for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

焦点:ユーロ圏新財政協定に暗雲、各国で現状批判の非主流政党躍進

[パリ 23日 ロイター] ユーロ圏では、ユーロ懐疑派や反移民政策を掲げる大衆迎合政治家への支持が高まっており、緊縮財政と財政規律を支持する主流派と逆転する恐れが出てきた。

4月23日、ユーロ圏では、ユーロ懐疑派や反移民政策を掲げる大衆迎合政治家への支持が高まっており、緊縮財政と財政規律を支持する主流派と逆転する恐れが出てきた。2月撮影(2012年 ロイター/Alex Domanski)

ドイツの音頭取りで合意したユーロ圏の新財政協定が各国で批准、施行される確実性は低下したようだ。二人三脚で協定の交渉を進めた「メルコジ」体制も、間もなく幕を閉じる可能性がある。

22日のフランス大統領選第1回投票は衝撃的な結果だった。反ユーロを訴える極右政党、国民戦線(FN)のルペン党首が18%近くの票を獲得し、既成政治に反対する候補の獲得票は合計で3分の1を上回った。この結果は欧州全体の流れを映し出している。

オランダからオーストリア、フィンランド、ギリシャに至るまで、失業と緊縮財政、重債務国の救済負担に憤った有権者が既成政治に抗議する政党への支持に転じ、伝統的な政治勢力による統治を難しくしている。

経済的不満の矛先は主にイスラム教徒である移民に向かう。人口が高齢化し、移民の労働力に頼る欧州社会に緊張が生じ、欧州連合(EU)内の自由な人の移動を認めるシェンゲン条約にも暗雲が漂っている。

フランスのサルコジ大統領は、ユーロ圏債務危機が始まって以降、権力の座を去る11人目のユーロ圏指導者になる可能性が高い。

5月6日の決選投票を控え、サルコジ大統領は社会主義者であるオランド氏の後塵を拝しており、欧州や移民に対する強硬姿勢を強調してルペン候補の支持層を取り込まざるを得ない状況だ。

オランダでは21日、移民排斥と反ユーロを唱える極右の自由党が支持を拒否したため財政赤字削減法案が議会を通過せず、中道右派内閣が総辞職した。

新財政協定を強力に支持してきた政権が崩壊したことで、オランダによる協定批准は、たとえ実現するとしても何カ月間も先になるだろう。

ノムラ・インターナショナルのチーフ政治アナリスト、アラステア・ニュートン氏は「新財政協定の発効に必要なのはユーロ圏17カ国中12カ国の批准なので、オランダ1国の批准拒否が協定の命運を決することは理論上はない。最善の場合、協定の信頼性が大いに損なわれるにとどまるが、最悪の場合には他の国々が追随するだろう」と述べた。

<紙切れ一枚の価値もない>

フランスが新財政協定を批准しなければ、協定はその文面が記された紙切れ一枚の価値さえ失うだろう。

オランド氏は大統領に選出された場合、批准の条件として協定を再交渉すると約束。「自滅的な」緊縮策とバランスを取るため、EU予算によるインフラ計画など景気刺激策も盛り込むよう求めている。

オランド氏は債務と財政赤字を削減する必要性は認めており、流れを根底から覆す姿勢ではない。経済成長を促進しなければ財政収支は均衡できないとの立場だ。

欧州政治センター(ブリュッセル)のシニア政治アナリスト、ジャニス・エマヌイリディス氏は、フランスとオランダで大衆迎合政治家が反撃に出たことで、各国政府はユーロ圏の政策に合意しにくくなり、加盟国の救済が再度必要になっても合意を取り付けるのが難しいと指摘。「最大の問題は、ドイツにおいて(合意に向けた)ハードルが超えられなかった場合に何が起こるかだ。その域に達すれば壁に突き当たる」と述べた。

ドイツ国民は重債務国の救済に反感を抱いているが、今のところ反体制派の泡沫政党はほとんど支持を得ていない。ナチズムや共産主義を経験し、政治的なタブーとなっているのが主な理由だ。

ドイツ議会は党派を超えて欧州統合を支持しており、支持派が大多数の議席を占めている。しかしメルケル首相はユーロ圏重債務国に厳しく緊縮財政を迫るよう、連立政党から強い圧力を掛けられており、2013年10月の総選挙に向けてそうした圧力は高まりそうだ。

もっともドイツでさえ自国の緊縮財政への抵抗感は強まっており、来月のノルトライン・ウェストファーレン州議会選挙結果に反映されそうだ。

政治リスクのアナリストは、ユーロ圏を長期的に脅かすのは大衆迎合的な政党への支持票だと見る。

シティ(ロンドン)のチーフ政治アナリスト、ティナ・フォーダム氏はフランス大統領選第1回投票結果について「主流政党が支持を減らした結果、非主流政党が既成政治への反対、反EUの看板を掲げて支持を伸ばし、左右両方から不満票を集める道が開かれた」と指摘。先にオランダやフィンランドでも同様の状況が見られたと述べた。

オーストリアとギリシャもこれに加えられるだろう。オーストリアでは極右の自由党が支持率で2位に付けている。また、ギリシャの世論調査結果を見ると、同国では一連の極右政党と極左政党が、EUと国際通貨基金(IMF)による救済計画で課された緊縮策への敵対方針で手を結んでおり、5月6日の総選挙では得票率が合わせて50%に達する勢いだ。

フランスのルペン党首の一言がムードを良く伝えている。国民が愛想を尽かしているのは「30年間も失敗を重ねた政策をそのまま踏襲しただけの、左派政権も右派政権も似たり寄ったりの政策だ」。

フランスの大統領選挙制度は、国民がまず「感情」で投票した後、「頭」で考えて投票する2回制を採っているため、第1回投票で泡沫政党が躍進しやすいという面はある。

結局は欧州推進派の穏健右派か、欧州推進派の穏健左派のいずれかがフランス大統領の座に就くだろう。しかし新大統領が欧州統合の追加的な措置に合意できる余地は、第1回投票の結果を受けて縮小した可能性がある。

(Paul Taylor記者)

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up