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アングル:インドルピー22日間の反騰劇、市場心理萎縮で失速

[東京 12日 ロイター] 外国為替市場でインドルピーが失速している。米量的緩和第3弾(QE3)導入で市場心理が改善するなか、タイミングよくインド政府が「ビッグバン改革」を打ち出したことで、急速に買い戻されたものの、今週に入って様相が一変。投資家のリスクマインドが委縮するなか、一転して売りが強まっている。

10月12日、外国為替市場でインドルピーが失速している。ムンバイで4月撮影(2012年 ロイター/Vivek Prakash)

脆弱なファンダメンタルズや、多数の貧困層を抱える世界最大の民主主義国として大衆迎合的な政策に走ってしまう「民主主義の罠」などへの警戒は根強く、わずか22日間の反騰劇となった。

<市場心理後退とともに失速>

インドルピーの反騰局面は9月14日に始まった。米連邦公開市場委員会(FOMC)でQE3が打ち出された翌日だ。投資家のセンチメントが改善に向かい、新興国通貨が一斉に上昇。6月にかけてギリシャのユーロ圏離脱懸念などで強烈な売り圧力にさらされ、その後も史上最安値圏に当たる1ドル=55ルピー台で低迷を続けていたインドルピーにも買いが波及した。

投資家のセンチメントが改善するタイミングを待っていたかのように、インド政府は小売業への外資参入解禁や軽油価格の引き上げ、家庭用LPガスの補助金削減など「ビッグバン改革」と称される改革を次々と発表。補助金削減に伴う財政収支の改善や、外資参入で物流などの効率化が進むことによるインフレ抑制への期待などが先行し、ルピーは対米ドルで騰勢を強めた。

市場では1ルピーごとに控えていたテクニカルのフシを次々に突破。10月5日には一時51.32ルピーを付け、4月13日以来のルピー高水準となった。この間、ドルロング/ルピーショートの巻き戻しが急ピッチで進んだほか、インドの高い金利水準に着目した資金流入も見られたという。

しかし、ルピーの反騰局面は10月5日までの22日間で終了し、対ドルだけでなく対円でも下げ基調に転じている。同日発表の9月米雇用統計は失業率が約4年ぶりの低水準となる7.8%に低下するなど改善したが、市場の景況感は改善せず、国際通貨基金(IMF)が新興国の経済見通しを下方修正するなかで、リスクオンムードは後退。株安基調のなかでルピーなど新興国通貨には売り圧力が掛かっている。

IMFはインドについて2012年の成長率見通しを6.1%から4.9%に大幅に引き下げたほか、2013年についても6.5%から6%に下方修正。ファンダメンタルズの脆弱性が意識され、ルピーをさらに買い増す動きは失速。あくまで市場心理がリスクオンに傾くなかでの、改革評価だったことを示した。

ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの村田雅志シニア通貨ストラテジストは「改革の流れが続くという前提であっても、短期的なファンダメンタルズの改善が見込みにくい以上、上値は重くなる。ここからルピーを買ってゆく動きは期待しにくい」と指摘。みずほ証券リサーチ&コンサルティングの折原豊水エコノミストも「新興国通貨にそれほどリスクテイクの資金が流入しているわけではない状況で、ファンダメンタルズが引き続き強くないインドルピーに腰の入った買いがずっと続くのか、慎重にみたい」との見方を示している。

<強まる改革への反対圧力>

三井住友銀行の岡川聡シニアグローバルマーケッツアナリストは、世界的な投資家心理の悪化やインドが抱える経常赤字・財政赤字に加え、「民主主義の罠」から再びルピー安に向かうと予想する。今回、インド政府は小売りや空運、放送業界、保険や年金分野などに対する外資規制の緩和を決めたが、相当ドラスティックに外資を受け入れない限り、ルピー安基調が止まることはないとし、来年には最安値をさらに塗り替える60ルピー台へ下落するとみている。

インド政府は昨年、スーパーマーケットの外資開放を進めたが、国民の反発で撤回を余儀なくされた経緯がある。今回も、連立与党の一角である「全インド草の根会議派」が規制緩和に抗議して連立政権を離脱。西ベンガル州の首相で草の根会議派のバナジー党首は、政府が決定したディーゼル燃料価格の引き上げと国内の小売り市場での外資規制緩和を撤回するよう求めていた。外資系企業の進出で苦境に立たされる国内零細企業を中心に抗議行動が広まるなか、外資系企業が続々と参入できるのか、不透明感はぬぐえない。

スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は10日、インドについて、経済成長見通しや対外的な状況が悪化するか、あるいは財政改革が遅れれば、かなりの確率で投資適格級の格付けを失う可能性があると警告、6月時点と同様の立場をあらためて示した。市場では、仮に投資不適格になれば強いルピー安圧力がかかるとみられている。

脆弱なファンダメンタルズ、双子の赤字、政治情勢をめぐる不透明感、格付けリスク──ルピーの上値にのしかかる悪材料は一層重さを増している。

(ロイターニュース 和田崇彦 編集:伊賀大記)

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