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アングル:貿易赤字は長期化へ、現地生産化も輸出減少要因に

[東京 22日 ロイター] 7月の貿易統計は輸出の弱さを感じさせる内容となり、燃料輸入の増加に伴う貿易赤字という解釈だけでは説明できない要因を感じさせる。機械や自動車、半導体や電機といった主要産業の輸出低迷は、海外経済の減速が背景にあることは間違いなく、輸出回復は予想以上に遅れそうだ。

8月22日、7月の貿易統計は輸出の弱さを感じさせる内容となり、燃料輸入の増加に伴う貿易赤字という解釈だけでは説明できない要因を感じさせる。写真は6月、都内で撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)

一方で、復興需要や消費増税前の駆け込み需要など内需の一時的な好調はかえって輸入増加要因となり、貿易赤字は来年度にかけて長期化するとの見通しが浮上している。日本の製造業の海外生産シフトがじわじわと進んでいることも、輸出の抑制要因になりそうだ。

<予想以上の輸出減、中国落ち込みと米国向け減速>

7月の輸出は前年比8.1%減少し、今年1月以来の大幅な減少となって「輸出の低迷を印象付ける内容となった」(シティグループ証券)。

中でも中国向け輸出は同11.9%減と2桁の減少。原動機や半導体電子部品、自動車部品などを中心に大きく落ち込んだ。中国経済は、公共投資による回復を目指しているものの、まだ明確な底打ち感は出ていない。

日立製作所6501.Tでは、中国市場では昇降機の受注は好調なものの、特に建機の需要が急速に落ち込んでいるという。7月末の会見で中村豊明副社長は、建機の需要回復時期について「早くても来年1月ぐらいになるのではないか」との見通しを示した。

先進国向け輸出もさえない状況が続く。欧州向けは、財政危機に伴う景気悪化で輸出は25%もの大幅減少となっている。米国向けはそうした中で比較的好調で、9カ月連続で輸出増加を維持したが、足元では自動車を中心に伸び率が鈍化、7月の水準は4─6月期を下回っている。

今年に入り、2月と6月を除いて貿易赤字となっている背景について、震災後の燃料輸入の増加という理由だけでなく、最近では輸出の本格回復の遅れが意識されつつある。第一生命経済研究所では「海外経済の足取りは足元でも鈍いままであり、輸出の持ち直しのタイミングは遅れていると言わざるを得ない」と指摘。その上で、今や輸出全体の7割を占めるのはアジア向けであり、このため「輸出が明確に増加するには、特に中国の持ち直しを待つ必要があるだろう」とみている。

<13年度まで貿易赤字見通し、現地生産化の流れも拍車>

市場関係者の間では、貿易赤字が思ったより長期化するのではないかとの懸念が強まっている。シティグループ証券では「貿易収支の赤字基調は13年いっぱいは続くだろう」と予想する。主要貿易相手国の景気が精彩を欠き、輸出が低迷。一方で内需の底堅さを背景に、輸入は緩やかながらも増加基調を維持するとみられるためだ。来年は、輸出が緩やかに持ち直す一方で、消費税率引き上げ前の駆け込み需要で輸入が増加することも予想される。

さらに、輸出がなかなか回復しない背景として、海外経済の減速以外にも、現地生産化の動きもじわじわと影響しそうだ。特に自動車メーカーが中国での工場新増設に積極姿勢を打ち出しており、それに伴い部品メーカーや機械メーカーも現地生産工場を立ち上げつつある。アジアの成長に見合った日本からの輸出の増勢は、その分抑制されることになる。

中国では足元では自動車販売が下振れ気味ながら、トヨタ自動車7203.Tは6月に天津での新工場建設を発表。続いて7月には江蘇州で無段変速機の現地生産を発表している。他方、日産自動車7201.Tは、中国で高級車生産に乗り出す戦略。湖北省の工場で2014年から高級ブランド「インフィニティ」を現地生産する。

空調事業を展開するダイキン工業6367.Tでは、住宅用エアコンを中心に需要の伸びを見込み、4月に蘇州新工場を稼働させた。

日東電工6988.Tは、輸入ウエートの高いハイエンド商品に注目して現地生産化を進めていく方針を打ち出している。

もちろん、こうした海外事業展開の恩恵は日本の経常収支における所得収支に計上されるため、必ずしも輸出の鈍化だけに注目する必要はない。ただ、生産や雇用といった視点からみれば、空洞化はじわじわと進んでいる。日本国内では、心臓部となる部品の生産や付加価値の高い分野を残しつつ現地で組み立て生産を進めていく方向性は変わらないとみられるものの、「輸出をけん引してきた自動車の寄与が低下する一方、自動車以外の品目に輸出回復の裾野の広がりが確認されない」(バークレイズ証券)という状況にある。世界経済の需要回復を待つとともに、競争力の強い輸出分野の裾野が広がることが期待される。

(ロイターニュース 中川泉;編集 山川薫)

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