[ニューヨーク 10日 ロイター] ノーベル経済学賞受賞者で米国の著名経済学者、ジョセフ・スティグリッツ氏は8日、インタビューに答え、欧州連合(EU)によるスペインの銀行救済のための資金支援計画について「スペイン政府がスペインの銀行を救済し、スペインの銀行がスペイン政府を救済する」相互扶助だとし、機能しない可能性があると批判した。
ユーロ圏財務相会合は9日、銀行問題に絡むスペイン支援で合意。インタビューはこれに先立って実施された。
スペイン銀行(中央銀行)の報告によると、2011年のスペイン新発国債の主な買い手は中銀を含むスペインの銀行だった。スティグリッツ氏は「これはブードゥー経済学(呪術的経済学)だ。現在もこれからも機能しない」と述べた。
スティグリッツ氏は、欧州はスペイン支援よりも共通の金融システム創設に向けた議論を加速させるべきだと指摘。景気が下降している際、欧州共通の金融システム無しで成長回復に向けた政策を持続的に実行することは不可能だと述べた。
スティグリッツ氏は長年、財政緊縮策への批判を展開している。EUがこれまで実施してきた緊縮策は成長を抑制し債務を増やすとし、「火に油を注ぎながら防火壁を設けても意味がない。根源的な問題、つまり成長を促進しなければならないという問題を直視する必要がある」と訴えた。
さらに、ユーロ圏は財政統合に向けた抜本改革を進め、何らかの形でユーロ圏共同債が発行されれば最も富裕なドイツが最大の保証コストを支払い、公共投資についても最大の財源を提供すべきだと主張。「ドイツは財政規律こそが強化策だと言い続けているが、それは完全に間違った判断だ」と述べた。
ユーロ圏共同債構想については「機能し得る制度の1つだ。ほかにも策はあり、それは共通財務省だ」と述べ、最終的には「弱小国の景気が悪化した際に支援できるよう、欧州全体で歳入を増やす手段を整えなければならない」とした。
スティグリッツ氏は「ドイツは、ユーロ圏解体が引き起こす代償と、ユーロ圏を存続させるコストのどちらを支払うことを望むのか、という問いかけに向き合わなければならなくなる。私の考えでは、ユーロ圏崩壊の方が維持よりもコストが高くつく。彼らがそのことを理解するよう期待しているが、理解しないかもしれない」と述べた。
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