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アングル:ロンドン五輪の光と影、暴動現場の若者覆う失望感

[ロンドン 5日 ロイター] 熱戦が続くロンドン五輪。開催国の英国が、過去最高に迫る勢いのメダルラッシュに沸く中、メーンスタジアムにほど近い界隈は祝福ムードとはかけ離れた別世界の様相を呈している。

8月5日、熱戦が続くロンドン五輪。開催国の英国が過去最高に迫る勢いのメダルラッシュに沸く中、メーンスタジアムにほど近い界隈は祝福ムードとはかけ離れた別世界の様相を呈している。写真奥は五輪スタジアム。15日撮影(2012年 ロイター/Paul Hackett)

ハックニー地区のペンブリー団地。1年前の大規模暴動で、マスク姿の若者たちが警官を攻撃し、車に火を放った地域だ。そこでは、英国チームの快挙の知らせは届いているものの、住民たちを貧困から救い出すような効果は全くない。

「チームGB(英国)を誇りに思うが、五輪は五輪。この辺りに住む若者の多くが無職だ」。4年にわたって生活保護を受給中だというマルキット・シンさん(22)は、「彼らには未来を明るくするようなものなどない。私も職を探しているが、一つも見つからない」と嘆く。

この数日間、英国チームはメダルランキングで中国、米国に次ぐ3位につける活躍を見せており、4日にはジェシカ・エニスが陸上女子七種競技を制するなど、1日6個の金メダルを獲得し「ゴールドラッシュ」となった。

<壊れた英国>

一方、「壊れた英国」の象徴となっているペンブリー団地。住民たちは、職も希望もない現状や加熱する警察の取り締まりが、暴動発生の根源にあると主張する。

麻薬組織の取り締まり強化など、事態改善に向けた取り組みが行われていたにもかかわらず昨年8月、29歳の男性が警官に殺害されたことを受け広がった暴動が、この地区にも飛び火した。

38年間ハックニー地区で暮らすイアンさんは「ここの子どもたちは五輪自体にも、誰がメダルを獲得したかなどにも関心がないと思う」と話し、「五輪はわれわれのような人間のためではない。私の知っている子どもたちにとっては、チームGBなどどうでもいい」と続けた。

緊縮策が敷かれた1930年代や50年代に建てられた家が並ぶハックニー地区では、3分の1の若者が失業中。麻薬や犯罪がキャリアの選択肢にもなる地区の若者たちには、五輪は外国で開催されているのと変わらない。

<消え去る志>

警察が同地区の若者に犯罪者のレッテルを貼るのを防ぐキャンペーンを立ち上げたサディー・キングさんは、若者の多くが機会がないと感じていると語る。

キングさんは「彼らは志を持って生きてきた。しかし、今やその思いは尽きてしまっている。だから暴動も起こった」と説明。「彼らは自分たちにチャンスが訪れると考えることが、もはやできなくなっている」と若者の気持ちを代弁した。

またキングさんは、チームGBの活躍で一時的に閉塞(へいそく)感が取り払われ、明るいムードが広がることがあっても、英国はさらに深刻な社会不安に直面する可能性があると警告する。

「歴史を振り返ってみれば、人々が発言の場を奪われ、フェアではないと思うことが起きるときはいつも、暴動が発生するものだ」

(原文執筆:Guy Faulconbridge記者、翻訳:野村宏之、編集:本田ももこ)

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