[ロンドン 12日 ロイター] 日米欧7カ国(G7)は12日、為替に関する声明を発表した。
市場関係者のコメントは以下の通り。
●G7が日本のデフレ対策理解とした麻生財務相は見当違い
<デイリーFXの通貨アナリスト、クリストファー・ベッキオ氏>
日米欧7カ国(G7)の為替に関する声明は当初、円を一段と押し下げた。G7各国は金融緩和の強化など日本のデフレ不況対策が為替を目的としていないと認識していると麻生太郎財務相は発言したが、これは全くの間違いだったようだ。
G7高官は米株市場が開く直前のタイミングで、市場は声明を誤って解釈しているとし、円の過度な変動に対する懸念を示唆したと指摘した。また日本の政策が週末にモスクワで開催される20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の主要議題になるとの見方も示した。
これに反応し、円は上昇した。為替の過度な変動抑制を狙った声明で、逆に変動を増幅させたことは皮肉な結果だ。
●モスクワG20で日本に強い圧力
<ザンクト・ガレン大学(スイス)のサイモン・エベネット教授(経済学)>
モスクワで15─16日に開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、通貨戦争に関して巧妙な攻防があると予想される。
G20は通常は声明で(特定の国を)名指しすることはしないが、日本に対して水面下で強い圧力がかけられ、次期日銀総裁は円安政策をさらに押し進める誘惑にかられるべきではないとのメッセージが明確に示されるとみている。
インド、ブラジル、中国、ロシアはG7に属していない。このため、G7が示した為替に関する確約はこれらの国々に大きな影響力を持たない。G7財務相の確約は、これらの4カ国の政府を動かす効果はない。
新興国の間では、G7による競争的な通貨切り下げにより輸出が阻害されるとの懸念が広がっている。G7各国の中央銀行は、単に責務を果たすために緩和的な金融政策を導入していると反論しているが、これは新興国の報復的な態度を招くだけだ。
●G7内の意見の相違、当局者発言が示唆
<BNPパリバの外国為替ストラテジスト、バッシリ・セレブリアコフ氏>
(声明は円の過度な変動および円相場に関する日本当局者の発言に対する懸念を示唆したものだったとするG7当局者の)発言は、G7内で意見が多少分かれていることを示しているようだ。声明は明らかに合意を反映したものだが、円について一部がより強い懸念を抱いている。率直に言って大変短い声明で、誤って解釈する余地がどれほどあるのかは分からない。
G20では新興国の主張が重みを増せば、やや(方向性が)明確になる可能性はある。為替への直接的な言及にはより慎重な内容になるとみられるが、基本的には成長を下支えするために必要な範囲で緩和するかは各国に委ねられている。こうした(緩和)政策は、英国や日本、米国を見れば、G7で大変広く採用されているからだ。
●円安懸念で要人の追随なければ円売り一服は一時的に
<ドイツ銀行のG10為替戦略責任者アラン・ラスキン氏>
為替の過度な変動に関する日米欧7カ国(G7)の声明について米当局者が名前を明かして言及しない限り、日本を除くG7諸国が円安にしびれをきらしているという明確なシグナルを送ることはできないだろう。
G7声明は誤って解釈されたと述べた当局者が誰で、どのくらい高い地位にあるかは分からない。率直に言って混乱が生じているが、要人が名前を明かして同様の発言をしない限り、円売りは一時的にしか抑制されないだろう。
週末の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で日本と米国の政策が圧力にさらされても誰も意外とは受け止めない公算で、市場の反応は限定的になる見通しだ。
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」