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焦点:活況維持する東南アジア経済、世界経済低迷の悪影響を克服

[バンコク/ジャカルタ 4日 ロイター] 世界経済が鈍化する中、東南アジア諸国の経済が粘り腰を見せている。タイとインドネシアで6月の消費者信頼感指数が上昇したほか、マレーシアでは5月の輸入が予想を上回った。これらの国では内需が堅調に推移し、輸出の低迷を埋め合わせている。

7月4日、世界経済が鈍化する中、東南アジア諸国の経済が粘り腰を見せている。タイとインドネシアで6月の消費者信頼感指数が上昇したほか、マレーシアでは5月の輸入が予想を上回った。写真はジャカルタのスーパーマーケットで6月19日撮影(2012年 ロイター/Enny Nuraheni)

タイ商業会議所大学が発表した6月の消費者信頼感指数は前月の67.1から68.5に上昇し、大洪水に見舞われた昨年終盤以来の高水準を回復。原油価格の下落や最低賃金の引き上げ、国内の政治的緊張緩和などが消費者心理を押し上げた。

BPIアセットマネジメント(マニラ)の最高投資責任者、ポール・ジョセフ・ガルシア氏は「投資家にとって、今年は東南アジアが魅力的だ。インドネシア、フィリピン、タイ、マレーシア、そしてある程度はベトナムも、内需主導で経済が拡大している」と指摘する。

特にタイでは、昨年の大洪水で甚大な被害を被った輸出企業の多くが第3・四半期に生産体制を全面的に復旧できるとみられるため、今後は成長がさらに加速する見通し。

タイ中央銀行は、世界経済が問題を抱えているにもかかわらず、今年のタイ経済は6%の見通しに近い成長を遂げると予想している。これは大半の先進国の成長率を大幅に上回る水準だ。

タイ商工会議所大学のSaowanee Thairungroj学長は「ユーロ圏の債務危機が懸念されるが、タイへの資金流入は拡大しているもようだ。それは国民の不安を和らげ、信頼感の向上に寄与している」と述べている。

インドネシアでも、ラマダン明けの祭り「イード・アル・フィトル」を8月に控えて食品価格の上昇が見込まれるにもかかわらず、中銀が発表した6月の消費者信頼感指数は前月の109.0から114.4に上昇し、5カ月ぶり高水準に達した。インドネシア国民の間では、政府プロジェクトの実施に伴い雇用が拡大するとの期待から、消費意欲が高まっている。

例えば、ジャカルタでは1台120万ドル(最高価格)もするスポーツカー「ランボルギーニ」を購入するのに、6カ月待ちの状態となっている。

BPIアセットマネジメントのガルシア氏は「これらの国では人口構成が若く、世界の平均を上回る高成長が続いたことで中流階級が厚味を増している。欧州の混乱や米中経済の減速による影響は避けられないが、他の新興国に比べればはるかに打たれ強い」としている。

<柔軟な政策余地>

多くの西側諸国が財政ひっ迫に直面しているのとは裏腹に、アジアでは大半の国が豊富な資金を抱え、債務も比較的低水準にとどまっている。その結果、景気に変調の兆しが表れた場合、刺激策を講じる余地が大きい。

中央銀行も、金利がすでにゼロ%近い水準にあるためこれ以上の金融緩和余地が乏しい多くの先進国と異なり、緩和的な政策スタンスを維持あるいは拡大する余裕を手にしている。

そうした政策面の柔軟性は、マレーシアの貿易統計に顕著に表れている。マレーシアでは5月の輸入が前年比16.2%増と、エコノミスト予想の倍近い伸びを示した。

その主因は資本財輸入の急増で、マレーシア政府が365億リンギに上る高速鉄道プロジェクトなど、原油、ガス、輸送セクターにおける一連のメガプロジェクトを発表したことが輸入を押し上げた。

実際のところ、マレーシアでは内需が極めて好調に推移しており、当局者は世界経済の低迷よりも、旺盛な消費に伴う家計部門の債務増大を懸念している。

<活発なIPO>

そうした動きは内外の投資家から歓迎されている。投資家はこれまで、マレーシアの株式市場は魅力が乏しく、政府による強い影響を受けているとの不満を示していたが、ここにきて多くのファンドマネジャーは見方を改めている。

実際、マレーシア市場への新規株式公開(IPO)が活発化しており、2012年のIPOによる資金調達額はアジアで最高に達する勢いだ。

3日には病院運営会社のIHHヘルスケアが20億ドル規模のIPOに着手。これは同じくマレーシア市場に上場したパーム油のフェルダ・グローバル・ベンチャーズFGVH.KL、米ナスダック市場に上場したフェイスブックFB.Oに次いで、今年になって世界で3番目に大きい規模のIPOとなる。

それに対し、シンガポール市場では、自動車レース運営のフォーミュラ・ワンが市場環境の悪化を理由に30億ドル近い規模のIPOを見送った。

<上向く投資サイクル>

欧州首脳が銀行セクター支援策で合意するなど、欧州債務危機解決に向けた努力が進み、世界の株式市場が安定を取り戻す兆しを見えている中、東南アジアの株式市場は一段と活気づいている。

年初来のパフォーマンスを見ると、フィリピン市場.PSIが22%以上上昇して最高値をつけたほか、タイ市場.SETIは16%超、シンガポール市場.FTSTIは11%超上昇した。マレーシア市場.KLSEの上昇率は5%強だが、4日には過去最高値を更新した(上昇率はいずれも主要株価指数ベース)。

フィリピン市場はかつて「アジアの病人」と呼ばれていたが、政府は今週、脱税者を収監する方針を発表し、これまで海外投資家を遠ざけていた「犯罪に甘い」カルチャーを刷新する決意を示した。

モルガン・スタンレーは最近発表したリポートの中で、東南アジア諸国連合(ASEAN)は投資サイクルが著しく上向く可能性が高まっていると指摘。その理由として、今後2―3年の間に生産能力拡大に向けた民間投資、海外からの直接投資、インフラ向けの公的および民間投資が拡大するとみられるため、と説明した。

同社は、国内総生産(GDP)に対する投資比率(インドネシア、タイ、マレーシアの場合)が、平均で2011年の22.7%から2012年は23.2%、2013年は23.6%に上昇すると予測。「現在のトレンドが持続すれば、ASEAN諸国の投資の伸び率はコンセンサス予想を上回る可能性がある」との見方を示した。

(Boontiwa Wichakul、Aditya Suharmoko記者;翻訳 長谷部正敬;編集 田中志保)

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