[シドニー 6日 ロイター] オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)は6日、政策金利のオフィシャルキャッシュレートを3.25%に据え置いた。国内のインフレ率上昇や、世界経済の改善を理由に利下げを見送った。ただ、今後の追加緩和に含みを持たせた。
豪ドルは、対米ドルで5週間ぶり高値に急伸。ユーロは豪ドルに対して2カ月ぶりの安値をつけた。市場では、10月の利下げに続いて今回も追加利下げに動くかどうかについて、見方が分かれていた。
ロイターの調査では、エコノミストの過半数が今週の利下げを予想していた。
中銀のスティーブンス総裁は「物価指標が予想を若干上回り、最近の世界経済に関する情報がやや明るさを増していることから、金融政策のスタンスは当面(for the time being)適切と判断した」と説明した。
アナリストらは、この当面(for the time being)という文言について、中銀のバイアスが依然として緩和方向にあり、今後の経済指標の内容次第では、12月か来年2月に利下げする可能性があることを示唆するサイン、と受け止めている。RBAは、1月は理事会を開催しない。
JPモルガンのチーフエコノミストであるステファン・ウォルターズ氏は「中銀にとって、若干の懸念すべき問題はあるものの、ただちに行動しなければならないほど大きな問題というわけではない」との見方を示したうえで「中銀はおそらく12月に利下げするだろう」と述べた。
投資家は、今後の追加緩和の予想を後退させている。インターバンク先物を見ると、今年のクリスマスまでに利下げが行われる確率は56%。これまではほぼ100%の確率で利下げを織り込んでいた。
オフィシャルキャッシュレートの先行きの水準に関する市場の予想を反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)では、1年後の政策金利は2.87%。前日5日の段階では2.74%だった。
<資源投資のピーク近い>
今回利下げが見送られたのは、第3・四半期の基調インフレ率が予想以上に上昇したことが理由の1つとみられる。前年比ベースの基調インフレ率は2.5%で、中銀の長期目標である2─3%の中央に戻った。
世界経済についても、中国経済に一定の安定が見られ、米経済も緩やかながら改善するなど、先行きの見通しは一部に明るさも見られる。
RBAはここ1年間で、150ベーシスポイント(bp)の利下げを行っているが、政策金利は依然、他の先進国と比べて高い水準にある。
スティーブンス総裁は、鉄鉱石や石炭など、オーストラリアの主要な資源の価格下落が、鉱業投資の見通しに影響していることに言及した。
総裁は「今後の資源投資については、6カ月前に予測されたよりも低い水準で来年にピークをつける可能性が高い。このピークが近づくなか、理事会は需要の他の構成要素の強さを注視していく」としている。
こうした資源投資のピークをにらみつつ、オーストラリアの政策当局者は、住宅建設など、経済の他のセクターを盛り上げようとしている。
RBCキャピタル・マーケッツのストラテジスト、マイケル・ターナー氏は「RBAは、人口増と金利低下が住宅建設の回復を下支えると期待しているが、われわれはそれほど楽観的ではない」としたうえで「今回の緩和局面では、金利は2.75%まで下がると予想していた。きょうの据え置き決定後も、その見方に変わりはない」と話している。
*内容を追加します。
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