[ワシントン/東京 19日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)は18日、連邦公開市場委員会(FOMC)後の声明で、債券購入額を月額で100億ドル減らして、計750億ドルにすると決めた。
市場関係者のコメントは以下の通り。
●効果的なフォワードガイダンス入る
<ドイツ証券 チーフ金利ストラテジスト 山下周氏>
緩和縮小(テーパリング)と利上げを基本的に分けて考えることが、マーケットに浸透してきた印象だ。テーパリングのタイミングについては、あまり意味を持たないと思っている。利上げのタイミングをどうするか、本格的な金融引き締めが始まるタイミングをどのようにマーケットに示唆するかが一番のポイントだ。その意味では、フォワードガイダンスの中で、失業率を下げることが焦点だったが、インフレのフロアーを設けてきたことが、今の時点では強めの拘束力になるとみている。効果的なフォワードガイダンスが入ったと受け止めている。リスクオンの材料としてとらえられており、円債には長いタームで考えるとネガティブに働く可能性がある。
●米国債動向がドル/円のカギ
<JPモルガン・チェース銀行 チーフFX/EMストラテジスト 棚瀬順哉氏>
米FOMCでは量的緩和縮小を決定すると同時に、明示的ではないものの、フォワードガイダンスの強化につながるハト派的な要素を盛り込み、利上げ期待の抑制に成功した。
声明の景気見通しはやや上方修正され、景気と労働市場の見通しに対するリスクは、下振れ方向から「概ね均衡」に変更された。
FOMCを受けて、株価が上昇し、円は全面安となり、FOMCは株高/円安の流れを強化する要因となった。
一方、米10年債利回りは、FOMC声明発表後に大きく上下変動したあと、結局は声明発表前の水準に戻っている。2年債利回りは低下しFF金利先物に織り込まれたFRBの利上げ期待も低下した。
今後、10年債利回りが3%を目指すようであれば、年内に105円を試す可能性があるだろう。しかし、米量的緩和第1弾(QE1)、第2弾(QE2)終了後の反応と同様に、米10年債利回りが低下するようなら、ドル/円相場の上値は重くなると予想する。
●マイルドな縮小幅と低金利長期化を評価
<いちよしアセットマネジメント 執行役員 運用部長 秋野充成氏>
米連邦準備理事会(FRB)は量的緩和の縮小を開始したが、債券買い入れ額の縮小幅が月100億ドルとマイルドなものとなった。加えて、失業率6.5%という目標を掲げているものの、市場ではゼロ金利解除に対する時間軸が長期化している。イベント通過に加え、米金融政策の方向性がある程度明らかになったことが好感され、投資家はリスクオンに傾いている。
米株高・円安を受けて東京市場では買いが先行する見通し。シカゴの日経平均先物3月限(円建て)が1万5895円となっており、もう少し円安に振れれば、節目の1万6000円トライとなりそうだ。
●市場想定より早い時期にゼロ金利政策終了も
<東海東京証券 チーフエコノミスト 斎藤 満氏>
米連邦公開市場委員会(FOMC)では、失業率が6.5%以下に低下しても、インフレ率が目標となる2%を恒常的に下回るようであれば、ゼロ金利を続けるとの政策的意向が確認された。
しかし、逆から見れば、失業率が半年以内に6.5%以下となり、物価上昇率も早い段階で2%を上回れば、来年以降、ゼロ金利政策を維持する保証はしないということだ。これは、市場が想定するより早い時期にゼロ金利政策が終了する可能性を示唆している。
前回10月末のFOMC議事録と考え合わせれば、米連邦準備理事会(FRB)はバランスシートの正常化も既に視野に入れていると考えられる。
●前向きに評価、指標次第で次の展開も
<SMBC日興証券・金融財政アナリスト 末澤豪謙氏>
米連邦準備理事会(FRB)が緩和縮小(テーパリング)実施を決定した。最近の経済指標や米財政協議の進展などを受け、テーパリングの条件が整ったと評価したのだろう。
FRBはテーパリングとともに、金融緩和を引き続き続ける姿勢を示している。100億ドルの資産買い入れ縮小も予想の範囲。前日の米国市場をみると、米連邦公開市場委員会(FOMC)での決定を前向きに受け止めた。タイミングも良かった。
市場は来年にかけて、さらなる資産買い入れ縮小、利上げを織り込んでいくことになるだろう。経済指標の改善が続けば、次の展開を前倒しで織り込んでいく可能性もある。
今後の米国市場はドル高・株高・金利上昇の流れが強まる可能性がある。円安が進めば日本で物価上昇圧力がかかり、円債も影響を受けるのではないか。
●金融政策は再来年も緩和的となる可能性
<INGインベストメント・マネジメント(アトランタ)の債券部門シニアエコノミスト、タンウィール・アクラム氏>
今回、量的緩和(QE)の縮小が決まったものの、金融政策は引き続き来年も緩和的となる見通しで、再来年もそうなる可能性がある。米連邦公開市場委員会(FOMC)では、資産買い入れプログラム終了後もかなりの期間、緩和的な金融政策を維持するとの確約を再表明したほか、経済見通しで示されている通り、インフレ率が長期目標に届かない状況が続けば、失業率が6.5%下回った後も十分な期間、低金利目標(を維持することが適切との見通しを示している。FOMCとしては、住宅ローン市場および住宅市場の回復を後押ししたいとの意向が働いているのだろう。
●1月に50億─100億ドル規模の縮小決定する可能性
<TD証券の金利・為替調査戦略部門グローバル責任者のエリック・グリーン氏>
米連邦準備理事会(FRB)が来年1月ではなく今月に緩和縮小に踏み切ったことは意外だった。FRBが緩和縮小に動く材料はすべてそろっていたが、われわれは1月の縮小開始を予想していた。
今回は小規模な縮小だが、これは1月に50億─100億ドル規模の縮小を行うことができることを示している。1月末には200億ドル縮小されているとの予想していたが、開始時期が若干早まっただけだ。
●フォワードガイダンスはよりハト派的
<イートン・バンス・インベストメント・マネジャーズのグローバルインカムグループ共同ディレクター、エリック・スタイン氏>
米連邦準備理事会(FRB)は失業率の数値基準は変更しなかったが、失業率が6.5%に低下してからもかなりの期間は金利をゼロ%近辺にとどめるとし、フォワードガイダンスをこれまでより幾分ハト派的にした。
2016年12月時点のフェデラルファンド(FF)金利金利予想は現在は1.75%となっている。これまでの予想は2%だった。
文言はこれまでと比べて幾分ハト派的になっている。
● タカ派の勢力拡大を示唆
<ディシジョン・エコノミクスのシニアアドバイザー、キャリー・リーヒー氏>
失業率の数値目標の引き下げに対する暫定的な支持に加え、2014年早期ではなく今回の会合で緩和縮小に踏み切ったことは、タカ派が勢力を強め始めていることを示唆している。
2014年の米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーはよりタカ派色の強い構成となる。正確なフォワードガイダンスや量的緩和に懐疑的なフィッシャー・前イスラエル中銀総裁が副議長に指名されれば、来年のFOMCはかなりタカ派トーンが強まる可能性がある。
*内容を追加して再送します。
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