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市場の根強いQE3期待、米景気や雇用の持続的改善に疑問

[東京 6日 ロイター] 米雇用統計は予想以上の改善を見せたが、市場の米追加緩和期待は根強い。米失業率の水準が依然高いほか、今年後半の米経済失速懸念、ソブリン問題による財政緊縮を迫られる欧州経済など懸念要因は残ったまま。

2月6日、米雇用統計は予想以上の改善を見せたが、市場の米追加緩和期待は根強い。写真は都内の株価ボード。2010年8月撮影(2012年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

持続的な米雇用の改善には疑問が残るとして、米連邦準備理事会(FRB)はいずれ量的緩和第3弾(QE3)に踏みきるとの見方が多い。海外の流れを受けて週明けの東京市場でも株高・円安・債券安となったが、変動幅はいずれも限定的だ。

<高水準のU─6失業率>

米雇用統計には失業率に加えて「U─6失業率」という指標がある。完全失業者に、就業を希望しているが現在は職探しを中断している人と、フルタイムの就業を諦めてパートタイムで働く人を加えた失業率だ。米雇用状況の実体をより表すともいわれており注目度は高い。

前週末に発表された1月の米雇用統計で失業率は8.3%と前月の8.5%から改善し、約3年ぶりの低水準となったが、U─6失業率は15.1%と低下幅は0.1%ポイントにとどまった。9月の16.5%をピークに低下傾向にあるが、依然として15%台と水準も高い。「米雇用は改善しているが内容はそれほど芳しいものではない。レイオフも続いており、このまま雇用が改善し続けるかには疑問がある」(T&Dアセットマネジメントのチーフエコノミスト、神谷尚志氏)という。

実際、1月の米雇用者数は増えたが、サービス業が中心。失業保険が切れた労働者が短期的な仕事に駆け込んだとの面もあるとみられている、「年末商戦が好調で、UPSUPS.Nなどによると、配達量は歴史的に高かったとの話もあり、Eコマース等で購入した商品の発送が1月までずれ込んでいるとの話も聞く」(パインブリッジ・インベストメンツ運用本部長の前野達志氏)との指摘も出ている。

市場では、1月の米連邦準備理事会(FOMC)終了後に公表された今年10─12月期の失業率見通し「8.2─8.5%」に近づいていることから、2014年終盤まで据え置くとした超低金利期間が揺らぐとの見方も強まっている。ただ、目先に関しては市場の追加緩和期待に変化はなく、雇用統計後もQE3期待は継続している。

ロイターが3日、1月の米雇用統計発表後に米プライマリーディーラー(政府証券公認ディーラー)を対象に実施した調査によると、回答した20社中13社が、FRBはいずれ追加の量的緩和に乗り出すとの見方を示した。前週実施した調査では、19社中12社が追加の量的緩和実施を見込んでおり、予想外の改善を見せた1月米雇用統計でも市場参加者の追加緩和見通しに変化はほとんどなかったことを示している。

米国のファンダメンタルズがこのまま改善を続けるかにも不透明感がある。住宅価格は依然低迷し、株価上昇だけでは資産効果は不十分だ。金利低下や原油価格の落ち着きによる景気押し上げ効果にも一巡感がある。10─12月国内総生産(GDP)で示された在庫の伸びや設備投資の鈍化も不安要素。ソブリン問題の深刻化で欧州の多くの国が財政緊縮を余儀なくされており、世界経済の「体力」は低下している。市場では「米経済の失速や欧州問題の破裂に備え、多少の雇用改善ではQE3の選択肢は破棄されない」(T&Dアセットの神谷氏)との声が依然多い。

<株高・債券安は序盤で一服>

6日の東京市場は海外の株高・円安・債券安の流れを受け継いだが、売買が一巡した後はすぐに一服。変動幅は限定的で先行きへの不安感を示した。

前場の東京株式市場で日経平均は反発。内需株の一角を除き幅広い銘柄が買われ、日経平均は8900円を回復した。ただ買い一巡後は伸び悩んでいる。欧州系証券の株式トレーダーによると、海外勢が日経平均9000円上抜けを試す動きがみられる一方で、昨年11月の下落局面で買い支えていた国内勢が売りに回っているという。生保など機関投資家の売りも上値を抑えていると観測されている。

円債市場でも国債先物が続落したが、下値ではヘッジ売りの買い戻しがみられ、取引一巡後は下げ渋った。現物でも、店頭では目立った売り物が観測されず、金利上昇ピッチが鈍った。ドイツ証券チーフ金利ストラテジストの山下周氏は「市場は、株高、債券安で反応し、米ダウ.DJIはリーマン・ショック後の高値を抜けてきたが、欧州やアジア景気悪化の影響が先行きの景気をどの程度下押しするかが読みづらいなか、株高の持続性には疑問が残る」と指摘する。

<対ドルでの円安持続には疑問の声も>

ドル/円の上昇も小幅にとどまった。正午のドル/円は、ニューヨーク午後5時時点に比べ小幅高の76円後半。米雇用統計を受け、海外市場でドル高/円安になった流れを引き継いだが、市場では米雇用改善の持続性に懐疑的な見方が目立っており、上値は限られるとの見方も根強い。

市場では「かなり強い数字の割にはそれほど上げなかった。米経済の先行きに対して、まだ不透明感をぬぐいきれないことが響いているのではないか」(外為アナリスト)といった声が出ている。

JPモルガン・チェース銀行債券為替調査部チーフFXストラテジスト、棚瀬順哉氏は「1月雇用統計発表後にドル/円は上昇したが、発表後にドルは円以外の通貨に対しては売られていることから、ドル/円の上昇は『ドル高』によるものではなく、『円安』によるものだった」と指摘。その上で、リスクオンモード下でのドル/円の上昇持続性について「リスクオンモード自体はしばらく続く可能性が高いとみるが、こうした中で円がドルよりも弱くなってドル/円が上昇する展開は続かず、早晩ドルが弱い円に対しても下落する展開に戻っていく可能性が高い」との見方を示した。

(ロイターニュース 伊賀大記;編集 田中志保)

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