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焦点:米JPモルガンの多額損失、自ら生んだ金融商品市場に問題

[14日 ロイター] 米金融大手JPモルガン・チェースJPM.Nがヘッジ戦略の失敗で少なくとも20億ドルの損失を発生させたのは、取引の杜撰さもさることながら、自ら生み出した複雑な金融商品の市場で自分自身があまりにも大きくなり過ぎたのも原因だ。

5月14日、米金融大手JPモルガン・チェースが少なくとも20億ドルの損失を発生させたのは、自ら生み出した複雑な金融商品の市場で自分自身があまりにも大きくなり過ぎたのも原因だ。写真は11日、ニューヨークの証券取引所で撮影(2012年 ロイター/Brendan McDermid)

JPモルガンのヘッジ戦略には、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の中のシンセティック・クレジット証券と呼ばれる商品が絡んでいる。同社が作り出したCDSは本来、自前で保有する社債などのリスクをヘッジする目的で利用されていた。

しかしデリバティブ専門家などによると、JPモルガンが抱えるポジションは、次の2つの問題によって維持不可能でコストもかかるようになってしまったという。

1つ目は、CDSの裏づけとなる現物債市場の発展に伴ってJPモルガンがヘッジの再構築を迫られた結果、スワップの上にスワップを重ねる取引を行ってポジションの構造が複雑になり、1つのスワップの利益で別のスワップの損失を穴埋めできないリスクが高まっていることだ。

もう1つは、JPモルガンの構築したポジションの大きさ自体が、商いの薄い市場でたやすく取り扱える範囲を超えてしまった点にある。

さらには、JPモルガンのCDS市場における地位があまりに圧倒的だったので、同社が孤立してリスクにさらされる状況に置かれていることがヘッジファンドや他のトレーディング機関にとって明白となり、彼らに反対のポジションを組んで稼げる機会を提供して事態を悪化させた。

取引の複雑性ゆえに、JPモルガンにとってポジションが悪化したときにリスクをうまく制御していくのが難しくなってしまったのだ。

JPモルガンのダイモン最高経営責任者(CEO)は、取引のやり方や監視態勢のまずさを認めた上で、ポジションの解消には今年いっぱいかそれよりも長くかかる可能性があるとの見方を示した。

またCEOは、残っているポジションがどの程度の規模か詳しく示さなかったが、すべてを解消するまでにあと10億ドルないしそれ以上の損失が出る恐れがあるとしている。

<折り重なる取引>

JPモルガンは1990年代に、金融エンジニアのチームが債券の信用力の変動に対してヘッジや投機を行うことができる商品を設計し、CDSの市場を創設した。そして2001年には、新たにCDSの指数を導入してCDS取引が活発になる道筋を定める上で一定の役割を果たした。

ただ、他社のトレーダーによると、JPモルガンが損失を出した根本的原因は、マークイットCDX北米投資適格指数(CDX.NA.IG.9)として知られるCDS指数に絡む取引にあるとみられている。北米の投資適格債127銘柄を参照債務とする同指数には、ターゲットTGT.Nやホーム・デポHD.N、クラフト・フーズKFT.N、ウォルマートWMT.N 、ベライゾン・コミュニケーションズVZ.Nなどの社債が含まれている。

JPモルガンのポジションは、この指数を使って社債の信用力低下と上昇の双方に賭ける取引が幾重にも積み上げられ、ある取引が別の取引の損失を埋め合わせたり、相互に中立化するよう想定されていた。ところがトレーダーによると、取引の層が増えていくにつれて、意図したようには機能しなくなってしまうのだという。

<玉石混交>

一部のトレーダーは、JPモルガンのポジションは今年初めにケチがつき始めたとみている。企業の信用力が幅広く改善すると見込んだポジションが、クレジット市場の軟化で損を出した。さらに悪いことに、格付けを引き下げられた企業が同社が想定したよりも少なかったため、信用力悪化に対するヘッジ取引でも資金を失った。

デリバティブと仕組み金融商品の専門家であるジャネット・タバコリ氏は、JPモルガンが使っている信用評価モデルは愚かな取引と賢明な取引を峻別できないと指摘。「どうしようもない欠陥は、それが意図的かどうかはともかくとして、ヘッジされていない収入の流れがさもヘッジされているかのように各種想定が操作可能なことだ」と話した。

それでも、ヘッジファンドなどはJPモルガンが抱えるもろさを嗅ぎつけて、それを利用した取引に動いたとされる。ウォールストリート・ジャーナル紙とブルームバーグが4月初めに、JPモルガンの巨大なポジションについて報道したことも、同社が直面する問題や孤高ぶりに対する認識を一層深めた形になった。

JPモルガンにとって今回の損失は、同社がCDS市場を育成していたばかりか、取引自体が損失から身を守る目的だったという点で格好が悪い話と言える。

またライバルのバンク・オブ・アメリカBAC.N、シティグループC.Nや欧州の銀行勢はバランスシートを縮小させ、JPモルガンの経営規模が相対的により大きくなっている点も問題だ。JPモルガンが、損失を出したポジションを妥当だと考える価格で引き受けてくれる買い手を十分確保するのは、今は一段と困難になっている。

(David Henry、Carrick Mollenkamp 記者)

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