[東京 19日 ロイター] 野田佳彦首相(民主党代表)と自民党の安倍晋三総裁、公明党の山口那津男代表が19日行った党首会談は、首相から解散時期の明示はなく、特例公債法案などの処理についての具体的な協議まで至らずに決裂した。
政府は国民生活に影響の大きい特例公債法案などの成立を図るため、29日に臨時国会を召集する方針だが、解散の確約が得られないことに反発を強める自民、公明はじめ野党の理解が得られるかは不透明だ。田中慶秋法相の問題も重しとなり、政権運営はさらに厳しさを増している。
<解散は「責任ある判断」と首相、安倍自民総裁「怒りを覚える」>
野田首相は会談で、「近いうちに信を問う」とした8月の党首会談での合意に関して、「重みと責任は十分自覚しており、それを判断するために環境整備しなければならない」と伝え、特例公債法案や選挙制度改革、一体改革での国民会議設置についての協力を呼び掛けた。安倍総裁と山口代表は解散時期についてもっと具体的な明示がないとその先の話には入れないと反発。首相が「だらだらと政権の延命を図るつもりはない。条件が整えば判断したい」と表明したが、理解は得られなかった。
安倍総裁は「正直驚いている。失望した」と不満をあらわにした。さらに「幹事長会談を踏まえてのこの回答に怒りを覚える」と痛烈に批判。安倍総裁によると、公明党の山口代表も「相当厳しい発言になった」という。
野田首相は会談の中で、特例公債法案について、予算と一体となって処理するルールを提案。定数削減についても、衆院で0増5減を先行しようと多くの党が言うなら、幹事長級でそういうことも含めて議論したいと踏み込んだ。しかし、解散時期の明示がないことに反発する安倍総裁、山口代表は議論に応じなかった。
<再会談、現時点で不明>
再会談を行うかどうかについて野田首相は「状況をみての判断になる」と述べるにとどめた。安倍総裁は「(政府・与党には)われわれが協力できる状況を作っていく責任があり、答を出すのは政府・与党だ」とする一方、「今回と同じことが起きるのであれば意味がない」とも語り、再会談を行う場合には、より具体的な時期の表明を求める考えを示唆している。
<臨時国会29日召集へ、会期は1カ月>
一方、首相は臨時国会について「どちらにしろ開かないといけない。(自公両党の)理解を得る努力は続けたい」として、月内に召集する考えを示した。党首会談の後に行われた政府民主三役会議では、臨時国会を29日に召集することを決めた。安住淳幹事長代行は「会期の幅は約1か月。懸案となっている特例公債法案を含めた法案の処理をしたい」と語った。
安住幹事長代行は「(自公の理解を得られるため)さまざまなレベルで話をしていきたい。解散、解散ばかりでは国民の期待に与野党とも応えられない」とするが、安倍総裁は「信頼関係を回復する努力を首相にしてもらわなければ、とても対応できない」と否定的だ。
さらに野田政権にとって、外国人献金や暴力団との過去の交際問題が浮上した田中慶秋法相の問題も重しとなる。野党側は公務を理由に18日の参議院決算委員会を欠席したことを重視、首相が罷免の決断をしなければ問責決議案提出の可能性が高まる、との指摘も出ている。
(ロイターニュース 石田仁志、吉川裕子、基太村真司;編集 山川薫)
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