[ワシントン 7日 ロイター] -米労働省が7日発表した1月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比11万3000人増にとどまり、伸びは市場予想の18万5000人増を大きく下回った。12月分もあわせた2カ間の雇用者数の伸びも3年ぶりの低水準となり、米景気の失速を示唆した。
一方、失業率は5年ぶりの水準となる6.6%に低下した。強弱まちまちの内容となったことで、雇用統計後の金融市場は不安定な展開となった。
エコノミストの多くは、全米の大半の地域が異例の寒波に見舞われたことから、データを深読みすることには慎重だ。
LPLフィナンシャルの投資ストラテジスト、アンソニー・バレリ氏は雇用統計を受けて「米経済の力強さをめぐる懸念は続く」とし、天候など特殊要因の影響を受けていないデータが入手できるのは3月初旬以降になるとの見方を示した。
ウエスタン・ユニオン・ビジネス・ソリューションズのシニア市場アナリスト、ジョー・マニンボ氏は「改善はしたが、伸びはかなり低水準で、米経済が減速しているとの懸念が増す」と指摘した。
12月分は7万5000人増で、上方修正分は1000人増にとどまった。2カ月間の雇用者数の伸びとしては、3年ぶりの低水準となった。
12月分は寒波が大きく影響していると見られているが、1月は天候が主な押し下げ要因ではなさそうだ。
天候に左右されやすい建設業の雇用者数が大きく回復したほか、家計調査でも、天候が理由で働けなかった人は26万2000人と、労働省によると歴史的傾向に整合する水準だった。
雇用者数の伸びが2カ月連続で低い水準にとどまったことで、量的緩和の縮小を進める米連邦準備理事会(FRB)にとっては頭の痛い問題となる可能性がある。
だが、次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)は3月18─19日に開催されるため、その頃までには経済状況をめぐる不透明感が払しょくされているかもしれない。
雇用統計を受けて、株価指数先物は反射的に大きく下落したが、その後米株市場は小幅高で始まった。米債券はデータ直後に逃避買いで価格が急上昇したが、その後は押し戻されている。当初ユーロに対し大きく売られたドルも下げ幅を縮小した。
昨年下期の成長率は年率3.7%と力強い伸びを記録しており、持続的な成長へ移りつつあるとの期待が高まっていた。だが今週3日に発表された1月の供給管理協会(ISM)製造業景気指数が8カ月ぶりの低水準となったほか、1月の自動車販売も振るわず、米景気への楽観論は試される局面にある。
失業率は2008年10月以来の水準となる6.6%に低下した。市場は変わらずの6.7%を見込んでいた。
失業率データの基になる家計調査では、雇用が大きく増加した。
また労働参加率も12月の62.8%から63%に上昇し、明るい材料を提供した。労働参加率は昨年10月と12月におよそ35年ぶりの低水準をつけていた。
労働年齢にある米国民で就業している人の割合は58.8%と、2012年10月以来の高水準となった。
不完全雇用者の割合は12.7%と、2008年11月以来の水準に低下した。これには失業者や、就職の意思はあるが求職を断念した人、経済的理由でパートタイムに就いている人などが含まれる。
レノックス・ウェルス・アドバイザーズのデービッド・カーター最高投資責任者(CIO)は「雇用市場は改善しているが、ペースは緩慢だろう」と指摘。「雇用市場の悪化が今後も続くようなら、FRBは緩和縮小ペースを緩める公算が大きい」と述べた。
失業率は、FRBが利上げ検討の目安としている6.5%の数値基準目前に迫っている。だがFRB当局者は失業率が基準に達しても、当面は利上げはないと明言している。
内訳は、民間部門の雇用者数が14万2000人増加。政府部門は2万9000人減と、2012年10月以来の大幅な減少を記録した。
製造業は2万1000人増え、6カ月連続の増加となった。
小売りは1万2900人減り、3月以来初めて減少した。
半面、建設は4万8000人増に大きく回復し、伸びは2007年3月以来の大きさとなった。12月は悪天候で2万2000人減少していた。
時間当たり賃金は24.21ドルと、前月の24.16ドルから0.05ドル増加した。
平均週間労働時間は34.4時間で横ばいだった。
今回の統計では、雇用者数と週労働時間、平均時給データが2009年にさかのぼって修正された。改定により、2013年3月までの1年間の雇用者数の伸び(季節調整済み)は、当初発表を36万9000人上回った。
また今回の統計では、新たな人口推計が加味されている。
*内容を追加して再送します。
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