[東京/ロンドン 13日 ロイター] -サントリーホールディングスSUNTH.ULは13日、米ビーム社(イリノイ州)BEAM.Nの全株式を1株あたり83.5ドル、総額160億ドル(約1兆6500億円)で取得、買収することで合意したと発表した。2014年6月までに買収を完了させる予定。
サントリーによると、ビーム社とサントリーのスピリッツ事業をあわせた売上高は43億ドル(約4450億円)を超え、世界のプレミアムスピリッツ市場において第3位となる。サントリーHDの佐治信忠社長は「世界でも類を見ない強力なポートフォリオを持つスピリッツ事業が誕生することになり、グローバルにさらに大きく成長できることを確信している」とコメントしている。
ビーム社は、バーボンウイスキーの「ジムビーム」やスコッチウイスキーの「ティーチャーズ」などで知られている。買収後は、両社の強力なブランドの展開に加え、販売流通網の拡大や技術交流の深化によって、グローバルな成長の実現を図る。
ビーム社は、米国でウイスキーシェア第2位と強い基盤があるほか、インドやロシア、ブラジルなどでも強く、サントリーは、こうした販路を活用できる。また、両社が一緒になることで、世界の5大ウイスキーの全てのブランドを保有することになる。
買収は、両社の取締役会で全会一致の承認を得ており、今後、ビーム社の株主や規制当局の承認、その他必要な手続きを終了後、完了する予定。
買収額160億ドルは、ビーム社の負債を含む。1株あたりの買収金額は、ビーム社の1月10日の終値66.97ドルを25%上回っており、過去3カ月の加重平均株価を24%上回っている。
買収資金は、手元資金と三菱東京UFJ銀行から調達予定。
サントリーHDは昨年、海外での買収をにらみ、飲料部門のサントリー食品インターナショナル2587.Tの上場を通じて資金を調達している。
1株あたり83.5ドルの買収価格はビーム社の利払い・税・償却前利益(EBITDA)の20倍以上の水準。これは仏飲料大手ペルノ・リカールPERP.PAが2008年に「アブソリュート」ウォッカの製造元を買収した際に支払った過去最高の20.8倍に迫る。
バーンスタイン・リサーチのアナリスト、トレバー・スターリング氏は、サントリーは事業の90%以上を日本国内で展開する一方、ビーム社は今後も米国内で事業を継続することから、アブソリュート・ウォッカの買収と違い、コスト削減の機会は少ないと分析している。
また買収額の割高感から、ライバルの英ディアジオDGE.Lやペルノ・リカールが対抗案を提示する可能性も低いとの見方を示した。
ビームは2011年10月に独立の上場スピリッツ企業となって以降、格好の買収標的と目されてきた。アナリストなどの間では、豊富なバーボン商品を持つビームを、ディアジオが買収すれば理にかなうとの見方が出ていた。ディアジオは多くのスコッチウイスキー商品を持つが、バーボンは手薄なためだ。
同日中盤の米株式市場で、ビーム株価は約24%急騰している。一時83.55ドルまで上昇した。
ビーム社の発表によると、何らかの事情で買収が実現しなかった場合、ビームは契約解除のため、サントリーに対し4億2500万ドルの手数料を支払う。
サントリーの条件を上回る買収案を受けた場合の契約解除手数料は2億7500万ドルとしている。
サントリーは、1971年からビーム社のカナディアンクラブを日本で販売。現在、18ブランドを取り扱っている。一方、ビーム社は、2010年からシンガポールでサントリー商品の取り扱いを開始。現在、9ブランドの販売を行っている。
サントリーのフィナンシャルアドバーザーは三菱UFJモルガン・スタンレー、法務アドバイザーは Cleary Gottlieb Steen & Hamilton LLP。ビーム社のフィナンシャルアドバイザーはクレディスイスとCenterview Partners、法務アドバイザーはSidley Austin LLPが務めた。
*内容を追加して再送します。
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