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ギリシャ難題山積みで市場は慎重、ユーロ離脱シナリオ維持も

[東京 18日 ロイター] ギリシャ再選挙で緊縮策支持派が勝利したが、難題は山積みで市場は依然として慎重ムードを崩していない。ユーロ高/円安を好感し日本株は大幅続伸となったものの、買い戻し一巡後は伸び悩み。円債先物はプラス圏に浮上した。新政権が欧州当局との「約束」通り財政緊縮や構造改革を進められるかは不透明で、ユーロ離脱の可能性は依然高いとの見方も多い。

6月18日、ギリシャ再選挙で緊縮策支持派が勝利したが、難題は山積みで市場は依然として慎重ムードを崩していない。写真は都内の外為トレーダー。2008年10月撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)

<ユーロ離脱の確率は依然50%以上との予測も>

シティグループ証券では、緊縮策支持派が勝利した再選挙後も、ギリシャが18カ月以内にユーロ圏を離脱する確率を50─75%に据え置いた。国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)、欧州委員会の3機関(トロイカ)は、新政権に対し、財政再建目標の部分的緩和と新たな支援策を提示する可能性が高いが、それと引き換えとなるだろう民営化を含む構造改革要求に応えることができず、ユーロ圏離脱を余儀なくされそうだという。トロイカはギリシャの財政再建・構造改革プログラムを四半期ごとに点検しているが、「約束」が順守されていないと判断、9月か12月にも金融支援を打ち切る可能性が大きいと予測している。

同証券チーフエコノミストの村嶋帰一氏は「ギリシャはユーロを離脱したうえで、EU内でサポートされるという構図になるのではないか。各国とも準備を進めているほか、アイルランドやポルトガルなどプラグラムを順守している国も多く、他国への波及という懸念は大きくない」と指摘。そのうえで、欧州問題はギリシャからスペインやイタリアに移っており、G20首脳会議やEU首脳会議での具体的な対応策が出るかが焦点だと話す。

前場の日経平均.N225上昇幅は一時200円に迫ったが、買い一巡後は伸び悩んだ。「海外勢がショートカバーを入れたが円安が止まると買いも一巡した。リスクオフから脱却できるかとみていたが、買い戻し以外に積極的な買いは乏しく、戻りは円安次第となりそうだ」(大手証券)という。キヤノン7751.T、ソニー6758.T、トヨタ自動車7203.T、ホンダ7267.Tなど主力輸出株も上げ幅を縮小する展開。東証1部売買代金は4206億円と薄商いも変わらずだ。

しんきんアセットマネジメント投信・運用部投信グループ長の藤原直樹氏は「ギリシャ再選挙は緊縮派勝利で最悪の事態は避けられ、株の買い戻しにつながった。とはいえ、スペイン問題もあるほか、ギリシャが緊縮策を推し進め支援を受けられるかどうかは、これからの話になる。本格的なリスクオンにはなり難い」とし、買い戻し一巡後は、為替や海外情勢をみながら高値もみあいになるのではないかとの見方を示している。

<ユーロは早くも伸び悩み>

ユーロは早くも伸び悩みの兆候をみせている。ユーロ/ドルは朝方、一時1.2748ドル付近まで上値を伸ばしたが、昼時点で1.26ドル後半まで押し戻された。「ファンド勢が様子を見て売ってきている」(運用会社)という。ユーロ/円も100円台後半まで上値を伸ばした後は高値圏でのもみあいとなっている。

ギリシャがユーロ圏に残留したとしても、欧州の懸念は晴れないことがユーロの重しだ。ユーロ諸国はギリシャに財政支援を継続しなければならず、各国の財政を圧迫し続ける。IMFやECBは「打ち出の小槌」ではない。資金支援には増資など裏付けが必要になる。一方、ギリシャの失業率は過去最悪の22.6%であり、財政緊縮を過度に進めれば、国民からの反発も大きくなるのは必至。成長路線と財政緊縮の共存戦略の具体策はいまだ不透明だ。

ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのシニア通貨ストラテジスト、村田雅志氏は「フランスの大統領がオランド氏に代わって成長戦略重視に舵を切り、ドイツも寄り添う姿勢を示してきたことで、債務問題は先送りになる可能性が高い。そうなると、ギリシャだけでなく、ポルトガル、スペイン、イタリアといったユーロ圏の高債務国の債務問題はずっと続くと想定できる」と懸念を示す。

<米指標悪化、政策期待を維持できるかが焦点>

とはいえ、再選挙を通過したことでギリシャ問題はいったん後退し、米経済に市場の視点が移りそうだとの見方もある。「目先は市場の視点が米経済に移りそうだ。米マクロ指標の悪い数値を受けて米経済減速が懸念される一方、米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加金融緩和への期待感も根強い。ツイスト・オペの延長など何かしらの緩和策が出れば一段のポジティブ材料となる」(マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏)という。

実際、米経済指標は芳しくない。前週末に発表されたマクロ指標は軒並み、米経済の減速を示していた。5月の鉱工業生産指数は前月比0.1%低下。ここ3カ月で2度目の低下だ。FRB(米連邦準備理事会)が経済の「緩み」を把握する上で目安としている設備稼働率は79.0%で、予想の79.2%を下回っている。

6月のニューヨーク州製造業業況指数は2.29と、5月の17.09から大きく低下し、2011年11月以来の低水準となった。ロイター/ミシガン大学が調査した6月の米消費者調査・速報値も、雇用悪化への懸念から昨年12月以来の低水準となっている。

15日の米ダウ.DJIは115ドル高と続伸。米経済指標の悪化を政策対応期待に転化したとすれば、地合いの改善を示すが、前週末のマーケットではギリシャ再選挙に備えて主要国中銀に協調行動の用意があることが明らかになったことが大きな支援材料だった。19─20日のFOMCでは、市場の政策期待をつなぎとめることができるかが大きな焦点となる。

円債市場は底堅い展開。ギリシャ選挙結果を受けて、朝方はリスクオフの巻き戻しから売りが先行したが「押し目局面を待ち構えていた国内勢からすかさず買いが入った」(外資系証券)という。スペインの金融問題などギリシャ以外の欧州リスクに加えて、米経済指標が予想を軒並み下振れたことで、グローバル経済の先行き懸念が強まっており、欧州債務問題と世界景気悪化の「負の連鎖」が意識されている。

(ロイターニュース 伊賀大記;編集 内田慎一)

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