[東京 31日 ロイター] 30日のニューヨーク外国為替市場では、ユーロが対円で100円を割り込み、10年来の安値をつけた。市場では来年もユーロを取り巻く環境は厳しいとの見方が出ている。識者のコメントは以下の通り。
●欧州財政問題にリスク、達成感出ていない
<JPモルガン・チェース銀 債券為替調査部チーフFXストラテジスト 棚瀬順哉氏>
前日はドル77.50円、ユーロ100円ちょうどのテクニカルポイントを下抜けしたことでフロー主導のドル円、ユーロ円の下げがみられた。欧州財政問題が一段と悪化するリスクがあるため、ユーロ円の下げに達成感は出ていない。
来年Q1には、ギリシャと民間債権団の交渉やイタリア国債の大量償還などがあるが、欧州では民間資金に頼ったスキームのみが存在しているのが現状だ。こうした環境では投資家のリスク回避行動が強まりやすく、ドル買い、円買い、ユーロ円の下落につながりやすい。
●EU首脳会議見極めまで下落トレンド継続
<IGマーケッツ証券 為替担当アナリスト 石川順一氏>
欧州債務問題が意識された。年初から本格稼働する欧州金融安定ファシリティ(EFSF)の資金余力に対する懸念が根強く、国際通貨基金(IMF)に関しても1500億ユーロの支援枠しか用意できなかった。こうした中で、年初の3カ月にはイタリアの国債大量償還などを迎える。安全網の構築が不完全の中で、債務危機に面と向かわなければいけない状況を市場は見透かしている。今後については、1月30日に開催される予定の欧州連合(EU)首脳会議で、不安を払しょくできるかどうかがポイントだ。それまでにも欧州中央銀行(ECB)理事会があるが、ここで国債買い入れ拡大など市場が期待する政策が打ち出される可能性は低い。よって、1月30日のEU首脳会議を見極めるまでは、ユーロの下落トレンドは続きそうだ。
●通過点に過ぎない、企業のヘッジが焦点に
<シティバンク銀行 チーフFXストラテジスト 高島修氏>
ユーロ/円の100円割れは通過点に過ぎない。ユーロを今の危機から脱出させようとすれば、ユーロ/ドルは1.3ドルというよりは1.25ドル、場合によっては1.20ドルなど、ユーロ安が進むような政策──欧州中央銀行(ECB)の利下げも含めて──をやらざるを得ない。そうすると、ドル/円は77円中心だとしても、ユーロ/円は95円程度は見えてくる。日本の輸出企業の売りヘッジが遅れていることも重しになる可能性がある。社内レートは108円とか110円とか言われている中にあって、このユーロ売り/円買いヘッジがどうなってくるのかが今後焦点になってくる。
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」