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資金供給量が過去最高水準に急増、日銀は波及効果に懐疑的

 12月5日、東日本大震災以降、日銀が10月31日に大規模な為替介入に踏み切った結果、日銀の当座預金残高が膨らみ、資金供給量が急増している。写真は10月撮影(2011年 ロイター/Yuriko Nakao)

[東京 5日 ロイター] 資金供給量(マネタリーベース)が急増している。東日本大震災以降、日銀が潤沢な資金供給を続けてきたことに加え、10月31日の大規模な為替介入の結果、金融機関の手元資金を示す日銀の当座預金残高が膨らんだためだ。いわゆるリフレ派の専門家は、マネタリーベースの増加が景気や物価への刺激効果を持つと主張するが、日銀は懐疑的だ。

日銀が2日発表した11月のマネタリーベース(日銀券、貨幣流通高、日銀当座預金の合計値、平均残高)は前年同月比19.5%増の118兆4978億円と3年3カ月連続で増加、12カ月連続で100兆円の大台を上回り、過去最高となった4月以来の水準となった。政府・日銀が10月31日に実施したドル買い/円売り介入後、日銀は市場に放出された円資金の吸収を見送る「非不胎化」を実施したため、当座預金残高が前年同月比99.1%増の35兆0151億円と7カ月ぶりに大きく伸びた。

マネタリーベースの拡大について、元財務官僚の高橋洋一・嘉悦大教授など、いわゆるリフレ派の識者は、為替の円安誘導効果や景気・物価刺激効果があると主張する。現状のように政策金利が事実上ゼロ%に近い水準にあり、金利引き下げによる刺激効果が期待しにくい状況では、日銀の資金供給により民間部門の資産のなかで現金のウエートが高まることで、民間部門が現金のウエートを減らして他の資産への需要を増やすと考えられるためだ。

また、2国間の為替相場は貿易実需よりも金融資産としての需給で決まるため、マネタリーベースの拡大で相対的に希少でない通貨が安くなるとみる。高橋氏は月刊誌上などで「リーマン・ショック以降、日米のマネタリーベースの比によって円・ドル相場の9割方は説明できる」とし、円の対ドル相場を円安にするには日銀による、さらなる金融緩和でマネタリーベースを拡大することが必要と説く。

これに対して日銀は、マネタリーベースを増やしても、銀行の積極的な貸し出しが増えるなど他の条件が十分にそろわなければ景気・物価の刺激効果は限定的との立場をとっている。白川方明総裁は6月1日、日銀金融研究所主催の国際コンファランスで、かつて総裁がシカゴ大で講義を受けたミルトン・フリードマン教授による「インフレはいつでもどこでも貨幣的現象である」とのフリードマン命題について「『インフレーション』を『デフレーション』に取り替えたら、命題の妥当性はどうなるか」と自問。「『中央銀行は、マネタリーベースの拡大により経済をマネーであふれさせることによって、物価を思いのままに押し上げられる』という意味で解釈する場合、命題は、少なくとも日本や米国の最近の経験とは整合的ではない」と言い切った。例として1997年から2010年の間、日本のマネタリーベースは90%増加した一方、マネー・ストックの増加は30%にとどまり、日本の消費者物価は3.7%下落したことを挙げた。

足元でドル/円が78円台と円安方向に振れているが、マネタリーベースの増加効果というよりも、ユーロ圏の債務危機を背景にしたユーロ安/ドル高の影響を受け、ドル/円でもドルが買われやすくなっているとの声が多い。

外為市場では「マネタリーベースが増えても実質ゼロ金利のもと、名目金利が下がる余地がない。インフレ期待を高めて実質金利を下げる効果も見込みにくい」(JPモルガン・チェース銀行チーフFXストラテジスト 棚瀬順哉氏)との声が出ている。

(ロイターニュース 竹本能文;編集 内田慎一)

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