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アングル:タブレット競争激化、電子書籍端末の生き残り策は

[シンガポール 29日 ロイター] 米アップルAAPL.Oや米グーグルGOOG.O、米マイクロソフトMSFT.Oなどが新製品を相次いで発表し、タブレット端末市場の競争が激化する一方、電子書籍専用端末は存在感が薄れつつある。

10月29日、タブレット端末市場の競争が激化するなか、電子書籍専用端末は存在感が薄れつつある。イー・インクのような電子ペーパー企業は、自社が持つ技術の新たな売り先確保に奔走している。写真はイー・インクの技術を採用した製品(2012年 ロイター/Dominick Reuter)

台湾のイー・インク・ホールディングス8069.TWOを例にとってみよう。同社は米アマゾン・ドット・コムAMZN.Oの電子書籍端末「キンドル」や米バーンズ・アンド・ノーブルの「ヌーク」にモノクロの電子ペーパーを提供している。イー・インクは5年間にわたり出荷量が100倍に膨れ上がるなど急成長を続けたが、2011年末になると月間売上高がわずか2カ月で9割も減少した。

電子書籍端末は当初、太陽光の下でも文字が読み取れて消費電力も少ない反射型ディスプレー採用の恩恵を受けていた。しかし、バックライトを改善し、より小型で省エネ化も進んだ米アップル「iPad(アイパッド)」の成功により、電子書籍端末は「過渡期」の技術になった。

これは、チェンバロがピアノに取って代わられたのと同じだ。または、多機能携帯電話(スマートフォン)「iPhone(アイフォーン)」が投入されるまでMP3プレーヤーの普及拡大に貢献した音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」にも状況は似ている。

イー・インクのような電子ペーパー企業は、自社が持つ技術の新たな売り先確保に奔走しており、中には事業撤退を選ぶ企業もある。

米調査機関ピュー・リサーチ・センターが行った調査によると、電子書籍を読む30歳以上の米国人のうち、電子書籍端末を使用するとの回答は半分を下回り、30歳未満では4分の1以下となった。

アナリストは、電子書籍端末の出荷見通しを引き下げている。IHSサプライは昨年12月の時点では、2014年の電子書籍の出荷台数を4300万台と推計していたが、先月にその数字を3分の1に引き下げた。一方、タブレット端末の出荷台数については、モルガン・スタンレーが今年6月、2013年の見通しを2億1600万台と予想。昨年2月時点の推計1億0200万台からほぼ倍増させた。

日本でデジタル出版事業を手掛けるロビン・バートル氏は、「イー・インクにはいら立たしいことだが、(電子書籍端末は)過渡的なデバイスだ」と述べた。

<ライバル撤退で有利な立場に>

ブリヂストン5108.Tは5月、液晶パネル価格の急速な低下と競争激化を理由に、6年間にわたり展開していた電子ペーパー事業から撤退すると発表。同社と共同開発を行っていたデルタ電子2308.TWも事業撤退を明らかにした。

ベンチャー企業2社を買収し、複数の電子書籍端末を投入した米クアルコムQCOM.Oも7月、今後はディスプレー技術「ミラソル」のライセンス事業に集中すると表明。英国を拠点とするプラスチック・ロジックも、電子書籍端末の生産を中止し、ディスプレー技術のライセンス事業を検討していると明らかにした。

一方、イー・インクは今年に入ってライバル企業を買収。競合他社が相次いで撤退したことで、同社は電子ペーパー事業で有利な位置に立つことになった。

電子書籍端末をめぐる状況は悪いニュースばかりではない。暗い場所でも文字を読めるフロントライトを搭載した次世代端末も新たに発売されており、アマゾンの「キンドル・ペーパーホワイト」は短時間で売り切れ、69ドルに値下げした最も安い「キンドル」もヒット商品となっている。また「キンドル」はインドと日本という2つの大規模市場にも新たに進出を果たしている。

イー・インクの売上高は昨年末からは幾分持ち直しており、劉思誠(スコット・リウ)最高経営責任者(CEO)も、今月31日に発表する決算は良い数字が並ぶと自信をのぞかせている。

しかし、イー・インクが将来的な拡大を見込んでいるのは、一般的な電子書籍端末ではなく、教育などの専門分野だ。同社は教室での授業を想定して、生徒が読むページを教師が一括して操作できる装置などを開発した。アマゾンも今月、学校教育で「キンドル」などの使用を普及させるため、100校以上で同端末を試験的に導入していると発表した。

イー・インクはまた、電子書籍端末以外の分野でもディスプレー技術採用の可能性を模索。これまでに時計、USBドライブ、韓国サムソン電子005930.KSの携帯電話のキーパッドにも同技術が使われている。劉CEOは、電子書籍端末以外への同社の技術採用について、向こう5年以内には電子書籍端末向けと同程度になるだろうと述べた。

ラックス・リサーチのジョナサン・メルニック氏も「(イー・インクのディスプレイ技術には)まだ将来性がある。ただ、それは電子書籍端末以外の分野になる」との考えを示した。

一方、イー・インクのディスプレー技術の将来性にそれほど楽観的でない見方もある。同社はタブレット端末の登場に出し抜かれただけでなく、技術革新の面でも手間取った。「キンドル」の最新モデルのディスプレーについては、これまでのモデルに比べ画面リフレッシュは改善された一方で、アップルやサムスンのディスプレーと比較すると古めかしい印象は否めないという声もある。富邦証券(台北)のカルビン・シャオ氏は、「過去数年間で技術に大きな改善はみられない」と述べている。

(原文執筆:Jeremy Wagstaff記者、翻訳:本田ももこ、編集:宮井伸明)

*誤字を修正して再送します。

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