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リスクオフ巻戻し一服、「ノーリセッション銘柄」の変調に警戒も

[東京 10日 ロイター] リスクオフ・ポジションの巻き戻しは一服。政策期待は継続しているが、積極的に株価の上値を追う買いは乏しい。先進国経済は依然弱く、中国やインドなど新興国経済も成長が鈍化しているが、財政支出が行いにくいのは各国とも同じで、金融緩和だけではグローバル景気減速への懸念は払しょくできないためだ。

8月10日、リスクオフ・ポジションの巻き戻しは一服。政策期待は継続しているが、積極的に株価の上値を追う買いは乏しい。先月撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)

景気後退にも耐性がある「ノーリセッション銘柄」と呼ばれる企業の変調にも警戒感が高まっている。

<米マクドナルド株が年初から下落>

米マクドナルドMCD.Nは市場で「ノーリセッション銘柄」と呼ばれる。食品や医薬品は景気悪化の影響を受けにくいとされるディフェンシブセクターだが、そのなかでも、同社株には、景気悪化で所得や雇用環境が厳しくなれば、廉価なハンバーガーの需要がさらに増えるとの連想が強まる。実際、同社の売り上げはリーマン・ショックの影響もほとんどなく順調なペースで拡大。過去4年間で約18%の増収となっている。

だが、同社が8日発表した7月の世界全体の既存店売上高は横ばいと、過去約9年間で最もさえない成績にとどまった。「マクドナルドが景気低迷を乗り切る姿を長らく見てきただけに、多少の意外感がある」(RBCキャピタルのアナリスト、ラリー・ミラー氏)と市場では警戒感が強まっている。米マクドナルドでは7月販売が伸び悩んだことについて、米国の販売促進(プロモーション)が、弱い経済の影響を相殺するほどではなかったとしている。

同業他社との競争も厳しく、7月単月の動きである可能性もあり、予断は許さないが、同社株は年初から約11%下落。年初までの約10年で3.8倍に上昇した「ノーリセッション銘柄」の変調に、市場関係者の間では、「これまでと違う変化が世界の消費や景気全体に出ているのではないか」(大手証券の海外株担当者)との警戒感も強まっている。

<根強い世界的な景気減速懸念>

実際、グローバル景気はさえないままだ。世界最大の輸入国であり、グローバル経済を左右する米国経済については、上振れた7月米雇用統計以来、景気減速懸念はいったん後退しているが、先行指標であるISM製造業指数が2カ月連続で50を下回るなど雇用の先行きは厳しい。「4500万人と米国で最大の雇用を抱える製造業や卸、運輸などの財関連産業は雇用を伸ばす状況ではない。さらに『財政の崖』の問題が年末まで長引けば企業は設備投資や雇用を先延ばしするだろう」とSMBC日興証券チーフエコノミストの牧野潤一氏は指摘する。

欧州は債務問題が長引き、財政緊縮路線を大きく変えるのは難しい。国際通貨基金(IMF)は7月に発表した最新の世界経済見通しで、2013年の世界経済の成長率予想を前回予想の4.1%から3.9%に引き下げた。そのうえで、欧州当局者が抜本的な債務危機対策を早急に打ち出せなければ、さらなる下方修正もあり得ると警告している。

中国も金融緩和効果がいまだに表れていないことが前日発表された7月の生産や小売りのデータで明らかになった。インドなど成長力に陰りがみえてきた新興国も出てきている。一方、リーマン・ショック以来の財政の大盤振る舞いでどの国も財政政策には大きな負担をかけにくくなっているほか、一部の先進国では金利低下も進んだことで金融緩和効果も小さくなっており、市場からはグローバル経済に対する先行き警戒感がなかなか消えない。

国連食糧農業機関(FAO)が発表した7月の世界食料価格指数は平均213と過去最高だった2011年2月の238に接近してきた。米干ばつなどが上昇の背景だが、2007─08年の食料危機が再来する可能性があるとの懸念も強まっている。インフレが強まれば、頼みの金融緩和も使えなくなる。

<消えないマイナス金利>

投資家の根強いリスクオフ・マインドを示すように、ドイツやオランダ、デンマークなどの2年債は依然としてマイナス金利にとどまっている。10日の東京市場でも円債金利は小幅低下。一部国内勢の買いで長期・超長期ゾーンが底堅い展開となっている。欧米の政策期待を背景に日米金利などは水準をやや上げているが、市場では「カネ余りのなかではいずれ、マネーは再び国債に向かうことになりそうだ」(国内投信)との見方も依然多い。

日経平均.N225は5日ぶりの反落。利益確定売りに押されている。東証1部の売買代金が2営業日連続で1兆円を超えるなど、市場のボリュームはやや改善してきているが、長期投資家は依然慎重だという。市場では「年金など国内勢の解約売りが観測されるほか、海外長期投資家の動きも鈍い。株価がもう一段上昇するかどうかは、CTA(商品投資顧問業者)など短期筋の先物買いが続くかが焦点だ」(大手証券トレーダー)との声が出ていた。

ITCインベストメント・パートナーズのシニアポートフォリオマネージャー、山田拓也氏は「景気が改善しない中では、各国とも短期ゾーンの金利を押さえ続ける政策をとるだろう。長期金利も引きずられて大きくは上昇しないはずだ。株式や商品などリスク商品に資金シフトさせるのは難しい。折に触れ、リスクオフが強まるとの見方は変えていない」と述べている。

(ロイターニュース 伊賀大記;編集 宮崎亜巳)

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