部のヘッジファンドの決算月。これまでのリスクオンから早くも利益確定売りに動いているとみられている。

<円安で覆い隠される日本の弱さ>

こうした資金のアンワインドは、日本市場にはまだ及んでいない。日経平均.N255は1日の市場で利益確定売りに押され91円安となったが、プラス圏に浮上する場面もあるなど、高値圏でのもみあい商状となっている。

日本株の下支え材料は円安だ。輸出数量は伸びなくても、為替差益だけで輸出企業の多くは利益を押し上げられる。大企業や製造業の影響力が大きい日本株市場は「円安が続いている限り、大崩れはない」(国内証券)との強気な見方が多い。

本日発表された9月日銀短観でも、大企業・製造業の相対的な強さが目立った。大企業・非製造業や中小企業の景況感は悪化した一方、大企業・製造業の業況判断DIは市場予想に反して2四半期ぶりに改善した。

しかし、それゆえ日本株の「命綱」は円安ともいえる。「景気があまり良くないのに日本株が上昇しているのは、円安による企業収益の改善が期待されているからに他ならない。円安という材料がなくなれば、停滞する景気という現実が露呈されるだろう」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は話す。

東京証券取引所がまとめた9月16日─9月19日のプログラム売買状況によると、金額ベースの裁定買い残(当限・翌限以降の合計)は3兆6325億円と6週連続で増加した。直近のピークは昨年末の4兆0190億円、昨年5月の株価急落前は4兆2672億円だった。このまま積み上がっていけば、巻き戻しのときに反動も大きくなると警戒されている。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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