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日立と三菱重が火力発電事業統合、「日本最強」で海外展開加速

[東京 29日 ロイター] 三菱重工業7011.Tと日立製作所6501.Tは29日、火力発電所向けを中心とする電力システム事業を統合すると発表した。新興国など世界で社会インフラ市場が急成長しており、国内外で需要が拡大している火力発電分野での国際競争力を高めるのが狙い。

11月29日、日立製作所と三菱重工業は、火力発電システム分野で事業を統合することで合意したと発表した。写真は10月、都内で撮影(2012年 ロイター/Toru Hanai)

両社は2014年1月1日をめどに新会社を設立、三菱重が65%を出資し、連結子会社とする。日立は残りの35%を出資する。新会社に集約するのは、ガスタービンなどの火力発電システムのほか、地熱発電、環境装置、燃料電池などの事業。今後、共同で統合準備委員会を設置し、詳細な条件を詰める。原子力発電事業は今回の統合からは外れる。

統合対象となる事業の売上規模は両社合計で1兆1000億円。事業規模の拡大により、世界の火力発電市場で圧倒的な存在感を誇り、約3兆円規模の米ゼネラル・エレクトリック(GE)GE.N、独シーメンスSIEGn.DEの世界2強を追い上げる。

<「日本最強の組み合わせ」>

三菱重の大宮英明社長と日立の中西宏明社長は同日夕、都内で会見した。三菱重の大宮社長は「日本企業同士が国内外で消耗戦をするよりは、一緒に海外の競合と戦うことが重要だ」とし、「世界をリードする火力発電システム会社にしたい」と意欲をみせた。日立の中西社長も、統合に至った一番の大きな背景として「市場のグローバル化」を挙げ、両社の技術と人材をグローバルに生かす「日本最強の組み合わせだ」と強調した。

三菱重は、需要が旺盛な天然ガスを燃料とした火力向けで熱効率が世界最高水準の大型ガスタービンを持つ。一方、日立は中小型機種が主力で、特に新興国で需要が高い石炭火力発電所向けの蒸気タービンに強い。地域的には、三菱重が東南アジアや中東など、日立が欧州やアフリカなどに強く、統合により補完効果を期待できる。

最近では発電事業への出資や発電所の運営を求められるケースも増えており、大宮社長は今後の事業展開では「資金力がないと対応できない」と説明。欧米勢に比べて資金調達力で劣ることも、統合を後押しした。

大型ガスタービンの供給を受けているGEとの関係について、日立の中西社長は「今後もできるだけ関係を維持したい」との意向を示したが、今後は新会社が主役になるため、GEとは当然ある部分では競合せざるを得ない場面も出てくるとの認識も示し、「GEと話し合いながら、顧客に迷惑をかけない方策を取りたい」と語った。

新会社での業績目標などについては、統合作業をこれから進めるなどとして言及しなかった。三菱重は世界のガスタービン市場で約15―20%のシェアを握る3位。技術力と収益力を強化し、中長期的にGEとシーメンスの2強と肩を並べられるシェア30%以上を狙う目標を掲げている。

<原子力統合は急がず、他事業でも連携検討>

今回の統合で対象外とした原子力発電事業は、三菱重が仏アレバAREVA.PAと、日立がGEと提携していることもあり、三菱重の大宮社長は「あまり急がず、ゆっくりやっていきたい」と述べた。また、「国内での原子力発電所の再稼働の先行きが不透明で、状況がはっきりした段階で考えたい」と説明、将来的に統合を検討する可能性も示唆した。日立の中西社長は、原子力は「もともと大変息の長い取り組みが必要な事業」などと話し、どういう形での協業が一番いいのか、多面的に見極めたいとの意向を示した。

また、火力発電以外の事業統合に関しては、大宮社長は「どのようなポテンシャルがあるかをみて判断する」とした上で、今後、都市交通システムなど補完関係のある他事業でも、協業や提携を検討していきたいと期待を寄せた。

両社はすでに製鉄機械や水力発電機器などの各事業で統合するなど協力関係を深めており、「信頼関係は強固だ」(大宮社長)。昨年8月にも幅広い分野で事業統合が検討していることが明らかになっており、今回の統合がうまく進めば、新たな事業統合につながる可能性がある。

<経営統合は否定>

一方、今回の事業統合が会社全体の経営統合に向けた一歩になるのかとの問いに対しては、三菱重の大宮社長は「そうではありません」と否定し、日立の中西社長も「まったく同じ(考え)」と答えた。

マッコーリー証券シニア・アナリストのダミアン・トン氏は、火力発電を中心とした統合を「良い統合だ」と評価。会社本体の経営統合の方が「より大きな合理化やコスト削減効果が見込めるため理想的だが、日本の企業文化などを考えると実現は難しい」と指摘し、「今回の統合は唯一現実的な形として評価できる」と述べた。

東京電力9501.T福島第一原子力発電所の事故後、国内では原発停止が続き、代替電源として火力需要が増加傾向にある。ただ国内電力会社は火力での燃料費がかさんで財務が悪化しており、受注で入札を積極的に取り入れるなど競争激化は必至。統合で相乗効果を生み出し、技術力と価格競争力の向上も図る。

海外でも大規模停電が起きたインドや石炭埋蔵量の多いインドネシアなどで需要拡大が見込まれるほか、シェールガス開発に沸く米国、脱原発を掲げるドイツでも火力シフトが進み、新設計画が相次いでいる。中国やインド、韓国勢の追い上げも激しく、新会社で世界の競合に対抗し、海外市場で勝ち抜いていく考えだ。

(ロイターニュース 白木真紀 大林優香;編集 吉瀬邦彦)

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