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インタビュー:ギリシャ問題、IMF内緊張高める=竹森慶大教授

[東京 9日 ロイター] - 慶應義塾大学の竹森俊平教授は、公的部門が保有するギリシャ向け債務の不履行(デフォルト)という前例のない事態が、国際通貨基金(IMF)や欧州通貨基金(ECB)内部での政治的な緊張を高めていると指摘した。

 7月8日、慶応大学の竹森俊平教授は、公的部門が保有するギリシャ向け債務の不履行という事態が、国際通貨基金内部での政治的な緊張を高めていると指摘した。写真は銀行の支店に詰め寄る年金受給者、ギリシャ・クレタ島で9日撮影(2015年 ロイター/Stefanos Rapanis)

また、ギリシャ債務の減免なしには、新プログラムはまとまらないとの見方を示した。

<IMF内部に政治的緊張が走る>

8日に行ったインタビューで、竹森教授はギリシャ問題が「IMF内でのフランスの政治力に打撃を与える可能性がある」と指摘した。

2010年のギリシャ債務危機時、フランス出身のストロスカーン専務理事(当時)の下でIMFは「システミック・リスク」回避を名目に、ヘアカットせずにギリシャを支援した。

竹森教授は、フランス金融機関の対ギリシャ・エクスポージャーへの配慮があったと分析する。

だが、6月30日に返済期日を迎えたIMF融資はデフォルト状態に陥り、フランスの立場が悪くなったとみる。  

また、米国とIMFの関係にも変化が起きそうだ。

IMFは2010年に中国など新興国の発言権向上を目指し増資改革を決定した。だが、米議会は財政負担拡大などへの懸念から承認を見送っている。

ギリシャ向け融資の返済目途が立たなければ、米国は増資に一段と後ろ向きになり、共和党がIMF脱退を主張しかねない、と同教授は予想する。

融資の焦げ付きは、将来、規模が大きな新興国が危機に遭遇した際に、IMFの支援能力の低下を意味し、新興加盟国から不満が噴出する余地もある。

<ECBは政策のフリーハンドを失う>

ECBが保有するギリシャ国債(35億ユーロ)の償還期日が、今月20日に迫っている。

ユーロシステムのギリシャ向けエクスポージャーは5月末時点で1180億ユーロ。ギリシャのユーロ圏離脱が起きた場合、損失は最終的にECBと各国中銀が分担することになる。 

竹森教授は「ECBの今後の行動は、制約されることになるだろう」と述べ、ユーロを守るために「何でもする用意がある」と決意表明したドラギ総裁の手足が縛られることも想定されるとした。

<債務減免への駆け引き>

IMFは2日、ユーロ圏諸国が公表を取りやめるよう働きかけていた「ギリシャ債務の持続可能性に関する報告書」を公表した。大幅な債務減免が実施されない限り、ギリシャ債務は持続可能にならないとし、今後3年で少なくとも500億ユーロの追加支援が必要とした。

だが、ドイツは債務減免はEU条約に照らして違法と断じている。

竹森教授は「IMFの政治的な方向性は米国が管理しているので、このタイミングで報告書が発表されたのは、米国がギリシャの債務減免を支持するというメッセージだろう」との見方を示す。

ギリシャは8日、欧州安定メカニズム(ESM)へ支援を要請したが、ハードルが高い元本削減を債権者に求めてはいない。  

「ギリシャ経済は資本規制導入によって大幅に落ち込むことが予想される。今年はマイナス5%程度の成長率になってもおかしくない。債務の減免がなければ、ドイツが希望する通りのIMFが参加した新プログラムをまとめることはできないだろう」との見方を示した。

<専務理事、日本人に白羽の矢の可能性>

IMFの対ギリシャ融資が焦げ付いた場合、拠出金に応じて、日本は2000億円程度の損失が出るもようだ。

人事面では、欧州勢のしがらみから自由な日本から次期専務理事を任命するのも可能性の1つだと考えている、と竹森教授は述べ、有力な候補として、米コロンビア大学大学院の伊藤隆敏教授を挙げた。

森佳子 編集:田巻一彦

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