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日銀追加緩和の反響続く、円キャリートレード復活の思惑も

[東京 15日 ロイター] マーケットでは日銀の追加金融緩和の反響が続いている。円安を好感して日本株が大幅続伸となっているほか、円債先物も一段高。円安継続予想を背景に円キャリートレード復活の思惑も出てきた。

2月15日、マーケットでは日銀の追加金融緩和の反響が続いている。昨年12月撮影(2012年 ロイター/Issei Kato)

ギリシャ問題などの懸念要因は残っているが、世界的な金融緩和競争が進む中で過剰流動性相場が加速するとの見方が広がっている。ただ短期筋主導の面が強く、デフレ克服や景気回復の確信が持てないとして実需筋の動きは依然鈍いという。

<過剰な円高の揺り戻しとの見方も>

日銀の追加緩和策発表から一夜明けた後も円安・株高・債券高が継続。ドルは78.67円まで上昇し、11月1日以来3カ月半ぶりの高値を更新した。日経平均は一時250円以上の上昇となり、昨年8月以来の9300円台に乗せた。円債市場で先物中心限月3月限は前日比9銭高の142円65銭と続伸した。

市中に供給するマネーが膨らむことで通貨価値が低下するとの見方が円安を促し、輸出企業や証券会社などの業績回復期待から日本株が一段高となっている。金利低下や流動性増加期待から不動産株など内需セクターの一角も高い。一方、基金による長期国債買い入れ枠を9兆円から19兆円に増額したことで中期ゾーンの金利低下予想が強まっている。

T&Dアセットマネジメント・チーフエコノミストの神谷尚志氏は日銀の追加緩和策に高い評価を示す。「デフレ克服に向けた大きな前進だ。円安気味で株価も堅調な状況での追加緩和策であり、強い追い風になろう」。物価上昇率1%を目指すとしたことで日銀のスタンスが明確になったとして、インフレ期待にも影響を与えると期待している。

円キャリートレード復活の思惑も出ている。東海東京調査センター・シニアストラテジストの柴田秀樹氏は「過剰流動性相場の色合いが濃くなってきた。円を売って高金利通貨や新興国株式を買う動きが強くなりそうだ」との見方を示す。これまでは円高懸念が強かったために、もっぱらキャリートレードの対象はドルやユーロだったが、日銀の追加緩和を受けての円安進行で円も対象になる可能性が出てきた。

世界的な「金融緩和競争」であり、日本だけが突出しているわけではないが、「これまで過剰な円高が進んでいたとすれば、その揺り戻しが起きる可能性がある。1ドル90円程度まで戻してもおかしくない」(柴田氏)という。これまですでに低下していた日本の金利がさらに下がるのは難しく、内外金利差によるキャリートレードは期待しにくいが、超低金利継続期待と円安継続期待が円を売りやすくするとみられている。「値下がりする通貨を売るのがキャリートレードのポイント」(外資系証券)だ。

足元の円安でややボラティリティは高まったが、それでも他通貨に比べ変化率は小さく「ファンディング通貨」としての条件は十分。円高サイドは為替介入でサポートされているほか、貿易赤字の懸念やIMM通貨先物で過去最大水準まで積みあがっている円の買い持ちも、円安進行への期待を膨らませる。

こうしたなか日銀が金融緩和に動いたことで、円は『ファンディング通貨』として最も魅力的な条件を揃えた、とクレディスイス証券・外国為替調査部長の深谷幸司氏は指摘している。

<取引の中心は短期筋>

ただ実体経済への見方がさほど変わらない中で、株高・債券高が同時に進行するなど流動性相場の色合いが濃くなっているのも事実だ。株式市場では短期筋が先物買いを進めている一方で「国内機関投資家など実需筋の動きは依然鈍い。海外勢も短期筋が中心だ」(大手証券トレーダー)という。中央銀行による財政ファイナンスとの懸念は現時点では強まっていないほか、円安によるエネルギー価格の上昇といったネガティブな面は歓迎ムードのなかでかき消されているが、インフレ高進など超金融緩和の副作用には警戒感も強い。

新興国株や通貨は年初からかなり上昇してきており過熱感もある。年初から14日までの上昇率でインドのSENSEX指数.BSESNは約15%、ブラジルのボベスパ株価指数.BVSPは約16%上昇。市場では「過熱感もあり、ここからさらに上昇するかというと疑問が残る」(国内証券)との声も出ている。

商品市場でも日銀の追加緩和の波及があるとの期待もあったが、「実需の資金が回ってきた感じはない」(ばんせい投信投資顧問ファンドマネージャーの山岡浩孝氏)という。先行き不透明な欧州債務問題を背景にドル高が進んだことを嫌気され、14日の米金先物は3日続落となっている。

流入先に困った過剰流動性が日本株を選択するかはまだ不透明だ。世界的に出遅れ感があるとはいえ、予想株価収益率(PER)は20倍を超え、逆に割高感は強まっている。

異例な超金融緩和が「悪い金利上昇」をともなわずに継続されるためには、財政再建と成長戦略を同時に進める必要があるが、政府の税と社会保障の一体改革の実現は遅れており、成長戦略もいっこうに見えない。日本に限ったことではないが、中央銀行だけに大きな負担を押し付けている格好であり、バランスの悪さは否めない。

<ギリシャ不安は消えず>

ギリシャへの不安も払しょくされたわけではない。日銀追加緩和を受けて対ドルで円安は進んだが、対ユーロでの円安は限定的だ。欧州債務問題への不安が依然強いため、円売りとユーロ売りが打ち消し合っている。

ギリシャの連立与党党首が緊縮策の実行に関する確約書をまだ提出していないとして、ユーロ圏財務相は15日に予定していたギリシャへの第2次支援策を協議する会合を中止し、電話協議に切り替えることを決めた。市場では「延期の可能性はあるとみられていた。最終的には合意されるとのシナリオに変化はない」(野村証券シニアストラテジストの村山誠氏)との見方が多いが、14日の欧米株は上値が重たくなった。

ギリシャの昨年第4・四半期の国内総生産(GDP)は、前年比7.0%減となり、景気後退が一段と深刻化したことが示唆された。第2次支援を得たとしても経済再生への道のりは平たんではない。

独ハンデルスブラット紙によると、欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーであるバイトマン独連銀総裁は、ギリシャが1300億ユーロ(1700億ドル)に上る第2次支援策を受ける条件として約束した改革を実行できるかは疑わしい、との見方を示している。

中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁が北京の大学でのスピーチで、中国はユーロ圏政府債への投資を継続するとの考えを示したことを受け、ユーロが1.31ドル半ばに反発したことは、市場の不安の裏返しでもある。「中国がどの程度コミットするかはまだ不透明なのに、この反応だ。依然としてユーロ圏の資金調達面に不安が強いことの証左」(大手証券アナリスト)とされ、買い一巡後は高値圏でのもみあいになっている。

(ロイターニュース 伊賀大記;編集 布施太郎)

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