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流動性相場に調整ムード、堅調な中国株の再開に安心感も

[東京 5日 ロイター] 世界的な流動性相場が調整局面を迎えている。米国の追加緩和期待の後退やスペイン国債入札の不調などがきっかけとなり楽観論が後退。株式など過熱感のあったリスク資産に対し利益確定売りが強まったほか、日米独国債の「安全資産」に逃避マネーが流入した。

4月5日、世界的な流動性相場が調整局面を迎えている。都内で昨年11月撮影(2012年 ロイター/Toru Hanai)

ただ、休場明けの動きが警戒されていた中国株が堅調に再開したことで市場に安心感が戻り、アジア市場でのリスクオフの動きはいったん減速している。

<楽観ムードが反転>

アップルAAPL.Oの目標株価1000ドル──歴史的にみて、株価の上昇は、極端な強気予想が示されたときに調整に向かうことが多い。先導役でもある同社株への期待感は維持されているが、630ドル前後の株価とかい離した目標株価がアナリストから出されたタイミングで、世界の株式市場は調整局面に入った。金などのコモディティからも資金が流出する一方、日米独のコア国債に逃避マネーが流入するなど、年初からの楽観ムードは反転している。

リスクオフの大きな背景は米追加緩和観測の後退だ。3月13日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では追加緩和を支持する参加者が減少したことが明らかになり、米量的緩和第3弾(QE3)期待が大きく低下した。4日にはハト派と目されている米サンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁が、雇用市場が改善していることやインフレが予想をやや上回っていることを踏まえると、米連邦準備理事会(FRB)がQE3に乗り出す必要に迫られる可能性は低下していると発言。市場には「欧州債務問題などが再燃すれば別だが、少なくとも米大統領選挙が終わるまでは追加緩和はないだろう」(国内投信)との見方が広がった。

スペインの国債入札の不調も、市場の慎重ムードに輪をかけた。4日に実施されたスペインの中期国債入札は調達額が合計約26億ユーロと目標レンジ(25億─35億ユーロ)の下限近く。2015年償還債の平均利回りは2.890%と、前回3月15日の2.440%から上昇した。スペインのCDSは460ベーシスポイント(BP)付近まで上昇し、昨年11月に付けた過去最高の492BPに接近している。同国の2012年予算案では債務の対国内総生産(GDP)比率は79.8%と前年の68.5%から大幅上昇し、少なくとも1990年以降で最悪の水準に達すると見込みだ。失業率は欧州連合(EU)加盟国で最悪の22.9%であり、「緊縮財政策を実施すればディープリセッションにおちいる可能性がある」(国内証券)と警戒されている。

欧州中央銀行(ECB)は4日、主要政策金利であるリファイナンス金利を1.00%に据え置き、ドラギ総裁は経済への下振れリスクに言及したうえで、出口戦略の議論は時期尚早との見方を示したが、マーケットの調整ムードを変えるには至らなかった。

<日本株には空売り観測も>

日経平均.N225は続落。海外株安に加え、リスクオフの円高が加わり、一時、9700円を割り込んだ。先物にはCTA(商品投資顧問業者)から押し目買いの動きもあるが個別株ではショートセル(空売り)が出ているという。「新年度第1週は国内機関投資家もいろいろな事務作業があって動きにくい。押し目を買いにくい状況だ」(国内証券トレーダー)との指摘もあった。

ベイビューアセットマネジメント運用第一部長の佐久間康郎氏は、「調整は4月いっぱいまで続くかも知れないが、その後は日米の企業業績などを受けて持ち直す可能性がある。また長期的には消費税増税関連法案の行方がポイントで、成立すれば政局の進展が好感されるだろう」と長期強気の見方は崩していない。ただ、年初からの上昇を受けてそろそろ利益確定売りを出したくなる水準だったとしたうえで、日経平均の下値めどを9500円程度としている。

米追加緩和期待が後退したにもかかわらず、ドル安・円高方向に振れたことも日本株売りの要因となった。前日から続いているリスクオフの流れの中で、緩やかな円買い地合いとなり82円前半で推移している。市場参加者によると、仲値はドル不足だったが、「リスクオフでクロス円の売りが想起される中で、仲値をめがけて売りたい人の方が多かった」(大手邦銀)という。

IGマーケッツ証券・為替担当アナリストの石川順一氏は、クロス円の円買い圧力がドル買い圧力をそぎ、その結果、ドル/円も上値を抑えられているとしたうえで「リスク回避の流れの中で、あすは海外勢が一斉にイースター休暇に入る。連休を控え積極的にリスクを取り行くタイミングではない状況に、米雇用統計の結果を見極めたいとの心理が合わさり、さらに円の買い戻しが加速してもおかしくない」との見方を示した。

<休場明けの中国株は堅調>

ただ、リスクオフムードのなかで、清明節の休場明けとなった中国株がプラス圏に浮上したことは、市場に安心感をもたらした。前日、発表されたオーストラリアの2月貿易収支が予想外の2カ月連続赤字となったことで、輸出の減少は中国経済が予想以上に減速しているためではないかとの懸念が強まっていた。

上海総合指数.SSECはは1.7%高で終了、2カ月ぶりの大幅上昇となった。中国証券監督管理委員会(CSRC)が3日、QFII(適格外国機関投資家)制度の投資枠を500億ドル拡大し、800億ドルとすると発表したことが買い材料になっているという。中国株が堅調に再開したことで、香港株が下落幅を縮小、韓国株はプラス圏に上昇するなど、リスクオフの連鎖はアジア市場でいったんスピードダウンしている。

<日銀会合への注目度高まる>

流動性相場の調整は加速するのか反転するのか──市場の関心は9─10日の日銀金融政策決定会合に向いている。流動性期待を後退させた背景には、日銀の追加緩和期待の後退もあった。3月のマネタリーベースが3年7カ月ぶりの減少に転じたことで、日銀のデフレ脱却に対する「本気度」に疑問が出たためだ。マネタリーベースの減少に関しては昨年3月の東日本大震災時の反動という特殊要因があるため、誤解ともいえるが、「もしこのまま円高・株安が続く中で追加緩和を見送れば、せっかく好転した日銀への見方が元に戻ってしまう」(国内証券)と警戒されている。

4月は27日にも日銀会合が予定されており、今回、追加緩和を見送っても期待感が完全に消えるわけではない。同会合では展望リポートが公表されるため、経済見通しと追加緩和が同時に実施されるとの見方は多い。ただ世界的なリスクオフムードが続く中で、追加緩和を見送れば海外勢の日本株売り材料にされる可能性はある。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は「ボラティリティを重視するヘッジファンドなど海外勢は、現在のリスクオフムードの中では円高・日本株安の進行に賭ける可能性が大きい。10日の日銀会合で追加緩和が見送られても、期待がはく落するわけではないが、いったん日本株売りの材料にされるかもしれない」と述べている。

(ロイターニュース 伊賀大記;編集 宮崎大)

*本文冒頭部分を一部修正しました。

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