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高まる「夏の電力不足」リスク、原子力規制改革の遅れで危機増大

[東京 26日 ロイター] 東京電力9501.T柏崎刈羽原子力発電所(新潟県柏崎市・刈羽村)6号機が26日未明、定期検査で停止したことで全国で稼動する原発が1基となる中、政府と国会の混乱により新しい原子力規制体制が遅れ、夏の電力危機の可能性が一段と高まっている。

3月26日、東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県柏崎市・刈羽村)6号機が、定期検査で停止したことで全国で稼動する原発が1基となる中、政府と国会の混乱により新しい原子力規制体制が遅れ、夏の電力危機の可能性が一段と高まっている。写真は送電線。福井県で2011年7月撮影(2012年 ロイター/Issei Kato)

産業界からは電力不足を回避すべきとする声が上がるが、原発立地の地元は再稼動に慎重姿勢が根強く、危機解消のシナリオが見えてこない。

<再稼動へ前のめりの野田政権>

全国54基(廃炉決定の福島第1原発1─4号機含む)のうち唯一稼動中の北海道電力9509.T泊3号機も5月5日に定期検査で停止する。一方、関西電力9503.T大飯(福井県おおい町)3・4号のストレステスト(耐性評価)1次評価の内容について、経済産業省原子力安全・保安院が「妥当」との判断を示し、国の原子力安全委員会も「問題ない」とする確認書をまとめた。

再稼動に向けては、野田佳彦首相と枝野幸男経済産業相ら関係3閣僚が政治判断を行い、地元をどのように説得するかが焦点となる。野田首相は、3月11日の記者会見で、再稼動問題における地元説得について、「政府を挙げて説明し、理解を得ることを行わなければならないし、私が先頭に立たなければいけない」と強調、再稼動への意欲をみせた。

注目は国内最多の商業炉13基を抱える福井県の動向。西川一誠知事は原発再稼動の条件として、「国が福島原発事故の知見を反映した暫定的な安全基準を示すことが大前提」と繰り返し説明している。保安院は今年2月、外部電源系統の信頼性向上など30項目の安全対策の必要性を公表したが、枝野経産相は今月23日の記者会見でこの30項目を整理して暫定的な安定基準とする考えを表明するなど、西川知事の要請に配慮を示した。

<夏の需給ギャップ解消めどつかず>

政府の「エネルギー・環境会議」は昨年11月、原発の稼動がゼロで2010年並みの猛暑だった場合に、今年夏の9電力合計の最大需要は1億7954万キロワットを想定し供給力は1億6297万キロワットの見込みで、差し引き1656万キロワット、9.2%の供給不足の見通しを示した。電力会社が緊急に増強する火力発電の供給増を最大に見込んでも追加分は400万キロワット余りに止まり、約7%の供給不足が見込まれる状況だ。

枝野経産相は過去の会見などで、今年夏に原発の稼動がゼロの場合でも、「国民に相当の節電の協力をお願いしないと乗り切れないとは思っているが、国民の協力と供給の積み増しの成果が上がれば、(電気事業法に基づく)強制力を伴った形の電力使用制限令を出さずに乗り切りたいし、可能性もある」と繰り返し説明している。

昨年夏は、東電と東北電力9506.Tの2電力管内で大口需要家を対象とする電力使用制限令を出したが、原発自体は全国で15─17基程度が稼動していた。今年夏の再稼動に向けた安全確認の手続きで進展があるのは大飯原発3・4号機のほか、ストレステストの内容について保安院が「妥当」との判断を示した四国電力9507.T伊方原発3号の計3基(合計出力325万キロワット)があるが、仮に3基が再稼動しても需給ギャップは依然として約5%残る計算だ。

夏の需給ギャップ解消にめどが立たない状況に産業界は苛立ちを募らせている。日本鉄鋼連盟は2月末、「今後、全ての原発の稼動が停止し、電力値上げが全国に波及した場合は、国内の他地域への生産シフトもできない状況になり、鉄鋼業をはじめとする日本の産業空洞化と雇用の喪失が一層加速する」などとする要望書を枝野経産相に提出した。

しかし、今年夏の需給見通しを出すのは「4月下旬から5月上旬ぐらいがターゲット」(枝野経産相)で、企業の大半が過年度決算と新年度の事業計画をまとめる時期に重なる見通しだ。政府関係者は「企業や家庭に節電を要請するにしても、早めにしないと生産計画など産業界の対策が間に合わない」と、企業活動への影響を懸念する。

<原子力規制庁の発足はいつか>

ただ、原発再稼動は「安全・安心に関わるもので、電力需給とは別次元のもの」(枝野氏)というのが政府の位置付けだ。ロイターが原発立地の13道県知事らにアンケート調査したところ、北海道、宮城、新潟、茨城、福井、島根の6道県の知事が再稼動の前提として福島事故の原因究明と再発防止策確立の必要性を挙げた。

福島事故の反省を契機に、政府は原子力の推進と規制が経済産業省のもとで進められていた仕組みを改めて、新たな規制機関となる「原子力規制庁」の4月1日の発足を目指していた。ただ、法案の国会審議が始まらず発足時期がずれ込むことが確実になった。

法案成立のカギを握る野党・自民党の茂木敏充政調会長は25日のNHK番組で、規制庁の発足について「急ぐ必要があるが、環境省のもとに置くという案と、より独立した(国家行政組織第3条に基づく)三条委員会でやったほうがいいという意見に分かれている。キーワードは独立性。規制組織本体の組織も人事面、予算面の独立をもっと確保しなければいけない」などと注文を付けた。今後は政府・与党が規制庁に関する国会審議の進展に向けどのような打開策を示すかが注目される。

(ロイターニュース、浜田健太郎)

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