[ニューヨーク/ロンドン 16日 ロイター] 米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)GM.Nが、米フェイスブック向け広告の打ち切りを発表。この発表は、フェイスブックへの警鐘とも受け止められるが、大手広告代理店の幹部らは、同社サイトが広告プラットフォームとして有効かどうか判断するのは時期尚早との見方を示している。
「ポテンシャルは高いが、確実とは言えない」。英広告代理店WPPWPP.Lのマーティン・ソレル最高経営責任者(CEO)は、「フェイスブック上でのブランディング効果が示されるには時間を要する」と指摘する。
18日にナスダック市場に上場する予定のフェイスブック。新規株式公開(IPO)による調達額は約152億ドル(約1兆2000億円)となる見通しで、IT企業としては過去最大規模の上場となる。10億人に迫るユーザーを抱える同社の昨年の売上高は約40億ドルで、そのほとんどが広告収入だ。
全米3位の広告主であるGMが広告掲載打ち切りを決めたことは、フェイスブック上での広告効果が他の既存メディアより有効かどうかについて、疑問を投げ掛ける結果となった。また、フェイスブックは先月、少なくとも過去2年で初めて四半期ベースで減収を記録した。
コンサルタント会社CMGパートナーズのラス・ラング氏は、GMの方針について「GMにとってフェイスブック広告は、高校にポスターを張るようなものだ。ホールに集まって話をしている時に、誰がポスターを見ようとするだろうか」と語る。
ラング氏は、企業が8、9月にマーケティングの予算を設定する際、フェイスブックが有効な広告手段かどうかについて検討するよう求めているという。
一方、広告の専門家は、GMに追随する企業は多くないとの見方を示し、ナイキNKE.NやフォードF.N 、ウォルマートWMT.Nなどの大企業がフェイスブック広告を継続する方針を明らかにしている。
米百貨店メーシーズM.Nの広報は「メーシーズはフェイスブックに広告を出しており、フェイスブックのブランドページは、顧客との豊かなやり取りを可能にしている。ファンの参加も増え続けている」と説明した。
<効果の測定法>
ただ、専門家らからは、フェイスブックの導入が企業にとってどれだけ効果があるかを、同社は説明する必要があるとの声が聞こえる。
USAAのバーニー・ウィリアムズ氏は「GMのニュースを目にした際、少し心配になった」と感想を述べ、「ソーシャルな交流を台無しにすることなく、ディスプレーから商品をどのように売るかへの転換が求められている」と分析する。
また、企業が熟知するテレビ広告と違い、企業はフェイスブックが提供するツールを理解していく必要があると広告代理店の幹部はみている。広告代理店ハバスのデービッド・ジョーンズCEOは「われわれはまだ、ブランドにとってのポテンシャルや広告投資の見返りについて理解し始めたにすぎない」との見方を示す。
さらにジョーンズ氏は「テレビ広告は50年の歴史があり、誰もが理解している。それに比べ、フェイスブックの広告プラットフォームの多くが1年前にできたばかりだ。時間はかかる」とみる。
フェイスブック広告をめぐる主要な課題の一つが、その効果と投資利益率(ROI)の測り方だと言える。法律事務所Michelman&Robinsonのロナルド・カムハイ氏は、「従来のROIの観点から見れば、フェイスブックはグーグルGOOG.Oなどに比べるとクリック数は少ない」と指摘。
その上でカムハイ氏は、「フェイスブックの利点は(ユーザーの)滞在時間が長いこと」としながらも、フェイスブックには効果を測定する方法を明確にするための努力が必要だと述べた。
広告戦略について、同社はその明確化の必要性を自覚しているようで、顧客の要望に応える動きを見せている。昨年にはマイクロソフトMSFT.Oやウォルト・ディズニーDIS.Nなどでの勤務経験がある広告業界のベテラン、キャロリン・エバーソン氏を採用したほか、3月にニューヨークで開かれたイベントでは、新しい広告商品を説明するなどしてきた。
WPPのソレル氏は広告を打ち切ったGMの方針について、「心配する声も出るだろう。しかし、IPOに影響したとは思えない。地球上の9億人がフェイスブックを使っている。それだけでもすばらしい業績だ」と話した。
(原文執筆:Nicola Leske、Kate Holton記者、翻訳:野村宏之、編集:本田ももこ)
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