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焦点:欧州各国の分離独立派、経済危機の煽りで勢力拡大

[パリ/ブリュッセル 15日 ロイター] 欧州の経済危機が深刻化する中、スペインのカタルーニャ州や英国のスコットランドなどでは、独立派の勢いが強まっている。ただ、この動きが必ずしも、新国家誕生につながるかどうかは不透明だ。

10月15日、欧州の経済危機が深刻化する中、スペインのカタルーニャ州や英国のスコットランドなどでは、独立派の勢いが強まっている。写真は独立の是非を問う住民投票に関して記者会見するスコットランド自治政府のサモンド首相(2012年 ロイター)

14日に行われたベルギーの統一地方選では、北部オランダ語圏フラマン地域の分離独立を主張する新フランドル同盟(N―VA)が躍進。スコットランドでは15日、自治政府のサモンド首相が、キャメロン英首相と2014年に独立の是非を問う住民投票の実施で合意。スペイン・カタルーニャ州の独立派は、来月の州議会選で目標達成に向け前進したいと意気込んでいる。

欧州では、各国政府が予算や経済政策の権限を欧州連合(EU)に移譲する動きが進むに伴って、数世紀にわたってくすぶっていた地方の不平不満や対立意識が再燃し、縮小する公的資金をめぐる争奪戦が激しさを増している。

広範な自治権をすでに有し、比較的裕福なカタルーニャ州(カタルーニャ語圏)やフラマン地域などでは、厳しい財政状況に陥っているアンダルシア州(スペイン語圏)やワロン地域(フランス語圏)のために資金を拠出することに不快感が募る。

スコットランドは、経済力でイングランドに劣り英国政府の支援も受けているが、沖合の北海油田を利用することによって、自力での財政運営に自信をのぞかせる。

欧州の分離独立の動きには、類似点もあれば相違点もあるが、世論調査で圧倒的多数の住民が分離独立を支持している地域は、今のところどこにもない。

スコットランドの独立を支持する住民の割合は30―40%となっており、交渉が加速してからも数字は大きく変化していない。カタルーニャ州の住民に尋ねた9月の世論調査では、完全な独立国家に賛成する割合は43%で、反対も41%という結果だった。

<矛盾する立場>

カタルーニャ州は、スペイン自治州の中で最も裕福な州の一つとされるが、財政はひっ迫しているのが現状。そのため、独立を求めながらも中央政府に支援を要請するという矛盾する立場を取っている。

同州のマス首相は、「国家としてでなければ、カタルーニャは生き残れない」と発言。ハイテク産業や農業が基盤の同州は、中央政府から受け取る額よりも多額の税収を政府に支払っているとし、その資金があれば今より手厚い社会福祉や医療サービスを提供できると主張している。

カタルーニャ州では先月、少なくとも50万人が中央政府に対する抗議デモに参加。マス首相は州議会選で勝利すれば、分離独立の是非を問う住民投票を実施すると約束した。これに対し、中央政府は住民投票は違法だとの見解を示している。

同州や政府の当局者は、住民投票の実現には懐疑的な見方を示しているが、増税や歳入の使途に関してより多くの権限を同州に認める交渉が行われると話す。今月の州議会選で独立派が勝利するとみられているバスク自治州では、すでにそういった合意がなされている。

<世代の変化>

欧州で分離独立派の勢いが活気付いた背景には、世代の変化もある。19世紀の階級闘争の末に生まれた政党が、現代の有権者が生まれ育った時代に台頭した新興政党に押され始めている。

新興政党には、エコを掲げる緑の党や、自由主義の海賊党、極右の反EU政党や移民排斥主義の集団に加え、権限を委譲された地方議会や地方自治政府での政治経験を持つ独立派などが含まれる。

1970─80年代以来、分離独立に予防線を張る動きが広まるどころか、欧州の多くの国で進んだ地方分権化は、独立派の基盤を固めた。

カタルーニャやスコットランド、フラマンの独立派政党はすべて親欧州だが、一部の国でみられる独立派の動きは、ユーロ離脱派や移民排斥を掲げる集団との間に類似点もみられる。

イタリアの北部同盟はここ数年、政治資金スキャンダルで勢いにかげりがみられるが、強硬な移民排斥を掲げながら、自ら「パディナ」と呼ぶ地域の自治拡大を目指している。

フラマン地域のN―VAは2001年に設立され、有権者にとっては、イスラム教移民の排斥などを訴える極右政党フラームス・ベラングに代わる選択肢となった。

<EUの奥の手>

EUの役割が強化され、多くの国で権限移譲が進められたことで、欧州各国政府の権限は縮小した。しかし、独立の選択を回避させようと、域内政府の中には「奥の手」を使う国も出てきた。

スペインのラホイ首相は、EUへの新規加盟は全会一致の合意が必要なため、独立を望む地域は、EUから締め出されることになると警告。「スペインにもEUにも入っていなければ、どこにも属していないことになり、消えてなくなる運命をたどる」と述べた。

英国政府当局者は、独立を支持する住民投票の結果が出たとしても、スコットランドが自動的にEUに加盟することはないと指摘。EUへの加盟は、行政運営などをめぐる複雑な交渉にかかっているとし、英国政府には拒否権もあるという。

スコットランド人は、伝統的にユーロに懐疑的なイングランド人に比べると親欧州と言えるが、自治政府のサモンド首相は、住民投票による経済的混乱を最小限に抑えるため、通貨をユーロにはせず、ポンドを維持すると表明している。

(原文執筆:Paul Taylor記者、Robert-Jan Bartunek記者、翻訳:野村宏之、編集:宮井伸明)

*誤字を修正します。

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