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IMF資金増強に日本が積極関与、背景に円高回避も

[ワシントン/東京 21日 ロイター] ワシントンで開催された今回の20カ国財務相・中央銀行総裁会議(G20)では、欧州債務問題の安全網拡充を念頭に置いた国際通貨基金(IMF)の資金増強が目標額に達した。そこでは、日本が率先して資金拠出を表明したことが大きく貢献したと言えそうだ。

4月21日、G20では、欧州債務問題の安全網拡充を念頭に置いたIMFの資金増強が目標額に達したが、そこでは、日本が率先して資金拠出を表明したことが大きく貢献したと言えそうだ。写真は2010年8月撮影(2012年 ロイター)

背景には、欧州債務危機の再燃に伴う世界経済悪化や円高進行の回避のほか、危機的な日本の財政状況に関する将来不安、さらには国際社会での中国の存在感台頭への危機感など、様々な要因が垣間みえる。

<IMF増資成功に高い評価、財務省も貢献強調>

今回のIMF資金増強で、まだ拠出額を明示していない国も含めて目標額の4000億ドルを上回る見通しとなったのは、欧州債務問題に伴う世界経済悪化を早期に収束させたい各国の強い意志があった。さらに、欧州自身が先に欧州安定メカニズム(ESM)や欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の安全網を拡充したことに対応して、国際社会がIMF資金増強に動く下地があったともいえる。

最終的に、まだ拠出額を明確にしていない国も含めて4300億ドル以上の資金がIMFに集まる見通しだ。ラガルドIMF専務理事は「国際社会が危機への対応手段確保に真剣であることを示すもの」だとして、高く評価。「IMFの融資能力は現在1兆ドルを超える」と述べた。

こうした結果を金融市場も好感しており、海外投資家からは「IMFの資本基盤を4300億ドル増強することは、規模として十分だ。市場はいかなる額でも十分ではないと見なすことは明らかだが、さらに数10億ドル上乗せした額が得られると考えている。また、テールリスクが後退しているとのコメントは、安心感を与えるものだった」(クレディ・アグリコル・コーポレート・アンド・インベストメント・バンクのデビッド・キーブル氏)との見方が出ている。

日本の財務省も、今回は日本が国際社会に大きく貢献できたことを強調。同行筋は、安住財務相自身がラガルド専務理事や各国と交渉したことを明らかにし「今回、率直に日本に対する評価があった。日本が600億ドル(の拠出)ということを先んじて言わなかったら今日の合意はなかった」としている。

また、別の当局筋も、日本のリーダーシップが呼び水になってIMFの資金基盤強化になれば、為替など市場の安定化にも大きく貢献することになると評価している。

<日本は金融市場の不安回避に全力>

ただ、欧州債務問題はこれで終息するわけではなさそうだ。3月に域内救済基金の規模を拡大、いったんは落ち着きを見せていたが、足元ではスペイン民間債務問題に焦点が当たり、再燃の様相を示している。日本にとっては、震災からの復興がようやく見え始めた段階にあり、世界経済の悪化や、円高が進行するなど金融市場の不安定化は何としても回避したい局面だ。

野村総研・金融ITイノベーション研究部長・井上哲也氏は「日本政府としては為替面でのリスク回避のために、欧州問題の火消しに真剣とならざるを得ない。何としても欧州債務問題の不安を抑える必要がある」と指摘。

G20会合後、安住財務相もこの点に言及。「為替も国内の株式市場も非常に米欧経済に影響を受ける反射的な市場というのが日本。欧州に安定してもらうことが日本の経済に直ちにはねかえる」として、厳しい財政状況下での600億ドルもの資金拠出に理解を求めた。

また、日本にとっては、欧州債務問題は対岸の火事とは言えない財政状況にある。「金利動向次第では、日本が支援を受ける状況は否定できないが、その場合とてもIMF資金では対応できる規模でない。それでも貢献できる時には貢献しておくのは必要」(野村総研・井上氏)との事情もありそうだ。実際、安住財務相は会見で「IMFに対しては金だけでなく人的貢献もしていくので、それに見合ったポストを与えてほしいと申し上げた」ことを明らかにしている。

さらには、アジアの中での中国の存在感が大きくなっていることへの危機感もありそうだ。政府関係者は、今回日本が率先して行動したことに関し、アジアの中でのプレゼンス・成長力では中国が台頭し日本の影は薄くなっているため、国際社会に貢献して日本のプレゼンスを高めることを考えたことも事実だと明かす。

<時間買う間に根本解決を>

G20での最大の課題であったIMF資金増強は予想以上の成果が得られたとも見えるが、実は欧州債務問題自体は依然解決には至っておらず、「油断すると危機が再燃しかねない」(安住財務相)といった状況だ。

しかも、欧州債務問題の広がり次第で安全網として十分な資金の額は常に流動的だ。欧州最大の国債発行規模のイタリアの動揺が大きくなれば、IMFの融資能力が1兆ドルであっても足りる金額ではないともみられている。

この点に関し、厳しい指摘を行ったのは白川方明日銀総裁だ。会合後の会見で「欧州のファイアウォール強化や(IMFの)資金強化拡充は世界の金融市場安定に有効であるが、こうした策はあくまで時間を買うにすぎず、問題の根本的な解決はできない」と述べ「こうした策で買った時間を有効に使い、財政削減や構造改革を進めることが極めて大事」だと訴えた。

実際、それは難しい課題でもある。レーン欧州委員会委員(経済・通貨問題担当)は「市場は(財政再建と成長の)両立を狙っているようだが、現実にはそれは可能ではない」とみている。それでも「首尾一貫した財政再建への取り組みが、持続可能な経済成長への回帰と雇用創出の必須条件だ。同時に、高水準の公的債務によって圧迫されている成長の押し上げに向け、可能な措置をすべて講じていく必要がある」と述べている。

こうした厳しい認識は、そのまま日本の財政・経済状況にも当てはまりそうだ。欧州債務問題を他山の石とみなして取り組む必要があることは言うまでもない。

(ロイターニュース 中川泉、木原麗花;編集 宮崎亜巳)

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