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アングル:安倍総裁の過度なリフレ政策は「経済再生に逆行」

[東京 19日 ロイター] 自民党の安倍晋三総裁が主張する財政金融政策について、経済専門家の間では日本経済の再生に逆行するとの見方が広がっている。極端ともいえる金融緩和への圧力や巨額のインフラ投資は、財政再建や経済構造転換を遅らせるというものだ。

11月19日、自民党の安倍晋三総裁が主張する財政金融政策について、経済専門家の間では日本経済の再生に逆行するとの見方が広がっている。15日撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)

補正予算で大規模なデフレ・景気対策を打っても対症療法に過ぎず、デフレ脱却や真の経済再生につながらないとの声も浮上。安倍総裁は来月4日の衆院選公示に向け、実現性や妥当性を踏まえ、発言の軌道修正を余儀なくされるとの指摘もある。

<対症療法では再生図れず>

現在、日本経済は単に景気後退局面というばかりでなく、経済構造やその国際競争力自体が問われる転換点に来ている。しかし、こうした大きな課題に安倍総裁の発言が応えているという印象はほとんどなく、むしろ極端ともいえる発言に、経済専門家らは首をかしげている。

RBS証券では「次期首相の可能性が極めて高い人物から、ここまで過激な発言が続く中、その政策の実現可能性を精査することが非常に重要」としたうえで、「安倍氏の提案する政策には日本経済に効果がない、あるいは逆効果さえあると思われるような政策も混じっており、またそもそも実現性に欠けるものも多い」と批判的だ。

金融市場がこうした「上げ潮政策」に株高、円安で反応したのは、成長が高まり、デフレ脱却への期待も混じっているためとみられるが、BNPパリバ証券では必ずしもそうならないとみている。「経済成長率を高めるように見えるのは、財政政策を通じて、将来の所得の先食いが可能になり、金融政策を通じて将来の需要の前倒しが可能になるため」と指摘。確かに、これまで何度も繰り返し財政出動や金融緩和を繰り返してものの、効果が切れれば景気は落ち込み、金融緩和を繰り返しても円高進行は止まらず、対症療法でしのいできたに過ぎないことが明らかだ。

<金融政策圧力への反論広がる>

特に安倍氏の金融政策への圧力は民主党政権以上のものとなっている。無制限緩和、国債引き受けといった、副作用を顧みない発言まで飛び出す。国民の理解もまだ十分得られてない消費増税の予定通りの実施や、困難が予想される社会保障の給付削減など、大衆受けのしない財政再建への言及が少ない一方で、圧力をかけやすい日銀への言及ばかりが先行している印象は否めない。

シティグループ証券では「日銀の金融政策に対して、先進国の常識を上回るような強い政治的圧力が加わり続ける事態が否定できない」と危惧する。

第一生命経済研究所でも、人為的にマネーを増やすことは、使途が企業の生産性上昇に寄与しない場合、不良債権が山積みになりかねないと危惧する。「マネーの裏側にある負債の信用力を劣化させる副作用を伴う。そうした副作用に目をつむって、という意図が込められているのならば、要注意だ」とみている。

<巨額インフラ投資より、産業制度改革を>

自民党の政権公約に反映される可能性が高い「日本経済再生本部」中間とりまとめ案では、「世界で最も企業が活動しやすい国」をめざすとして、企業に歓迎されやすい政策が並んた。ただし、既存の経済構造を前提にしている印象が強く、構造転換を図るための方策はこれといって見当たらない。

すでに自民党では、「国土強靭化基本法案」をとりまとめ、10年間で200兆円にのぼるインフラ投資を掲げているが、こうしたやり方には企業も期待していない。

実際、ロイター企業調査(9月実施)でこの法案の妥当性を尋ねたところ、調査対象企業(400社対象)のうち、こうした政策に50%が「妥当とは思えない」と回答。「財源確保ができない中で規模の拡大は将来に問題を残す」、「インフラ維持費用が将来負担になる」、「日本企業が海外と対等に勝負できる制度改革を優先すべき」といった声が大半を占めた。

一時的な景気浮揚にはなっても日本経済の再生につながらないことは金融市場も見抜いている。シティグループ証券では、公共事業で旧来型の事業の割合が高くなるような場合、「新政権の経済政策に対する金融市場の評価が低下する可能性も否定できない」と予想している。

<「次元の違う政策」に問われる信頼性>

自民党の中間とりまとめで成長戦略として、法人税率の20%台への引き下げを掲げている点は、実現すれば輸出産業の競争力強化につながる可能性がありそうだ。一方、産業界が期待するTPP(環太平洋連携協定)については、今回の「中間とりまとめ案」に直接的な言及は見当たらない。シティグループ証券では「農村票への悪影響を懸念し、交渉参加に向けた明確なスタンスが打ち出される可能性は低いように思われる。その場合、事実上、交渉参加が難しくなる事態も否定できない」と懸念する。

安倍総裁は「これまでとは次元の違ったデフレ脱却政策」と訴えているが、その中身や実現性に目が向くに従い、「次元の違う政策」への信頼性が問われつつある。もっとも、金融市場も経済専門家も、「実際にはこうした極端な発言は選挙選目当て」(第一生命経済研究所)との見方も多く、「実際に政権についた場合には徐々に修正を迫られていく」(シティグループ証券)として、額面通り受け取っている訳ではなさそうだ。

(ロイターニュース 中川泉;編集 石田仁志)

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