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EU合意好感し株式やユーロが急騰、「期待値」低くサプライズに

[東京 29日 ロイター] 東京市場では昼から相場が一変した。欧州連合(EU)首脳会議が29日、銀行監督制度や国債支援で合意したことが明らかになると、それまで小動きだった株価やユーロが急騰。日経平均は1カ月半ぶりに9000円を回復した。

6月29日、欧州連合(EU)首脳会議が銀行監督制度や国債支援で合意したことが明らかになると、それまで小動きだった東京市場で株価やユーロが急騰。日経平均は1カ月半ぶりに9000円を回復した。写真は会議後に会見するデンマークのトーニングシュミット首相(左)、ファンロンパイEU大統領(中央)、欧州委員会のバローゾ委員長。今月28日撮影(2012年 ロイター/Francois Lenoir)

同会議への「期待値」が低下していただけに、ポジティブ・サプライズとなった。ただ欧州債務危機への対応策実施には曲折が予想されるほか、景気減速懸念も強く、本格的なリスクオンとなるかはまだ不透明とみられている。

<EU合意で相場付き変わる>

EUのファンロンパイ大統領が日本時間の昼前に、EU首脳会議はユーロ圏の銀行の監督制度を統一することで合意したと明らかにすると、マーケットは一気にリスクオン方向に傾いた。ユーロは対ドルで1.26ドル、対円で100円を回復、大証の日経平均先物も9000円を突破した。「思いのほか欧州債務問題が前向きな展開になってきたことで、市場に安心感が広がっている。後場に入り、相場付きが変わった」(国内証券)という。

同大統領によると、同意された銀行監督制度では欧州中央銀行(ECB)が関与し、欧州安定メカニズム(ESM)が銀行に直接資本を注入することが可能になるほか、EUの財政ルールを順守している国が、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)とESMを活用して金融市場で国債を支援することも認められるという。このため、市場からの期待が大きかった銀行資本対策や、スペインやイタリアの国債買い入れに道が開かれたと受け止められている。

ただユーロ圏共同債などに対するメルケル首相などドイツ側の否定的な発言で、EU首脳会議への「期待感」が低下していたことから、市場センチメントの反動が大きくなった面もある。公表された声明文によると、欧州中央銀行(ECB)の関与はあくまで「エージェント」としてであるほか、ESMが銀行に直接、資金を注入することができるのは、銀行監督メカニズム設置の後としている。

このほか詳細はまだ不明であり、マネックス証券チーフ・エコノミストの村上尚己氏は「これまで慎重だったドイツ側のコメントが待たれる。スペインやイタリアの国債金利が下がれば安心感も広がるが、欧州を中心に経済が減速しているため、年初のように円安・株高トレンドにつながるかはまだわからない」と述べている。

<景気は減速、慎重な見方も消えず>

実際、世界的な景気減速懸念は年初よりも濃くなっており、欧州ではけん引役だったドイツ経済でさえも減速の兆しをみせている。ドイツの主要シンクタンクIMKは28日、欧州の貿易相手国が財政緊縮策で景気後退に入るとして同国の2013年の国内総生産(GDP)成長率予想を0.3%に下方修正した。7月5日の欧州中央銀行(ECB)理事会での利下げが期待されているが、「1%からの0.25%ポイント引き下げでは景気に与える影響は限定的」(国内証券エコノミスト)という。景気減速懸念を追加金融緩和期待に変える強気な地合いに変わりつつあるが、市場の不安感が消えたわけではない。

欧州圏だけでなく、景気減速は米国や中国にも波及。ロイターのエコノミスト調査によると、6月の中国購買担当者指数(PMI)は7カ月ぶりの低水準に低下する見通し。米国もプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)PG.Nなどグローバル企業の業績減速が目立っている。

日本も復興需要などで内需は底堅いが、外需減速への懸念が強くなっている。5月鉱工業生産指数は、市場予想を下回る前月比3.1%低下となった。6、7月の予測指数は上昇が続く見通しだが、業種別でみると、6月は電子部品・デバイス工業の14.1%増、7月は情報通信機械工業の19.0%増と「外需の影響を受けやすいセクターの強気が目立つ」(外資系証券エコノミスト)という。

大きく跳ねた株式やユーロと異なり、国債先物は底堅い展開。午後2時時点で10年長期金利は午前の取引で付けた0.820%から小幅上昇の0.825%で取引されている。

EU首脳会議の合意について、JPモルガン証券・チーフ債券ストラテジストの山脇貴史氏は「ユーロ共同債や、ESMに対してECBが直接資金提供するようなスキームは出てきておらず、おおむねドイツが今まで主張していたような形で落ち着いているようだ。今後も不透明な状況が続く可能性が高く、円債金利もさほど上昇することはないだろう」と話している。

(ロイターニュース 伊賀大記;編集 吉瀬邦彦)

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