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原発は「重要電源」、エネ基本計画原案を提示

[東京 6日 ロイター] -国の中長期のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の策定議論を行ってきた総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)基本政策分科会は6日、原子力発電を重要電源として活用していくことなどを盛り込んだ基本計画の原案を提示した。

12月6日、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会は、原子力発電を重要電源として活用していくことなどを盛り込んだ基本計画の原案を提示した。写真は福井県の原発から敷設された送電線。2011年7月撮影(2013年 ロイター/Issei Kato)

原案は将来の原発依存度は示しておらず、出席委員からは「わかりにくい」(橘川武郎・一橋大学大学院商学研究科教授)との指摘があった。分科会の三村明夫会長(新日鉄住金5401.T相談役名誉会長)は、「数量計画が入っておらずやり残した点があるが、今回はこれで取りまとめたい」と述べた。13日の次回会合で計画案を取りまとめ、来年1月中にも新計画が閣議決定される見通しだ。

<原発は重要なベース電源>

原案では、東京電力9501.T福島第1原発事故について「発生を防げなかったことは真摯(しんし)に反省」としながらも、電源としての原子力について「安定供給、コスト低減、温暖化対策の観点から引き続き活用していく重要なベース電源(基礎的電力)」と位置付け、「原子力規制委員会によって安全性が確認された原発は再稼働を推進」と明記した。

現行のエネルギー基本計画(2010年6月策定)は2030年時点の原子力依存度を50%以上としているが、今回の原案は「省エネ、再生可能エネの導入や火力発電効率化等により可能な限り低減」とし、同依存度の具体的な数字は示さなかった。その一方で「わが国のエネルギー制約を考慮し、必要とされる規模を十分に見極めてその規模を確保」と記載し、一定の依存度を残す方針を強調した。

<最終処分場、国が前面>

福島事故発生に伴う原発批判の高まりを受けて、民主党前政権は昨年9月、「2030年代に原発稼働ゼロが可能となるよう政策資源を総動員する」と脱原発方針を掲げたが、昨年末の衆議院選挙による自民党の政権復帰により安倍晋三政権が路線を転換。エネルギー基本計画は法律に基づく政策で、閣議決定により前政権の脱原発方針を正式に破棄する形だ。

ただ、福島第1原発では貯蔵タンクからの汚染水漏れなどトラブルが多発。事故発生から3年近く経ったいまも安定化にはほど遠く、原発に対する世論は引き続き厳しい。また、小泉純一郎元首相が先月の会見で、安倍首相に「即時の原発ゼロ」を迫るなど、原発問題は引き続き政治的な対立を引き起こすリスクをはらんでいる。

小泉元首相は原発ゼロを主張する根拠として、原発利用により発生する「核のゴミ」の最終処分場が確保できないことを挙げた。「トイレなきマンション」と批判されてきた最終処分場問題の解決に向けて、電力業界など出資の「原子力発電環境整備機構(NUMO)」が2002年以降、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の候補地の選定作業に当たってきたが、まったくめどがつかない状況だ。

元首相の批判に呼応したかのように、経産省が設置した作業部会が、最終処分場の確保で国が前面に立つ方針を先月に打ち出し、エネルギー基本計画の原案に盛り込んだ。ただ、国主導となったとしても最終処分場の候補地探しは容易ではない。

原発立地県の西川一誠・福井県知事は会合で、最終処分場を確保する前の段階で使用済み核燃料を長期間にわたり貯蔵する中間貯蔵施設について「電力消費地との分担が必要」と述べ、大都市圏でも施設の受け入れ態勢が必要との認識を示した。原案では使用済み核燃料を再処理して原発で再利用する「核燃料サイクル」も「引き続き着実に推進」するとした。

<新増設の必要性明記は見送り、今後に含み>

民主党政権の脱原発政策も「安全性が確認された原発は重要電源として活用する」としており、既存の原発を再稼働させる点においては、今回の原案と変わらない。一方で前政権は、1)40年運転制限制の厳格運用、2)原発の新増設を認めないことにより将来の稼働ゼロを目指すとしたが、政権交代によりこの点がどう変化するのかが不透明だった。

特に電力業界は、前政権が封印した「原発の新増設」の復活にも期待感を抱いた。ただ、原発に対する世論の厳しさに加え、自民党も連立を組む公明党との連立合意で「可能な限り原発依存度を減らす」としており、今回の原案でも新増設に関する記述は盛り込まれなかった。

ただ、茂木敏充経産相は「原発の再稼働の状況などを踏まえて、3年以内にエネルギーのベストミックスの目標を設定」(10月25日の記者会見)との考えを示している。年明けにも決まる新しいエネルギー基本計画は、将来の段階で新増設容認に転じる可能性に含みを残したとも言えそうだ。

浜田健太郎

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