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訂正:アングル:ソフトバンクのスプリント買収、携帯業界の勢力図に影響も

[東京 16日 ロイター] ソフトバンク9984.Tは米携帯電話3位のスプリント・ネクステルS.Nを買収して米国市場に進出する。だが、AT&TT.Nとベライゾン・ワイヤレスの「2強」が支配する米国市場でどこまで立ち向かえるかは不透明。

10月16日、ソフトバンクは米スプリント・ネクステルを買収して米国市場に進出する。スプリントが出資するクリアワイヤは、高速通信「LTE」において存在感を発揮しそうで、日米の携帯業界の勢力図を変える可能性も出ている。写真は15日、都内で撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)

一方で、スプリントが5割弱を出資するクリアワイヤCLWR.Oは、高速通信「LTE」においてソフトバンクが推進する規格の普及に向けて存在感を発揮しそうで、日本と米国での携帯業界の勢力図を変える可能性も出ている。

<純投資の性格鮮明>

「われわれは一番いいところでスプリントの買収を決めた」――ソフトバンクの孫正義社長は15日の記者会見で、スプリントの業績が回復しつつあるタイミングでの投資効果を強調した。2004年12月にスプリントがネクステルを買収して発足した同社は、2社で異なる通信方式の統合コストがかさんで赤字を継続していたが、ダン・ヘッセCEO(最高経営責任者)によると、2社のネットワーク移行や大型設備投資に目途がつきつつあり、2014年以降に業績拡大が見込まれるという。

米アップルAAPL.Oの「iPhone(アイフォーン)」取扱いでスプリントは、AT&Tとベライゾンに出遅れたものの、2011年10月から「4S」の販売を開始。さらに、2012年7月からはLTE網の整備を本格化している。株価は上昇傾向にあり、スプリントの利益成長はソフトバンクの連結業績に寄与するだけでなく、資産価値としての評価が高まっている。孫社長は「スプリントはすでに自ら業績回復している」と強調。これにより市場では「純投資の性格が強い買収」(外資系証券アナリスト)との見方が出ている。

一方で、NTT9432.Tグループのシンクタンクである情報通信総合研究所の岸田重行・主任研究員は、この買収について「スプリントの既存の戦略を加速させるもので、戦略を変えるものではない。今のところ米国の上位2社を追いかける決定打は見えない」と指摘する。米国の携帯電話の加入者シェアは、AT&Tとベライゾンの「2強」が市場の63%を占めるのに対してスプリントは18%にとどまり、シェア争いでは引き続き苦戦を強いられそうだ。

<メトロ買収よりクリアワイヤか>

ソフトバンクの米国戦略では、携帯業界の再編にどう関わっていくかも焦点だ。今年10月3日に業界4位のTモバイルUSAは5位のメトロPCSコミュニケーションズPCS.Nとの合併を発表。4位と5位の合併の動きに対してスプリントは、ソフトバンクから受け取る80億ドル(訂正)(6240億円)を使えば、Tモバイルに代わってメトロ買収を提案するか、Tモバイルとの合併を待った上で買収する選択肢が出てくる。

だが、スプリントはネクステルとのネットワーク統合に苦戦している最中。これ以上の統合コストをかけてまでシェア拡大のためにメトロを買収するメリットは薄そうで「すぐに他の携帯事業者の買収に動くことは考えにくい」(国内証券アナリスト)との見方が強い。むしろ市場や日本の携帯業界でもっとも注視されているのは、スプリントが48%を出資する高速無線業者のクリアワイヤだ。

クリアワイヤが2013年の開始に向けて建設するLTEは、ソフトバンクが普及を目指す「TD―LTE」と呼ばれる方式。ソフトバンクは2011年2月、中国移動(チャイナモバイル)0941.HK、英ボーダフォンVOD.L、インドのバーティ・エアテルBRTI.NSの4社でTD-LTEの推進団体を設立。さらに、今年の冬モデルで発売するアンドロイドスマホの主力機種はすべてをTD-LTEに互換する「AXGP」と呼ぶ高速通信サービスに対応させている。

<TD―LTEのアイフォーン登場なら激震>

しかし現段階では、LTEの通信方式の主流は、NTTドコモ9437.TやAT&Tはじめ日米欧の携帯会社が採用する「FD―LTE」方式。LTEに対応するアイフォーン5はFD―LTEを採用しており、ソフトバンクもアイフォーン5の発売に合わせて9月からFD―LTEのサービスを始めている。

日本ではソフトバンクだけが進めるTD―LTE規格の世界的な普及に向けては「中国市場を握るチャイナモバイルとの連携が重要」(携帯業界関係者)だが、米国市場でTD―LTE網の整備を目指すクリアワイヤとの連携もカギを握る。

ソフトバンクと競合する日本の携帯事業者が最も恐れるのは「アップルのアイフォーンがTD―LTE対応に乗り出すこと」(同)だ。仮にそれが実現すれば、日本だけでなく米国でもソフトバンクグループが圧倒的に有利な立場に立つ。クリアワイヤをテコにTD―LTEの普及に弾みをつけることができれば、日本市場におけるNTTドコモやKDDI9433.Tとのシェア争いや、米国市場でもAT&Tやベライゾンに対抗する手段として重要な戦略になり得る。

クリアワイヤについてヘッセCEOは15日の記者会見で「大口投資家としてよい関係を保っている」と述べるにとどめ、出資比率の引き上げについて言及を避けた。孫社長も「LTE技術はさまざま検討している。戦略に関わるので何をやると言うことはできない」とクリアワイヤの評価を控えているが、TD―LTE対応のアイフォーン導入に向けた次の一手に一段と注目が集まっている。

(ロイターニュース 村井令二:編集 宮崎亜巳)

*訂正:本文第6段落の「800億ドル」を「80億ドル」に訂正します。

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