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消費税法案不成立なら海外勢は株売り、「話し合い」進展みられず

[東京 6日 ロイター] 消費税引き上げ法案の取り扱いをめぐり金融市場の懸念が強まっている。法案成立を条件に衆院の解散・総選挙に踏み切る「話し合い解散」への流れは途絶えていないものの、具体的な進展がみられないためだ。法案不成立なら日本の財政再建に向けた取り組みが危うくなるとの懸念から海外勢による株売りが想定される。

4月6日、消費税引き上げ法案の取り扱いをめぐり金融市場の懸念が強まっている。写真は野田首相。5日撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)

消費税引き上げの決着/衆院解散が金融市場にとってのベストシナリオ。ただ、解散・総選挙の前提となる1票の格差是正のスケジュールが定まらず、解散時期については越年のシナリオも浮上している。

<消費税引き上げ後に追加緩和なら日本株は強含み>

消費税法案が不成立となった場合には、日本の財政再建が後退するとの見方から金融市場は株売りに傾く可能性が指摘される。りそな銀行チーフストラテジストの高梨彰氏は「まずは株売り」とし、「日本国債や円も売られる」とみている。欧州系証券の株式トレーダーも、「海外勢が銀行株を売り進める」と予想する。日本国債を多く保有する国内金融機関の資産の劣化につながるためだ。ただ、日本国債については「( 株安を受けて)惰性で買ってしまう」(ストラテジスト)との見方もある。

日本株の場合、1月から3月まで約20%上昇。銀行株が25%程度上昇したことが原動力となったが、足元で消費税引き上げ法案の成立に対するリスクが意識され、みずほフィナンシャルグループ8411.T、三菱UFJフィナンシャル・グループ8306.Tなど銀行株は3月末以降弱含んでいる。調整局面入りした日本株は銀行株が売り地合いに転じれば、調整だけにとどまらない可能性も指摘される。

逆に法案が成立した際の反応については見方がわかれる。みずほ総研シニアエコノミストの武内浩二氏は「消費税引き上げが必ずしも景気に悪影響を及ぼすわけではない」とし、中長期的な売り材料にはなりにくいとみている。一方、りそな銀行の高梨氏は消費税引き上げ後は「消費に影響がある」と否定的な見解だ。高梨氏は「消費税を引き上げたうえで日銀による追加緩和を進めれば株価が強含む」と述べている。

<民主が自民・公明への歩み寄りで法案成立に布石>

消費増税法案の閣議決定直前、民主党の小沢一郎元代表のグループは政務3役や党の役職に就いているメンバーを辞任させる動きに出た。また、連立を組む国民新党も分裂騒動に発展するなど、消費税引き上げをめぐり与党内が大きく揺れた。それでも野田佳彦首相は消費税引き上げについて「政治生命を懸けて」取り組むとの姿勢を崩していない。

法案成立を目指すには自民・公明が求める「話し合い解散」を受け入れざる得ない状況だ。仮に小沢グループが法案に反対しても自公の協力を取り付けられれば成立する。民主、自民、公明の3党と社民党などの賛成多数で可決、成立した改正児童手当法は、民主党の看板政策の1つだった子ども手当拡充とともに名称を自民・公明連立政権時代の名称に戻したが、これは、消費税法案の成立に向けた歩み寄りとの観測も出ている。

バークレイズ証券の森田長太郎氏は安住財務相が年金交付国債をつなぎ国債発行に切り替える可能性を示唆したことについて「自民党に対する妥協案であり、政策決定が野党主導に傾く流れ」と指摘する。

ただ、消費税法案の審議入りには目途さえついていない。自民党の野田毅党税調会長は消費税法案への対応について「審議しないという話はない」としたうえで、「民主党から何も言ってこないのだからこちらも動きようがない」と述べている。審議入りが遅れれば会期内の成立が危ぶまれる。民主党の城島光力国対委員長は、4日のロイターとのインタビューで「あくまでも会期内に処理していく」と強調した。

<野田政権は時間稼ぎも、橋下氏の人気陰りを待つ姿勢>

今後の国会運営については、懸案となっている1票の格差是正問題への対応がカギを握る。自民党の谷垣禎一総裁は5日午後、定例記者会見で消費税引き上げ法案に関し、審議入りの前提として衆院の1票の格差是正などを進めるべきとの考えを示した。この問題については、自民党が選挙区「0増5減」案の先行実施、公明党と社民党は比例代表連用制の導入など抜本改革との同時決着を主張。民主党は「0増5減」と比例80削減の実施を条件に、連用制の一部導入を認めるなど、各党の隔たりは大きい。

1票の格差是正には各党実務者による「衆院選挙制度改革与野党協議会」の再開が必要で、実際に区割りなどの協議には数カ月単位の時間を要すると観測される。このため、官邸内には12月まで大幅延長といったシナリオもある。そうなると解散時期は年明けとの見方もできる。民主党代表選や自民党総裁選が実施される9月をまたぐ可能性もあるため、なお視界が開けない状況だ。

国内メディアの支持率調査によると、野田内閣の支持率は低迷する続く一方、橋下徹大阪市長率いる維新の会への期待が強まっている。橋下氏は石原慎太郎都知事と会談を重ねていると伝えられるが、与野党内では橋下氏らが今後どのように行動するのか計りかねている。消費税引き上げ法案の審議や1票の格差是正協議の長期化には、支持率の高い橋下氏のメッキがはがれるのを待つとの効果もありそうだ。

(ロイターニュース 吉池 威 編集 橋本浩)

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