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方向感欠く人民元、市場の先安感強く豪ドル復調の障壁に

[東京 29日 ロイター] 中国人民元の方向感が出ない。3月半ばを境に中国人民銀行は人民元の上昇誘導を再開。足元の対ドル基準値は2005年以降の最高値圏にある。

3月29日、中国人民元の方向感が出ない。3月半ばを境に中国人民銀行は人民元の上昇誘導を再開。足元の対ドル基準値は2005年以降の最高値圏にある。昨年3月撮影(2012年 ロイター/Jason Lee)

しかし、市場では人民元の先安観が根強く、人民銀行が高めに基準値を設定しても上海市場の取引で押し戻されるケースが目立つ。当局と市場で方向感の対立が続く中で、人民元相場は明確なトレンドが出ない状況となっており、連動性が高い豪ドルなどにとっても復調の足かせとなっている。

<人民元の基準値、連日の最高値>

中国人民銀行は朝方、営業日ごとにその日の人民元の基準値を発表するが、足元で2005年以降の最高値の更新が続き、市場で話題になっている。23日から27日までは、3営業日連続で2005年以降の最高値を記録した。

人民元高方向での設定が続いている背景として、第一生命経済研究所の西浜徹主任エコノミストは当局のインフレ警戒姿勢の強さを指摘する。足元で消費者物価指数は対前年で伸び率の縮小が続いているものの、原油価格は高水準。預金準備率を引き下げるなど中国政府が金融引き締め方針を転換させているほか、世界的な金融緩和による過剰流動性が昨年のように新興国の物価上昇を引き起こす可能性がある。インフレ高進は市民生活を脅かし社会不安につながるだけに、当局も神経質にならざるを得ない。

背景には政治的な配慮があるとの見方も市場では多い。3月前半には全国人民代表大会(全人代、5日から14日まで)、同後半には米中首脳会談(26日)とイベントが続いた。人民元は米中の首脳クラスの会談やG20など重要な国際会議を前に上方にシフトされる傾向が強く、市場では基準値の引き上げについて「人民元安に対する国際的な非難をかわすための措置」(外銀)と受け止められている。

<市場は、輸出支援の人民元安続くと裏読み>

しかし、当局の思惑とは反対に、マーケットでは人民元に先安観が強い。足元、中国人民銀行は1ドル=6.28―6.29元台で基準値を設定しているが、27日の上海外為市場の終値は6.3072元。当局が基準値を人民元高の方向で設定しても、上海市場では人民元安に振れている。

対外的な配慮やインフレ懸念を除けば、当局の「重心」は依然として人民元安に傾いていると裏読みする市場関係者が多いためだ。先進国と比べ高い成長が続いているとはいえ、中国でも景気減速を示す経済指標も増えてきている。HSBCが22日発表した3月の中国購買担当者景気指数(PMI、季節調整済み)速報値は5カ月連続で分岐点の50を下回った。2月の貿易統計では過去10年ほどで最大の赤字を記録。輸出産業の負担を軽減するために人民元安は欠かせない。

実際、3月16日を境に基本的に元高方向での設定に変わったが、3月前半はこれとは逆に元安方向での設定が主流だった。3月月間をならしてみれば、2月29日の基準値(1ドル=6.2919元)からみてごくわずかに人民元高に振れたに過ぎない(3月28日の基準値は6.2912元)。3月前半、基準値が連日のように人民元安方向で設定された際には、市場の一部で当局が輸出企業の側面支援に向かっていると受け止められた。

資金フローの「逆転」も大きい。昨年夏までは中国への資金流入が続いていたため、中国人民銀行が外貨を購入し、見合いの人民元を市場に放出していた。しかし、その流れが「昨年10月から12月にかけて逆転した」(大和総研の齋藤尚登シニアエコノミスト)という。欧州債務危機にともなう資金の本国回帰の流れとみられている。

資金流出は人民元安の圧力になる。さらに海外から進出している企業や投資家が人民元の先安観を警戒し、中国で挙げた収益の目減りを恐れて早期に元を売る動きを強めれば、資金の流出に伴う元安に拍車が掛かる事態に発展しかねない。齋藤氏は、当局は市場に元安がこのまま続くとの期待が根付くのを恐れ、緩やかながらも元高を演出せざるを得ないと読む。

こうした方向感に欠ける人民元の影響を大きく受けているのが豪ドルだ。資源国であるオーストラリアの通貨は中国経済や人民元の動きに左右されやすい。対米ドルでは、3月初旬の1.08ドル付近から一時1.04ドル割れの水準まで下落。その後は一進一退で上値が重く、リスクオン相場に乗れないまま「復調」は遅れ気味だ。豪ドルは世界の株価との連動性も高いが、人民元の重さが足かせとなっている。豪ドルの先行きを占ううえで、4月1日発表予定の3月製造業購買担当者景気指数(PMI)など中国の経済指標に今まで以上に注目が集まっている。

(ロイターニュース 和田崇彦 編集:伊賀大記)

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