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焦点:ソニーの相次ぐ買収に問われる成果、本業の市場縮小も深刻に

[東京 5日 ロイター] ソニー6758.Tは、平井一夫社長が就任した4月から半年間で、オリンパス7733.Tやクラウドゲーム会社など合計1600億円の投資を決定した。医療事業など成長分野に進出する狙いだが、新規参入事業の投資回収には時間がかかりそうだ。

10月5日、ソニーは平井一夫社長が就任した4月から半年間で、オリンパスやクラウドゲーム会社など合計1600億円の投資を決定した。CEATECジャパン2012」で2日撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)

一方で、液晶テレビやコンパクトデジタルカメラなど既存事業の市場縮小が進んでいる。重点領域のゲームもスマートフォンに飲み込まれる懸念があり、ソニーは新たな対策を求められる可能性がある。

<資産売却でキャッシュ確保も>

「この6カ月で多くのポートフォリオ再編を進めてきた」―─。千葉市幕張メッセ開かれたエレクトロニクス見本市「CEATEC」の会場で記者団に囲まれた平井社長は、就任以来の買収の成果を強調した。クラウド技術でゲーム配信する米ガイカイ(カリフォルニア州)の買収、ソネットエンタテインメント3789.Tの完全子会社化に続き、9月末にオリンパスへの500億円の出資を決議した。6月に発表したインドのテレビ放送合弁会社マルチスクリーンメディア社(ムンバイ)の株式取得を合わせると、半年間で4件、投下資金は約1600億円。

一方で、米格付会社のスタンダード&プアーズ(S&P)は9月25日、ソニーの長期会社格付け・長期優先債券格付けを引き下げた。ソニーを格下げ方向で見直し中のムーディーズは1日、オリンパスへの出資の影響についても検討を加える予定と発表した。

もっともソニーは先月28日、旧ソニーケミカル&インフォメーションデバイスを含む化学事業を572億円で売却。5月にはシャープ6753.Tの液晶パネル工場への出資を解消し、100億円を受け取った。さらに、ニューヨークの米国本社ビルの売却を検討。ニューヨーク・ポスト紙によると、ビルの価値は7―10億ドル(560―800億円)で、売却が実現すれば十分な現金が手に入る。平井社長は、買収と並行して進める資産売却を背景に「キャッシュバランスには十分に気を配っている」と財務懸念を否定する。

<スマホ収れんで縮む売り上げ>

しかし、S&Pの主席格付アナリストの小林修氏は「キャッシュバランスより懸念しているのは、エレクトロニクスの本業でキャッシュを生み出す力が低下していること」と指摘する。

平井社長は4月12日の経営方針説明会で、エレクトロニクスの立て直しに向けて、1)画像センサーとデジタルカメラなどデジタルイメージング、2)ゲーム、3)スマートフォンやタブレット端末などモバイル――の3事業を重点領域に位置付けた。しかし、就任最初の四半期(4―6月期)決算で、不振が続く液晶テレビだけでなく、コンパクトデジタルカメラ、携帯ゲーム機、パソコンも、それぞれ期初の販売計画を下方修正した。

要因は欧米市場の低迷だけはない。スマホで写真撮影を楽しむユーザーが増えていることで、コンパクトデジカメの市場を侵食している。ソニー自身「いくつかのカテゴリーで食い合いが起きている」(神戸司郎業務執行役員)と、製品間のカニバリゼーション(共食い)が起きていることを認めている。

カメラ、ゲーム、パソコンなどデジタル家電の領域を飲み込みつつあるスマホの市場には、アップルAAPL.Oとサムスン電子005930.KSの「2強」が立ちはだかっている。ソニーでモバイル事業を統括する鈴木国正執行役は「2社だけが生き残るはずはない」と巻き返しを図る構えだが、米調査会社ガートナーによると、4―6月期の世界販売シェアは首位サムスンの29.7%、2位アップルの18.8%に対して、ノキアNOK1V.HE、HTC2498.TW、リサーチ・イン・モーションRIM.TOの後塵を拝しソニーのシェアは3.5%。モバイル事業の営業赤字は今期も続いており、人員削減で赤字解消を目指す状況だ。

ゲーム事業も、携帯ゲーム機「プレイステーションVITA」を昨年12月に発売してから、2四半期連続で赤字が続いた。ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のアンドリュー・ハウス社長は「スマホとの共食いは起きない」と強調するが、ソーシャルゲームが好調なグリー3632.Tの田中良和社長が9月20日の東京ゲームショウの基調講演で「ゲーム専用機、パソコン、スマホは融合が進んでいく」と語るなど、ゲーム専用機の存在の危機を指摘する声は高まっている。

<買収に評価も、求められる実績>

足元で加速する売り上げ縮小を、M&Aでカバーできるわけではない。オリンパスへの出資は11%程度に過ぎず、共同出資会社の外科用内視鏡の開発は2―3年を要する見込み。新会社の売上高は2020年に700億円前後の目標で、投資回収はまだ先になる。完全子会社化するソネットは従来から58%を出資していた連結子会社でソニーの増収効果はない。ベンチャー企業ガイカイの売上高は非開示だが、目先の業績貢献は限定的とみられている。

それでも、オリンパスは共同出資会社の過半数を握り主導権を確保した。高収益が期待される外科治療機器に主体的に参入できるのは、成長分野に位置づける医療事業のノウハウ確保で意味でありそうだ。新会社が開発する医療機器の実用化は保険適用を含めて時間がかかるが、ある外科用内視鏡大手メーカー幹部は、ソニーの高精細映像「4k」技術を採用した医療用モニターを開発して採用が広がれば「世界的な売り上げは相当なものになる」との見方を示している。

さらに、ソネット傘下のエムスリー2413.Tが手掛ける医師向けの医薬品情報サイトの会員数は、世界最大規模の100万人。日本国内の医師29万人のうち23万人が会員で、年率20%の利益成長を続ける。オリンパス事業とのシナジーも期待されている。

ガイカイのクラウドゲームは、パソコンやスマートフォン、テレビなど端末を選ばず、「プレイステーション3」など既存のゲーム専用機の脅威にもなる分野だが、ソニーは「クラウド配信技術で新しいゲームサービスを提供したい」(SCE)と狙いを説明している。ゲーム業界からは「プレステ次世代機の開発に役立つのではないか」として、自社製品を脅かすサービスをソニーが先手を打って買収したことを評価する声が出ている。

平井社長は、この6カ月の事業買収について「すべて4月の経営方針に基づく戦略の結果で、これまでの成果は満足している」と述べた。だが、ソニーの株価は足元で900円台と低迷し、平井社長の就任から半年で45%下落。一時は849円まで下げて32年ぶりの安値に沈むなど、市場の評価は十分に得られていない。「(4月の経営方針に沿って)もっと多くのことを手がけなければならない」と述べる平井社長は「何よりも実績で示す必要がある」とも強調。中長期をにらんだ買収とともに、足元の売り上げ縮小にてこ入れが求められる。

(ロイターニュース 村井令二 ティム・ケリー;取材協力 白木真紀;編集:田中志保)

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