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GDPショックで株高シナリオ狂う、アベノミクスを問う選挙に

[東京 17日 ロイター] - 日本の7─9月期国内総生産(GDP)が予想外のマイナス成長となったことは、マーケットにもショックをもたらした。多少、景気の悪さを示す数字が出ても消費再増税延期や政策期待で景況感や市場にはポジティブとの見方もあったが、2期連続のマイナス成長は楽観シナリオに修正を迫り、株安・円高が急速に進んでいる。解散・総選挙があるにしても、アベノミクスの成否が問われることにになりそうだ。

 11月17日、日本の7─9月期GDPが予想外のマイナス成長となったことは、マーケットにもショックをもたらした。写真は都内の株価ボード(2014年 ロイター/Issei Kato)

 <マイナスの事前予想はゼロ>

ロイターがまとめた民間調査機関の7―9月期実質GDP予想の下限は前期比プラス0.2%、年率プラス1.0%であり、マイナス予測は1社もなかった。予測中央値は前期比プラス0.5%、年率プラス2.1%。前期比マイナス0.4%、 年率マイナス1.6%の結果は、まさに「ショック」だった。

もともと7─9月期のGDPがそれほど良くないという前提でマーケットはシナリオを描いていた。景気が悪いために消費再増税の延期が正当化され、解散・総選挙で自民党が大勝、政策期待が膨らむという展開だ。このため、成長率が低くてもプラス成長であれば、織り込み済みという反応になるとみられていた。

だが、4─6月期に続く2期連続のマイナス成長は、そうした楽観シナリオに根本的な修正を迫っている。7─9月期GDPは在庫のマイナスが足を引っ張った格好だが、弱いのは在庫だけではない。消費は前期比プラス0.4%(事前予想はプラス0.8%)、設備投資は同マイナス0.2%(同プラス0.9%)といずれも大きく悪化した。再増税延期は景気にプラスだが、延期で景気が持ち直すとまでは言い切れなくなってきた。

「消費と設備投資はファンダメンタルズの弱さを反映している、在庫の悪化はテクニカルには在庫取り崩しを意味するので悪い内容ではないが、全体としてかなり弱い。輸出の伸び悩みがここ2年ほど続いており、景気のけん引役が見当たらない状況だ」とSMBC日興証券・日本担当シニアエコノミストの宮前耕也氏は指摘する。

<警戒される海外長期投資家の動向>

17日午前の東京市場では、株安・債券高(金利低下)が進行。日経平均.N225は一時500円近い下落となり、1万7000円の大台を割り込んだ。10年長期金利JP10YTN=JBTCは前日比1.5ベーシスポイント低い0.460%に低下。ドル/円は、政策期待からいったん117円台に上昇したものの、株安進行が嫌気され115円半ばまで軟化した。

日本株の売り主体は海外短期筋とみられている。海外投資家は10月最終週と11月第1週の2週間で現物と先物を合わせ、過去最高水準の約3.5兆円を買い越し。その間、日経平均は約2200円上昇しており、GDPが大きく下振れたことで、利益確定売りを出したもようだ。

ただ、より警戒されるのは短期売買を得意とするヘッジファンドなどよりも、海外の長期投資家の動向だ。

GDPは過去の数字であるものの、海外投資家にとって最もわかりやすい指標でもある。2四半期連続のGDPマイナス成長はテクニカル上、景気後退(リセッション)だ。8%への消費増税で4─6月期はマイナス成長でも、7─9月期には持ち直すという政府のシナリオもGDP1次速報の時点では崩れたことにる。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが14日公表したリポートによると、12日までの1週間に日本の株式ファンドから世界全体で38億ドルが流出した。2010年5月以来の大幅な流出になったという。

海外投資家は昨年、アベノミクスを好感し、日本株を約15兆6500億円(現物・先物合計)買い越した。日本企業の業績は回復しており、日本株高の裏付けがないわけではないが、アベノミクスが失敗に終わったと判断すれば、ポジションの縮小に動く可能性もある。

<政局にも不透明感>

実際、2期連続のGDPは今後の政局における不透明感も強めている。解散・衆院選挙があっても、「野党の弱体化が目立つ中では、自民党の大勝は確実」(国内銀行ストラテジスト)とみられていたシナリオが、予想外のGDP悪化で揺らぎ始めているからだ。

「GDP成長率がプラスかマイナスかの違いは大きい。わずかであってもプラスなら、アベノミクスは成功しているのだと言い張れるが、マイナスならそうはいかない。選挙で自民党が大勝するとのシナリオで進んできた市場だが、わからなくなってきた」とシティグループ証券チーフエコノミストの村嶋帰一氏は指摘する。

大和証券チーフテクニカルアナリストの木野内栄治氏によると、過去14回の解散のケースでは解散日から投開票日までの日経平均は13勝1敗となっているが、予想外のGDP悪化で市場では「少なくとも選挙結果が出るまでは株高は進みにくくなった」(外資系証券)との声も出始めた。

当初、解散・総選挙があるとすれば、消費再増税が争点になるとみられていたが、今回の「GDPショック」でアベノミクスの成否が問われることになりそうだ。

ニッセイ基礎研究所チーフエコノミストの矢嶋康次氏は「税金だけでなく重要法案審議の先送りなど極めてコストが高い選挙を行うというなら、消費再増税の延期を問うというよりも、円安や超金融緩和などこの2年のアベノミクスの成否を問う選挙になるし、そうならなければいけない」と話している。

(伊賀大記 編集:宮崎亜巳)

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