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焦点:マイクロソフトが組織改革に本腰、「水平統合」でアップル追撃

[シアトル/サンフランシスコ 16日 ロイター] 米マイクロソフトMSFT.O「ウィンドウズ」部門の責任者スティーブン・シノフスキー氏の突然の辞任は、スティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)が本腰を入れ始めた「組織改革」の第一歩と言えそうだ。

11月16日、米マイクロソフト「ウィンドウズ」部門の責任者スティーブン・シノフスキー氏の突然の辞任は、スティーブ・バルマーCEO(写真)が本腰を入れ始めた「組織改革」の第一歩と言えそうだ。テルアビブで5日撮影(2012年 ロイター/Nir Elias)

米アップルAAPL.Oや米グーグルGOOG.Oの得意分野で両社の追撃を目指すマイクロソフトは、オペレーションの大幅な統合を目指しているとみられる。

マイクロソフトに23年在籍したシノフスキー氏は、満を持して開発した「ウィンドウズ8」を発表したばかりだった。同社内部の情報筋は同氏の辞任について、バルマーCEOが新たな取り組みとして「部門間の協力」に力を入れ始めたことを示していると語る。

同社社員の1人は匿名を条件に「何度も繰り返し聞かされる言葉は協力で、水平統合が新たな標語になっている」とし、「彼ら(経営陣)は、ハードとソフトがより統合されたモデルに移れなければ、自分たちが弱い立場に立たされると理解している」と話した。

過去10年の大半をもがき苦しんだマイクロソフトは、「iTunes(アイチューンズ)」と「iPhone(アイフォーン)」を組み合わせたアップル流のソフトとハードの統合や、検索エンジンや動画投稿サイト「ユーチューブ」などをシームレスにつないだグーグルのやり方を模倣しようとしている。

バルマーCEOは先月、同社を「デバイスとサービスの会社」だと強調。アナリストらは、マイクロソフトは部品こそ全部そろっているが、組み立てに失敗していると指摘する。バルマー氏は今、ハードとソフトの両立を現実のものにするため、会社の形を変えようとしているようだ。

1990年代にウィンドウズ部門を率いていたブラッド・シルバーバーグ氏は「今から半年で組織図が大きく変わるのは間違いない」と指摘。シノフスキー氏の辞任により、バルマーCEOには、より調和のとれた組織を作るチャンスが訪れるとの見方を示した。

実際バルマーCEOは、シノフスキー氏の後任に、協調性に定評のある幹部2人を充てた。1つの部門を2人が率いる体制に変えるのは過去数年で3回目となる。ウィンドウズ部門のマネジャーの1人は「シノフスキー氏はすべての力を自分の下に集中させていた。今後どう変わるか見守りたい」と語った。

<帝国主義者は不要>

シノフスキー氏は、自身が率いるウィンドウズ部門の周囲に壁を築いていた。同氏の辛らつながらも理路整然としたスタイルは、社内の他の部門を遠ざけてきた。マイクロソフトのもう1つの稼ぎ頭である「オフィス」部門とは特に疎遠だった。

シルバーバーグ氏によるシノフスキー氏の人物評は「マイクロソフトに多大な貢献をもたらした素晴らしい男だったが、同時に極端に偏った人間でもあった」というものだ。

ウィンドウズ8の最終テスト版に関する情報を共有せず、タブレット端末「サーフェス」の内容を発表直前まで秘密にしていたことは、特にオフィス部門からの不興を買った。シノフスキー氏の仕事の進め方を間近で見ていたという元同社社員は「すべての優秀なリーダーは摩擦を生むものだが、シノフスキー氏と仕事をすることのコストは、最後はメリットを上回ってしまったのだろう」と述べた。

バルマーCEOは、幹部同士がもっと一丸になるべきだと言明している。同社の経営陣には来年、自分の部門の業績だけでなく、会社全体のパフォーマンスに応じたボーナスが支払われる。同CEOは、全社的な業績に連動した報酬体系で「組織横断的な協力」が深まると期待する。

しかし、創業40年に近づく同社のカルチャーをバルマー氏が根底から変えられる保証はない。ウィンドウズ部門に優位性を与え、部門間を意図的に競わせてきた責任は、ほかならぬバルマー氏自身にもあるからだ。

グローバル・エクイティーズ・リサーチのアナリスト、トリップ・チョウドリー氏は、新たなリーダーが外部から来ない限り、何も変わらないと指摘。「マイクロソフトは過去にしがみついており、過去の人に頼り続けている。これが根本的な欠陥だ」と語る。

<CEOの座に君臨>

部門間の協力を求めるバルマー氏だが、自身の権限に部下が疑いを持つことは認めない。シノフスキー氏は過去3年、バルマーCEOの後継者の最有力候補とみられてきた。一方、バルマー氏は過去5年だけを見ても、リーダーになり得ると言われた成長株たちを追い出してきた。

ウィンドウズとオンライン部門の責任者だったケビン・ジョンソン氏は米ジュニパー・ネットワークスJNPR.Nに移籍。オフィス部門を率いていたステファン・エロップ氏は、ノキアNOK1V.HEのCEOに転じた。ビル・ゲイツ氏の後任としてチーフ・ソフトウエア・アーキテクト(CSA)を務めたレイ・オジー氏は、自身のプロジェクトを立ち上げるためにマイクロソフトを去った。

「過去数年でかなり多くの上級幹部を使い果たしてきた。ベンチにはもう昔の面影はない」。マイクロソフトを野球チームに例えてこう語るガートナーのスミス氏は、同社には、経営構造やキャリアパス、後継者育成など、解決すべき問題が多いと指摘している。

(ロイター日本語サービス 原文執筆:Bill Rigby and Alexei Oreskovic、翻訳:宮井伸明、編集:伊藤典子)

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