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焦点:ムーディーズが5月に主要米銀格下げか、短期市場などに影響

[ニューヨーク 30日 ロイター] ムーディーズが世界的な大手金融機関の格付けを引き下げ方向で見直しており5月半ばにも発表されるが、大手米銀は過去に例をみない水準に引き下げられるおそれがある。

3月30日、ムーディーズが世界的な大手金融機関の格付けを引き下げ方向で見直しており5月半ばにも発表されるが、大手米銀は過去に例をみない水準に引き下げられるおそれがある。写真は2011年5月にハンガリーで撮影(2012年 ロイター/Bernadett Szabo)

モルガン・スタンレーMS.Nは3段階格下げでトリプルB格となる可能性があり、現在の格付けがそれよりも低いバンク・オブ・アメリカBAC.NとシティグループC.Nも同水準に格下げされる可能性がある。現在最上級の短期格付けが引き下げられれば、短期市場での資金調達コストが上がる。

ただ各社とも2008年のサブプライム危機で短期市場が逼迫して以降、短期金融市場での調達を大幅に減らしているため、直ちに資金繰りが悪化するわけではない。また預金や資本も増強している。

一方、格下げは高格付け銀行の保証により起債している地方自治体に影響する可能性がある。またトリプルB格に引き下げられると、JPモルガン・チェースJPM.Nやゴールドマン・サックスGS.Nなど、シングルA水準を維持するとみられている金融機関との競争力に影響がでてくる。

ソシエテ・ジェネラルのクレジットアナリスト、ジョン・グァネラ氏は「低格付けと高格付け機関の間の区分けが進む。ムーディーズは構造的な問題に目を向けているため、各機関が影響を相殺するのは非常に難しい」と述べた。

銀行カウンターパーティーのクレジットリスクに投資家は敏感になっており、トリプルB格になると投資や取引に慎重になり、より高い金融機関に移すことにつながりかねない。格下げによりデリバティブ市場での追加担保が求められるほか、資本市場でのコスト高につながる可能性もある。

ムーディーズはリスクだけではなく、ビジネスモデルの脆弱性も考慮に入れ格下げを決定する。同社ニューヨークの金融グループ担当シニアバイスプレジデント、ピーター・ナービー氏は「競争、過剰、経常収入の減少などの業界の特徴をみると、投機的な側面がトリプルB格とは一致しないとみなすのは難しい」と述べた。

<短期・デリバティブ市場への影響>

すでに影響もでている。JPモルガンの分析によると、ムーディーズが格付け見直しを公表した2月のプライムマネーファンドへの投資は、格下げ対象金融機関のコマーシャルペーパー(CP)や預金証書から、短期格付けが据え置かれた機関への移動がみられた。レポ市場では米銀への貸し出しが縮小している一方、格付け見直し対象となっていない英銀へは増加している。格下げとなればレポ市場で追加担保が必要となる。

JPモルガンの短期市場アナリスト、アレックス・ローバー氏は「全般に資金調達に問題はないが、調達方法の一部を失うか制限される可能性がある」と指摘。格付けが最も悪い機関は、予期せぬ外的ショックに遭遇した場合の脆弱性が増すことになると指摘した。

金融危機以降、デリバティブ商品などへの投資決定の際に、ムーディーズやスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)などの格付けの利用度は減っている。しかしマネーマーケットでは対象機関の格付けにより投資を制限しているほか、一部デリバティブ市場でも格下げされれば追加担保が必要となる。

モルガン・スタンレーは3段階引き下げられればデリバティブ関連で65億2000万ドルの追加担保が必要としている。同社の広報担当者は、格下げにより影響を受ける取引は全体の8.0%とした上で、格下げに備えて顧客やカウンターパーティーと連絡をとっていると述べた。

バンカメは1段階の格下げで54億ドルの追加担保が必要だが、これには2社以上からの格下げが必要としている。同社は昨年の格下げ以降、顧客と協議しデリバティブ取引の一部を持株会社から子会社に移管する措置をとっている。

シティは昨年、2段階の格下げで54億ドルの追加担保が必要になると表明していた。広報担当者は「われわれの顧客は、1会社の格付けだけに依存しない、より洗練された分析を行う傾向にある。一部の顧客はムーディーズの格付け変更に留意するだろうが、実体的に影響するとはみていない」と述べた。

<地方債市場に影響も>

地方自治体や病院など公的機関の債券市場では、バンカメが流動性や債務保証の信用状を提供している大手機関のため、短期格付けが引き下げられれば影響が大きいとみられている。バンカメが格下げされた場合、保証を受けている自治体や機関は代替保証を提供する銀行を探す必要がある。

マネーマーケットファンド(MMF)は、最高格付け以外の機関の短期債を保有できない。JPモルガンによると、MMFが保有する格下げの可能性がある機関の債務は760億ドル。しかし市場の総残高の1%以下にすぎない。

フェデレーテッド・インベスターズのマネーマーケット担当最高投資責任者(CIO)、デボラ・カニンガム氏は、格下げされた機関への投資を手控える必要があるが、保有期間は短期であり、ムーディーズが格付けしている機関以外へは独自の信用分析を行っているため影響はないと述べた。

格下げは広範に及べば金融機関の業務縮小に拍車がかかり、投資が縮小するとの見方もある。PIMCOのポートフォリオマネジャー、トニー・ クレセンツィ氏は、ディーラーのポジション縮小という「2007年以降の傾向に拍車がかかるだろう」と述べた。

(Karen Brettell、Lauren Tara LaCapra 記者;翻訳 村山圭一郎;編集 内田慎一)

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